怒張した血管のような繊維質が網羅した芸術作品

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・・・そういえば、一般家庭ではどうやって処理をしているのだろうか——。

ふと我が家のキッチンの隅に目をやったところ、数日前に制作した"芸術作品"が乾燥して丸まりかけていた。なんの作品かというと・・スイカの皮の器である。

毎日、6分の1カットのスイカを食べているわたしは、その都度、見事な器(もしくは取り皿、あるいはスティックタイプのお香立て)を作り上げているのだが、仕上がり画像を見せると「すごい!」「芸術品!」と誰もが称賛するため、やや調子に乗っている。

そして連日の技術研鑽の成果もあり、芸術作品は日々増えていくわけで、週に一度しかゴミ出しをしないわたしはその保管方法に苦慮していた。

 

これまでは、スイカの皮を業務用冷凍庫へ保存し、ゴミ出しのタイミングまで寝かせたおいた。

だがここ最近、わたしの"こそぎ技術"が上達したため、皮に果肉が付着していない状態で器を完成させることが可能となった。さらに、それを食器用洗剤でゴシゴシ磨くことで、器(厳密には、「中果皮」と呼ばれる赤い果肉と緑の外皮との間にある白い部分)に均一な艶が出るのだ。

そもそも赤い果肉は付着しておらず、白い中果皮も半分以上をこそげているため、緑色の外果皮は透けて見えている。そこまで可食部を完食していれば、残りはほぼ外果皮といっても過言ではないほどで、そうなると「このまま放置しても、腐敗することはないのではなかろうか」と考えるようになったのだ。

 

スイカの皮・・つまり緑色の外果皮は、いつまで経ってもあのままの状態。であれば、ほぼ外果皮の状態にしておけば、腐敗の進行を抑えられるはずでは——。

 

ということで、カリッカリに攻めたスイカの皮を食器用洗剤で磨いた"芸術品の器"を、冷凍させるのではなく「乾燥させる」という方法を選択したわたしは、一番最初に完成させた作品(三日間寝かせた)の両端が、くるんと丸まっている姿を発見した・・というのが、冒頭で紹介した「芸術作品」の種明かしである。

所詮は生ものだから、腐るか乾くかその辺りの変化を遂げるのだろうが、わが家のスイカは「乾いて丸まる」という変化を見せたのだ。さらによく観察してみると、水分が飛んでカサカサになった中果皮は、怒りで血管が怒張したこめかみのように筋張っており、スイカの皮にこれほどの繊維が網羅しているとは驚きだった。

おまけに、皮の両端がくるんと丸まっているわけで、このまま放置すればさらに丸まることで、ゴミの体積を減らせるのではなかろうか。そうなれば、冷凍保存で現状維持するよりも、こうやって静かに乾燥させるほうがゴミとしてのクオリティーが上がるわけで。

 

コバエが発生することも、ゴキブリなどの害虫がはびこることもない。なんせ、カラカラに干からびた無臭で清潔なスイカの皮なのだから、ゴミ出しの日まで並べておいても問題はない。

とはいえ、この状態を可能としているのは「果肉を完全にこそぎとる」という、下処理の効果が大きいことを忘れてはならない。中途半端に果肉が残っていれば、雑菌の繁殖により腐敗するのは目に見えている。それを極限まで削り取り、食器用洗剤でゴシゴシ磨いたことで、万全の腐敗防止策を施したのだから。

おまけにわたしは、毎日こうやってこそげることで「こそぎ力」がかなり上がっている。そのため、完成度の高い外果皮の器(もしくは、取り皿かスティックタイプのお香立て)が量産できるのである。

 

そして改めて思うのだ。一般家庭では、スイカの皮をどうやって処理しているのだろうか——と。まさか、ここまで芸術的なこそぎの技術を持っているとも思えないし、そうなれば赤い果肉部分を大量に残した状態で捨てることになるわけで、常温で放置すれば腐敗は必至。ならば冷凍庫または冷蔵庫で保存するのだろうか? それもまた、不思議な感じがするが——。

 

とにかく、料理はできないが生ごみのクオリティーには自信がある。よって、スイカの皮の処理に困ったら、わたしを訪ねてほしい。悩むアナタに、完璧な生ごみを披露してあげよう。

 

Illustrated by 希鳳

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