投資、はじめました。

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ーー積み立てNISAをはじめるしかない。

そう決心させられた理由はコロナだ。コロナのせいで海外へ出かけられず、国内でも移動が減った結果、わたしの昨年の旅費交通費が200万円近く消えたのだ。

経費が200万円も消えたということは、売上げが変わらなければ利益が増えたということ。つまり、納める税金が爆上がりしたのだ。

 

所詮、わたしのような労働集約型の仕事をする人間の収入など、たかが知れている。それゆえ労働力に頼るうちは、収入を劇的に上げることなど不可能。

 

つまり、目指すは強力な節税しかない。

 

個人事業主で使える節税対策として優秀なのは「小規模企業共済」。これは掛金全額が所得控除となるため、月額の上限となる7万円をぶち込むことができる。

次にiDeCo。わたしは厚生年金の被保険者のため、月額2万3千円まで所得控除に貢献してくれる。

 

この2つで年間111万6千円の節税対策が可能。失った旅費交通費200万円のおよそ半分がこれで賄える。かつ、将来のお小遣いとなってわたしを待ちわびてくれるわけだ。

 

ーーなぜ今までやらなかったんだろう。

 

ま、そういうことを今さら考えるのはやめよう。前だけを見て進もう。

 

 

iDeCoを調べていくと、重要なのは「口座管理手数料の安さ」ではないかと気づく。向こう20年も運用し続けるわけで、毎月支払う手数料によってはトータル10万円を超える差が出る。

となると手数料が安く、商品ラインナップも豊富なネット証券を選ばない手はない。

 

ということで早速、初心者にやさしい楽天証券で口座開設をする。

今どき「なるほど」と感動したのは、身分証明用の運転免許証の撮影についてだ。免許証の表裏を枠内に撮影するのにプラスして、免許証の「厚み」までも撮影して送るのだ。

ーーまるで指紋採取みたいだ。

 

学生時代、戸山警察署で指紋採取されたときのことを思い出す。

指紋と言えば指先のイメージだが、あの時は指先だけでなく手のひらも取られた上に、手首や小指外転筋(小指の付け根、チョップする部分)まで隈なく採取された。

たしかに犯罪に臨むとき、指先の指紋には注意をしても、手首やチョップのことは忘れがちだ。さすがは日本の警察よーー。

 

証券口座開設の途中で必ず聞かれることがある。それが、

「積み立てNISAもやりますか?」

という質問だ。年間40万円までの投資が、最長20年間非課税となるらしい。目先の節税に直接関係はないが、オマケのように付いてくるのならば付けておこうか、ということで積み立てNISAがわたしの元へやってきた。

 

 

人が不安を感じるとき。

これは人それぞれ違うだろうが、わたしは「隙間が空いていること」に不安を感じるタイプらしい。

なぜなら、小規模企業共済もiDeCoも着々と準備を進めるなか、積み立てNISAだけがポツンと取り残されていることに胸が騒いだ。

 

ーーこれは、こいつはどうすればいいんだ。

 

恐ろしくなったわたしは、金持ちの友人らへLINEをする。そして積み立てNISAとやらをどうすればいいのか、意見を求めた。

さすがは賢い友人らよ、まともな回答やレクチャーが次々と返ってくる。

 

しかし、だ。

バカなわたしが求めるのは「クリック」なのだ。

 

どのファンドだのレーティングがどうだのはどうでもいい。積み立てNISAの口座を開設したにもかかわらず、ただ放置しておくことが我慢ならないわけで、とにかく商品をクリックしたいのだ。

 

なにか買わせてくれ。なんでもいいから、頼むーー。

 

祈るようにクリックの練習をしていたとき、一人の友人が提案をしてきた。正確には、友人が保有する銘柄を教えてくれただけなのだが、わたしはそれに食いついた。

「これをクリックすればいい?」

彼は銘柄を送ってきただけだが、瞬時にコピペし楽天証券で検索、同じ商品を発見すると力強くクリックした。

 

どうやら今クリックしても5月からの購入になるらしいが、開設口座を放置という「隙間」を埋めることに成功したわたしは、ホッと一息ついた。

 

「これで一安心だよ」

友人に告げると、

「なにに安心したのかよくわからないが」

と冷たくあしらわれる。

 

当初友人は「時間分散投資なんだから焦らなくていい」とわたしをなだめすかしたが、その言葉はまったく響かなかった。

どれほど価値のあるうんちくを傾けられたとしても、あの時のわたしは一分一秒たりともじっとしていられなかった。

それほどまでに、「隙間が空いている」という不安に押しつぶされそうだったのだ。

 

今回の買い物で結果的に損をしても構わない。なぜならそこは問題視していないから。わたしにとって重要なのは「すぐさま隙間を埋めること」の一点だったからだ。

 

さて、20年後が楽しみだ。

 

 

Illustrated by 希鳳

 

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