ハリー・ポッターと魔女

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ハリー・ポッターという作品にまったく興味のないわたしだが、米国から一時帰国した友人に誘われたので、渋々・・いや、興味津々で赤坂Bizタワーを目指した。

Harry Potter Cafe」というものが存在することすら知らなかったが、およそ3年前に期間限定のポップアップカフェとしてオープンし、今なお人気を博している様子。なぜなら、90分の利用時間制限に加えて、事前予約をしなければ飛び込み入店は困難と思われるほど、外国人観光客と若者で店内は溢れかえっていたからだ。

もちろん、ハリー・ポッターカフェを楽しみにしている友人のためにも、事前予約にて席を確保するなど周到に準備を行ったわたしは、彼女をもてなす気満々で店へと向かったのである。

 

・・念のため、いくらハリーポッターに興味がないとはいえ、さすがにその名前くらいは聞いたことがある。「魔法学校に通う生徒たちの話」くらいの認識ではあるが、まぁその程度で十分だろう。

ちなみにカフェの向かいには、ハリーポッター関連商品を取り扱っている「ハリー・ポッター マホウドコロ」というショップがある。ディズニーランドの土産売り場さながらのラインナップと熱気で、その価格設定にも驚きを隠せなかった。

(このマドラーというか箸の片方というかが、880円・・・)

菜箸よりは短いが、マドラーというには先が細いだけのスティックを発見したわたしは、その金額に眉をひそめた。魔法を唱える際に使うであろう杖のデザインを模してあり、たしかに洒落てはいる。だが一本で880円ということは、箸として使うならば二本購入しなければならないため、1800円近い高級な箸ということになる。それほどの価値があるというのか——。

 

いやいや、魔法の国で現実的な疑問はご法度である。高かろうが安かろうが、本人が気に入ればそれでいいのだから、外野がとやかく言う必要はない・・というわけで、友人が待つハリー・ポッターカフェへと足を踏み入れたのであった。

 

 

(・・・魔女がいる)

入り口から中を覗くと、奥の方に魔女の姿が見受けられた。逆光なので見にくいが、あの帽子とフォルムは魔女だろう。

だが意外なことに、ディズニーの来園者のように皆が皆コスプレをしているのかと思いきや、このカフェの客層はそうでもなかった。むしろ、あの魔女以外は誰も仮装しておらず、普通にカフェ利用客として飲食を楽しんでいるではないか。

そしてしばらくすると、その魔女が顔を上げた——あ、友人だ。

 

いそいそと彼女が待つテーブルに向かい、久しぶりの再会を喜んだわたしは、彼女がかぶっている帽子が「魔女の帽子ではない」ということに気がついた。むしろ、フェルト生地のエレガントなベルハット・・いや、淑女御用達のクローシュハットだったのだ。

(店の雰囲気のせいだろうか、それともピンク色の髪の毛のせいだろうか)

丸顔で可愛らしい顔面を持つ友人だが、放つオーラが魔女そのものだからなのか、帽子というアイテムが「かぶる人間によってこうも違うのか」というギャップに驚かされた。

 

なんせわたしには"生粋のお嬢さま"の友人がいて、彼女は年がら年中帽子をかぶっている。それこそエレガントなハットからボーイッシュなキャスケットまで、あらゆるジャンルのお帽子(お嬢さまが身に着けると、すべてに「お」がついてしまうという謎の現象)をお召しになるが、いかなる場合でもお嬢さまらしさを失うことはない。

そして今、友人が着用している「お帽子」も、それこそ上品かつ上質な作りでできた素敵なアイテムだが、その根底には美しさを凌駕する禍々しさを含んでいる——そんな気がするのであった。

 

(・・いや、カフェの内装が凝っているからに違いない)

黒いハイネックの上からは、綺麗な宝石が散りばめられたかのようなアンティークなネックレス・・いや、首飾りをぶら下げており、頭のてっぺんからつま先までアイテムとしては完璧な淑女。にもかかわらず、やはり彼女からにじみ出るオーラというか波長が、店の雰囲気も相まって"魔女"を彷彿とさせてしまうのだ。

——あぁ、わたしは今日ハリー・ポッターの実写版を体験できるのかもしれない。

 

 

・・なんてことは口が裂けても言えないので、淑女ハットからのぞくピンクの髪の毛をまじまじと眺めながら、目も胃袋も堪能させてもらうのであった。

 

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