Out of control(変な癖)

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わたしには変なクセがある。クセというか生活習慣の一部というか。

 

 

昨夜、うまく眠れなかった。

午前4時過ぎ、ベッドへ横になるとアラームをセットした。起床が早いので寝坊はできない。そして静かに目を閉じる。

ーー暑い。

とにかく暑かった。窓を開けたら涼しいだろうか。

しかしベッドで大の字のわたしは、起き上がる気などないのでひたすら我慢。

 

ツバを飲み込む瞬間、むせそうになる。そもそも口の中が渇ききっており、唾液が十分に分泌されていない。喉が貼りつくように苦しい。

テーブルの上にはペットボトルのお茶がある。だがそこまで手が届かない。

ーー喉が乾燥して死にそうだ。

どんなに死にかけても、わたしはベッドからは降りない。明日の朝、起床までは決してここを離れない。

 

シーンとした真夜中、もはや夜明け前と言ったほうが正解かもしれない。響き渡るモーター音は除湿器だ。室内に干した洗濯物へ、乾いた風を当てている。とくに柔術着の生地は厚いので、除湿器が必須。

ーーあいつに湿度を奪われてるんだ。

「速乾」ボタンが緑色に点灯している。フル回転で湿気を吸い込み、乾燥した空気を送り出す。

あいつのせいで、わたしの喉は限界を迎えているのだ。

 

飲み込むツバの量がみるみる減っていく。2メートル先には飲み物があるのに届かない。あぁ、こんなとき念力でも使えたらーー。

そんなことを考えるうちに意識が朦朧としてきた。よし、このまま眠ってしまおう。

 

寝ているのかいないのかよくわからない、悪夢のような妄想のような状態から覚醒した。首や額は汗でびっしょり。

喉はカラカラ、体はびしょびしょ、おまけに除湿器は勢いよく稼働。完全なる脱水症状が成立する環境だ。

 

外は明るくなりつつある。だが起床にはまだ早い。もう少し粘らなければ。貴重な睡眠のためにも、このまま意識を失ってくれればーー。

 

頭は冴えわたり、目を閉じても眠れそうにない。それでもなんとか眠らなければ。

そう思えば思うほど、とてもじゃないが眠れない。それでもしつこく目をつむり、悪夢のような混沌とした状態に耐える。

せめてアラームが鳴るまでは。

 

トントコトントコ

 

イラっとくる打楽器のアラーム音が鳴り響く。

ーー助かった。

わたしはこうしてサバイブした。とにかく、一度ベッドへ横になったら、起床まで絶対に離れたくないのだ。

そんな変なクセがある。

 

 

食い意地が張るわたしは、たとえ傷んでいてもとりあえず口に入れるクセがある。

これには2通りの意味がある。一つは「単純に食べたいから」、もう一つは「腐ったものを食べたらどうなるのかの検証」。

これまでの勝率は7割くらいか。わたしの腸はなかなか丈夫なようだ。

 

だが自分でも呆れたのは、賞味期限がかなり過ぎた牛乳を飲んだときのこと。

「なんてまろやかでコクのある牛乳だろう!」

絶賛しながら飲み干した。それを聞いていた友人が、商品名を確認しようとゴミ箱を漁り、驚愕の一言を発する。

「これ、賞味期限2か月過ぎてるんだけど」

急に、脂汗と吐き気と腹痛を感じたような感じないような。

 

そして我ながら狂ってると感じたのは、知人から手作りのチーズケーキをもらったときのこと。

タイミング悪く旅行の前日に受け取ったため、常温保存となったチーズケーキ。3日目にしてようやく口にすることができた。

 

アルミホイルを開くと、かなり発酵したチーズ臭が鼻を突く。すでに傷んでいる証拠だ。だがわたしの大好物であるチーズケーキを、一かけらも食べずに捨てることなどとてもできない。意を決して一口。

「・・・うまい」

やはり手作りというのは、言葉にならない美味さがある。既製品とは明らかに違う、ハンドメイドならではの味が。

 

20分後、激しい腹痛に襲われた。間違いなくチーズケーキだ。

 

トイレですべて出し切ったわたしは、なぜか再びチーズケーキを口にした。

この時点で確実に狂ってるだろう。同じ結果を招くことを承知の上で、さらにチーズケーキを食べたのだから。

 

食べ終えた直後、案の定、腹痛。そして同じように未消化のブツを排出した後、いよいよ最後の一かけらに手を伸ばす。

 

こうして、もらったチーズケーキをすべて胃袋へ送り込んだ。壮絶な腹痛と下痢を甘んじて受け入れながらーー。

 

そこまでしてチーズケーキが食べたかったのか、もしくは作ってくれた人への感謝なのか、はたまた傷んだ食べ物を食べることで体がどのような反応を示すのか検証したかったのか。

一体どれに当てはまるのかは、自分でもよくわからない。

 

ただ唯一覚えているのは、

「どうしても食べたくて、我慢できなかった」

という強欲な記憶、それだけだ。

 

 

Illustrated by 希鳳

 

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