菓子折りの中心で、クレームを叫ぶ

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ここ最近、偶然にもお菓子をもらうことが多い。

非常に幸せである。

 

 

昨日、郵便で「諏訪大社御献上菓子(クッキー)」と「トフィー」が届いた。

「レターパックで現金送れは詐欺!」

とデカデカと書いてあるそばに、デカデカと

「お菓子!」

と書かれてあるギャップに、思わず失笑した。

 

この菓子2種類とも、商品としてのクオリティが高い。正直、両方とも好きな部類の菓子ではなかったが、一口食べた瞬間にファンになり、自ら取り寄せて食べるまでに。

 

贈り主の好みも重要だが、こういう良質な店を見つけられることが素晴らしい。

質の良いものは、例え苦手なものでも違いが伝わるから。

 

 

菓子を頬張りながら電話をとると、税理士からだった。近所のカフェにいるから出て来い、とのこと。

店に入ると、わたしが加入している保険会社の担当と税理士が座っている。

 

挨拶と同時に、担当のかわいい女子から「治一郎」のギフトセットを渡された。

これは、昨日わたしが本社へクレームの電話をしたため、それに対する「お詫び」だそう。

 

お菓子ほしさにクレームしたわけではないが、やはり大手企業ともなると「菓子折り」含めてクレーマーの扱いに慣れている、と感じる。

電話口、ひたすら謝罪を繰り返したあの男性は、どうやら「偉い人」だったらしい。

あの人を電話口に出すなんて、というレベルの人。

 

電話の相手がオペレーターのお姉ちゃんから彼に変わった瞬間、

「あ、終わった」

と、わたしは心の中で呟いた。

なぜなら、あちらもプロだったからだ。

 

プロクレーマー対プロクレームレシーバーの戦いというものは、結果が見えている。

ただひたすら、クレームを受け止められ、共感され、謝罪されて、気分良く電話を切らされるのが定石。

 

クレーマーを骨抜きにするのが、レシーバーの仕事なのである。

 

電話口の向こうの様子が伝わるような、言葉や息遣い、声量、間合いの取り方に「プロ」を感じた。

その時点で、わたしの負けだ。

 

そして翌日となる今日。わたしの担当である女子が、渋谷・ヒカリエに入っている治一郎で、バウムクーヘンとラスクの詰め合わせを購入し、わたしの元を訪れた。

 

この「菓子折りのチョイス」というのも重要。

もしこれがセンスのないオッサンならば、それこそいい所で「虎屋のようかん」とか「空也の最中(もなか)」あたりを選ぶだろう。

もちろん、素晴らしい和菓子ではあるが。

 

だが、わたしはアンコが嫌いだ。

謝罪のつもりが激怒される結果となり、あの電話で対峙したプロレシーバーから大目玉をちょうだいすることになるだろう。

 

その点、若い女性はセンスがいい。

「治一郎」といえばブランドとしても有名。そしてバウムクーヘンやラスクと言えば、女性なら誰もが好むスイーツ。

 

仮に本人が嫌いでも、家族や友人に配ることができる。

つまり「お菓子の日持ち」や「個装の有無」などの点でも、優れたチョイスと言えるのだ。

 

受け取った側が良い気分になる条件として、

・有名店の商品

・流行の商品

・高価な商品

この辺りは外せない。

必ずしも品物が高価である必要はない。だが、受け取った側が知らないブランドや商品の場合、せめて「高級な物」であれば、「ほほぅ」となるからだ。

 

もらった側は必ず調べる。今どきネット検索すれば、それがどんなものでいくらするのか、すぐに分かる。

 

よって、菓子折りを選ぶセンスのない人は、金を積んで高価な菓子を選ぶのが正解。

 

 

そこで思い出したのが、数日前に友人からもらった「まずいクッキー」だ。

あれは友人がクライアントからもらったものだが、ビジネスの間柄で一風変わったギフトを贈るのは、なかなかのギャンブルと言える。

 

あまり批判するのもどうかとは思うが、超有名ホテルが販売するあのクッキー、わたしにとっては失敗作だった。

クッキーたるもの、ぜひとも甘くあってほしい。しょっぱかったり、スパイシーであったりする必要はない。

 

そしてこのような「冒険」をするのは、ビジネスでは危険。せっかくの菓子折りが無駄になる可能性が高いからだ。

相手の好みを知り尽くした間柄であれば、変わったものでもアリだし、むしろそういうものを選ぶべきだろう。

 

だがそこまで親しくない相手に贈るのならば、無難に、そのブランドのイチ押し商品でも選んでおくのが安心・安全。

 

この失敗を踏まえても、今回の「治一郎」のチョイスは光るものがあった。

 

 

数年前のこと。自宅マンションの管理会社の社員が、謝罪のために私の前へ現れた。

度重なる室内の不具合や不備にガチギレしたわたしが、

「この部屋へ足を踏み入れたこともない人間が、口先だけで謝罪して済まそうったって、そうはさせないから」

と噛みついたからだ。

 

「あの、これ、お詫びといってはなんですが」

と、震える手で差し出したるは菓子折りの袋。見たことのないブランドの包装紙だった。

 

管理会社が帰った後で調べたところ、そのギフトは業務用で、金額は1,000円。

他にも2,000円、3,000円といった具合に、ちょっとした「お詫び」などで使われる業務用菓子折りの類。

 

そのとき思った。

どうせ1,000円で菓子折りを選ぶなら、すぐ裏にある有名チーズケーキ店で、チーズケーキ一つ買ってくれたほうがマシだ。

 

今どき、オンラインの菓子折りのラインナップは豊富。

「ステラおばさんのクッキー」など600円程度だが、あの1,000円の無名クッキーよりもよっぽど美味しい。

無難なところで「銀座ウエストのリーフパイ」とか、「上野風月堂のゴーフル」とか、「ゴディバのクッキー詰め合わせ」とか、「ヨックモックのシガールセット」とか、いくらでも安くて満足できる菓子折りは用意されている。

 

しかもこれらすべて、オフィス用品の通販サイト・アスクルで購入できるんだから。

 

なぜここまでわたしが不満を言うかというと、一番の原因は無名クッキーだからでも、値段が安いからでもない。

あれは、会社に山積みにしてある「在庫の菓子折り」だったからだ。

 

なぜなら、クッキーが湿気てた。

 

 

人に何かを贈るとき、特に謝罪の場合などは、より繊細に気を配るべきだろう。

そして、急な訪問でちゃんとした菓子店へ寄れない場合、わたしなら、自分の好きな食べ物を持参する。

 

青果店の果物でも、露店のダンゴやたい焼きでも、カフェで売ってるチョコレートでもなんでもいい。わたしが胸を張って「美味しい」と言える物を持っていく。

 

あとは話術次第だが、謝罪が上手くいった暁には、

「わたしの大好物の〇〇です。ぜひ、召し上がってください」

と、帰り際に手渡して去るだろう。

 

わたしが自信満々「絶対に美味い!」と言い切れる何かが、きっと相手にも伝わるはずだから。

 

 

Illustrated by 希鳳

 

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