最近、新たな友達ができた。
彼の名は「龍」。
職業が医者のため、フジテレビもビックリの「医龍」だ。
アラセブ(アラウンド・セブンティー)の龍は、若い。
肌艶も良いのだが、考えが柔軟で発想に勢いがある。
それでいて謙虚な彼は、年齢差など感じさせない人懐っこさも兼ね備える。
アンチエイジング医療を専門とする龍との会話で、
「美容整形って、」
と私が発言したとき、彼はピシャリと否定した。
「美容整形ではありません、アンチエイジングです」
その違いが素人の私にはピンとこなかったが、彼と会話を交わすうちにその本質に近づけた気がする。
*
龍との出会いは、彼が柔術を始めたことによる。
アラセブで格闘技経験もなく柔術を始めるとは、世間一般では変わり者といったところだろう。
だがここには、彼の専門分野である「アンチエイジング」へのヒントがある。
日々ランニングを欠かさない龍は、身体の衰えを感じさせない。
彼自身も、走ることさえ続けていれば体力は保てると考えていた。
しかし柔術の動きに触れることで、今まで予想しなかった「動きの中での筋力の重要性」を感じたのだ。
たとえば、マットにあぐらをかいた状態から手をつかわずに立ち上がる動作。
スパーリングで無意識に行われるであろう動作だが、柔術未経験の人にとっては難しい。
それが年齢からくる衰えなのか、はたまた単に経験したことのない動きだからなのか、理由は個々によるだろう。
この、できそうでできない「未経験の動き」を習得すべく、龍の柔術ライフがスタートした。
*
彼との会話のなかで、
「何年も不食(ブレサリアン)を続けているのに、元気な人がいる」
という、一歩間違うとセンシティブな内容で盛り上がった。
ブレサリアンについて科学的根拠はよく分からないが、どうやら「腸内細菌」が関係しているようだ。
食事をとらないことで健康な腸内微生物叢(腸内フローラ)を誘導し、宿主に対する健康増進効果を仲介している可能性がある、ということらしい。
もちろん、「だからどう」ということではない。
ただ、私自身が感じていたことで、
「私の体内で何かが勝手に作られている気がする」
ということを思い出したのだ。
たとえば怪我の治りが異常に早いこと。
あとは、減量のためとは言え絶食に近い食事制限を続けても、体力や筋力、スピードなどパフォーマンスに全く影響がないこと。
これらについて、私の特異体質ということで片付けるより、腸内細菌の影響と考えるほうが合点がいく。
そもそも、外から取り込む「栄養」など近現代になってからの習慣だ。
古代へ遡れば、今ほど豊富な食糧があるはずもない。
食事の種類も1種類か、せいぜい2種類だろう。
それでも彼らは元気に動いて走って生きていたわけで。
生命を維持するのに必要な栄養素が何十種類もあるーー
このことについても疑問に思う。
本当にそんなに必要なのか?
そのせいでカロリーオーバーし、結果的に不健康になってやしないか?
比較対象として草食動物について考える。
なぜ馬や牛、象は草だけ食べてあれほどパワーが出せるのか。
それは、
草からでもアミノ酸を合成できる「腸内細菌」がいるから。
つまり動物の種類によっては、まばゆいばかりの栄養素など不要で、限定的な食糧のみでも生きていけるのだ。
最終的には、「そういう生き方ができる微生物」を宿しているかどうかが、大きなカギとなる気がする。
*
「美容整形とアンチエイジング」をごっちゃにして叱られた私。
自分なりの答えとして、美容整形は美しくなるための治療、アンチエイジングは若々しくあるための治療、という区別をしてみる。
そして龍が考えるアンチエイジングとは、人間が持つポテンシャルを最大限に生かすことではないかと思う。
表面上の若さを保つことは、現在の医療技術をもってすれば容易に可能。
しかし自らの力で「抗加齢」に取り組むことで、人間として自然な形で健康長寿が実現できる、ということを龍は示したいのではなかろうか。
柔術がその一端を担えるのだとしたら、スポーツ競技として、また護身術として、そしてアンチエイジングとして多方面への貢献が期待できる。
将来的には柔術により健康長寿が実現され、医療費の削減にまでつながる壮大なストーリーだ。
ーーアラセブの白帯に対して容赦なく腕十字を極めながら、そんな大それた妄想をする
Illustrated by 希鳳
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