無精者とマイナンバーカード

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いよいよ12月2日(月)から、現在使用している健康保険証の新規発行は終了となり、マイナ保険証で管理される流れへと変わる。

——そういえば、マイナンバーカードの取得は義務ではなかったはずだが、マイナンバーカードがなければマイナ保険証の利用登録もできないため、マイナンバーカードを持っていない人はマイナ保険証の恩恵を受けることができない。これすなわち、マイナンバーカードを半強制的に取得させるための強引な手段ではないか・・と、疑いたくなる気持ちがないとはいえない。

とはいえ、マイナ保険証を持っていない者へは、必然的に「資格確認書」なるものが職権で発行(または新規の資格取得時に申請)されるため、健康保険証の利用ができなくなるわけではないのでご安心を。

 

ちなみに、12月から発行される資格確認書は、従来の健康保険証と同じプラスチック製のカード型で、表面の色は"黄色"なのだそう。協会けんぽは現在"水色"のカードなので、混同しないように明確に色を分けた模様。

なお、現在所持している健康保険証は、退職等をしない限りは来年の12月1日まで使用できる。無論、それまでに資格確認書が届くことにはなるが、一応、使用期限に猶予をもたせているわけだ。

さらに、新たに発行される資格確認書には有効期限が設けられており、5年以内で保険者が設定する期間ごとに差し替えが必要となる。

 

・・ここで、おさらいとしてマイナ保険証のメリットを確認してみよう。いくつかあるが、中でも直接的なものとして"初診料の加算が20円、再診料の加算が10円安くなる"だったり、急な入院・手術などの際に医療機関へ提出する"限度額適用認定証"の申請が不要だったり、本人が情報提供に同意すれば、初めて受診する医療機関や薬局でも過去の医療情報をデータ共有できるので、適切な医療を受けられたりする・・などが挙げられる。

また、医療機関側としても従来の手入力による事務作業が減ることで、人的ミスによるトラブルから解放されたり、顔写真付きのマイナンバーカードと暗証番号で本人確認を行うため、健康保険の不正防止を図れたりと、こちらにも大きなメリットがあるわけだ。

 

結果的に、慣れるまでには様々な不具合やトラブルが起きるだろうが、ある程度慣れてしまえば「マイナ保険証のほうが、圧倒的に便利!」となるに決まっている。そんなことは承知の上で、わたしは"あと一歩先へ進むまでは、マイナ保険証・・というか、マイナンバーカードの取得を保留する"という意思を示している。

"あと一歩"とは、物理的なカード取得を強制することの廃止である。

 

デジタル庁はApple社の協力を得て、来春を目途に"Appleウォレットによる身分証明機能"を使い、iPhoneへのマイナンバーカードの実装を公言している。ちなみに現在、Androidのみでスマホ用電子証明書搭載サービスが展開されているが、残念ながらマイナンバーカードが持つ機能を思う存分使うことはできない。

具体的には、マイナンバーカードの主たる利用価値ともいえる「本人確認」ができない点——これはさすがに致命的だろう。

 

デジタル化を図る目的で、マイナンバーカードやマイナ保険証を打ち出してきたにもかかわらず、多くの国民が所持するスマホに搭載されているのは、限定的なサービス(子育て支援のオンライン申請や、住民票の写しなどの証明書をコンビニ店舗で取得できるなど)のみで、それらもまた店舗によって利用できない場合があるなど、まだまだ完全とはいえない状況。

もちろん、最初からすべてが上手くいくとは思えないので、ある程度の紆余曲折は許容できるが、それにしても利用者の多いiPhoneに機能が搭載されていないことや、住所や氏名、生年月日、顔写真などの「券面記載事項」を搭載できないのは、致命的と言わざるを得ない。

 

まぁ、来春になればiPhoneでこれらの問題もクリアされるだろうから、それを待って検討しよう・・というのがわたしの考えなのだ。そして最終的には、物理的なカードを発行せずとも、Appleウォレットでマイナンバーカードが取得できる現実に期待しているのだが、果たしてその日は来るのだろうか——いや、来なければおかしい。

むしろ、iOSで登録した情報を元に物理的なカードを発行・送付するという、ある種の可逆的な対応が可能になってもらいたい。「スマホのバッテリーが切れたら困る!」という不安を考慮すると、物理的な存在を蔑ろにすることはできないが、手間のかかる過程を乗り越えてまで(物理的な)マイナンバーカードを取得しよう・・という気になれない無精者もいるわけで、ならばせめて「デジタルのみ」でも許可してもらいたいのである。

 

とどのつまりは、カードがなくて困るのは本人なのだから、そんな奴は勝手に困らせておけばいい・・ということで、物理的なカードを取得していなくてもiPhoneでマイナンバーカードが作成できるよう、お取り計らいいただけると幸甚に存じ候——。

 

Illustrated by 希鳳

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