美しい失恋

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若い女子の失恋は美しい。

 

ここ数日で、2人の若い女子から失恋の報告を受けた。

一人は16歳、もう一人は22歳。

いずれも恋愛こそすべての年齢で、恋をするも終わるも初々しく美しい。

 

**

 

16歳は、「勝手に恋を終わらされた」とキレ気味に電話をかけてきた。

 

「そんなに好きだったわけじゃないけど、向こうが私を好きで始まったのに、フラれる意味がわからないです!」

 

そう言って泣き出した。

 

 

――よくあるパターンだ

 

男子、いや「雄」は得てして「雌」をオトすために猛アタックをする。

 

「好きだ」と言われて嫌な気分になる女子はいないもので、この時点で何とも思っていなかった「雄」が、普通よりやや上にランクインすることになる。

 

「好きだ」と言われてからというもの、なんとなくその「雄」を視界のすみに置くようになる。

 

その一挙手一投足を、なんとなく気にするようになる。

 

そんな小さな積み重ねが、女子の中で「雄」への期待や願望を膨らませる。

 

――そう、勝手に恋が始まるのだ

 

 

「雄」は無責任なもので、散々アタックした女子が思うように振り向いてくれないと、そのうち「じゃ、いいや」となる。

女子にとっては「じらせすぎ」も良い結果に結びつかないわけだ。

 

しかしその頃、猛アタックされた女子は、悲しいかな恋に落ちているのだ。

 

これは付き合っていても同じだ。

女子の気持ちが追い付いた頃、「雄」は次のハンティングへと旅立つのだ。

 

 

22歳の悲恋は私の涙を誘うものだった。

 

3年半、人知れず愛をはぐくんだ彼女は、これまた静かに恋の終わりを告げられた。

 

悲恋に終止符が打たれる前日、私と彼女は明け方までLINEで作戦を練った。

 

彼の気持ちがはっきりしない現状が、彼女にとってはもっとも辛く、先へ進むにも続けるにも足枷となる。

 

「ここは、ハッキリさせよう」

 

私は彼女の背中を押した。

 

これまでの経緯を聞いていると、彼の気持ちはもう離れているように感じた。

 

それでも懸命に、

 

「まだ私たち、両想いだったらいいなって思ってる」

 

などと言うのだ。

そんな純朴な言葉に目頭が熱くなった。

 

 

これまでの付き合い方で何がダメだったのか、あれこれ議論した。

やはり周りに秘密で付き合いを続けていたことが、一番のネックだったようだ。

しかしそうせざるを得ない状況だったのも事実で、こればかりは誰のことも責められない。

 

それでも純粋に、一途に彼を想い続けた彼女の身になると、無理は承知でなんとか続いてほしいと願ってしまうのだ。

 

 

――そして昨夜

 

「電話したよ。

やっぱり、お別れすることになった。

もう一生、恋人に戻ることはないって言われた」

 

 

プレビュー表示でこの文言が見えた時、このメッセージを一生、開きたくないと思った。

 

予想通りの結果だった。

 

しかし彼女にとって、死刑宣告に近い「悲しすぎる真実」を確認したことは、間違いなく彼女を成長させたはず。

 

誰だって終わりを知らされることは恐怖だ。

 

ましてや他人の気持ちなんて、手に入れることすら難しいわけで。

それを掌握し続けることなど、ほぼ無理だ。

 

――いかに妥協し、いかにアジャストさせ、いかに衝突なく時間を過ごすか

 

 

しかし二十歳そこそこの女子には、今ある現実こそがリアルで、そこに邪な駆け引きを持ち出す余裕はナイ。

 

 

「私、世界一の大恋愛をしたよ。

こんな経験一生かかってもできないことだと思う。

それだけでも、幸せだったよね」

 

そう言って、おどけたスタンプが送られてきた。

 

 

幸せだった時を誰にも伝えることもなく、辛かった日々を誰にも相談することもできず、挙げ句の果てにそっと幕を閉じた大恋愛。

 

幸せだった、と気丈に振る舞う彼女を思うと、涙がこぼれた。

 

 

**

 

16歳と22歳という、人生これからの若い女子たち。

 

恋愛は必ず彼女らの心に傷をつけ、その強さを試すかのように試練を与え続けるだろう。

 

かつて私にも、そんな時代があったと思う。

 

――何を捨ててでも彼と居たい

 

そう思えた頃が、きっと誰にでもあるはず。

 

 

「若いうちは傷ついてなんぼだよ!」

などと年を重ねた”経験者”は言う。

 

だがそこに立つ当事者にとっては、それは初めての経験であり、生涯に一度の大舞台なのだ。

 

 

今はひたすら時間が過ぎるのを、じっと耐えるしかない。

 

何かしようとしなくていい。

無理に忘れようとしなくていい。

 

ただ、終わった恋を受け止めて、そこから始まった「新しい人生」を受け入れればいい。

 

嘘のような本当の話、10年経てばどんなことでも思い出になる。

きっと、いい恋だったと笑って話せるようになる。

 

だから、

 

いまはひたすら、泣いて傷つくのが正解だ。

 

そこまで感情が動かされることなど、普通の人生ではなかなか経験できないこと。

それだけキミらは、貴重で素敵な経験をしたんだよ。

 

10年後、今のキミたちみたいに泣いてる後輩がいたら、その子に未来を示してやってほしい。

 

 

――そういう素晴らしい恋愛が、どれだけ時代が変わっても、ずっと続きますように

 

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2件のコメント

純真無垢

百戦錬磨

海千山千

手練手管

ほんの数年で男なんてちょろいと思えるようになる。

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