足立区が２３区最恐で、なにが悪い？

足立区で生まれ、足立区を愛し、足立区で問題を起こし、足立区の警察官に顔を知られ、いまでは足立区の治安維持に励む友人から、とあるニュースのリンクがそっと送られてきた。それは、にちゃんねる創設者のひろゆき氏が、足立区で起きた傷害事件について「やっぱり、足立区だった。。。」とコメントしたことで炎上した・・という内容のニュースだった。

それを読んだわたしは、ただ一言、「くだらなすぎる」と呟いた。

「足立区に対して失礼だ」「足立区民に対する配慮に欠ける」など、鳥肌モノのくだらないコメントが目立つが、そもそも足立区は治安の悪さがウリ・・などといえば、ユーモアの分からない連中に叩かれるわけだが、少なくともわたしは２３区最恐（最強）の地域だと認識しているし、だからこそ誇らしく思っている。

その根拠となったのは、今や”足立区の主”にまで成長した友人の存在が関係しているのは間違いない。そんな彼から聞く当時の破天荒な足立区は、アニメさながらの臨場感から「港区ではとても真似できない、真の武闘派集団だ・・」と、よだれを垂らしながら武勇伝をねだるほど。

そして冒頭のニュースの件に戻るが、ひろゆき氏のコメントがどれだけ面白いものであったのかは、知る人ぞ知るレベルであることも見逃してはならない。

無論、ひろゆき氏について詳しく知らなければ「足立区を差別する、最低な輩だ！」と、無駄に騒ぎ立てたくなる気持ちも分からなくはない——個人的には、誰が何を言おうがイチイチ反応するのではなく、無感情でスルーすればいいと思うのだが、最近はやたらと主張したがる粘着質が増えているため、黙っていられないのだろう。これも個性というか脳機能の特性というか、言葉を誤ると大変なことになる世の中である——が、わたしからすれば、あれはひろゆき氏の小さな嫉妬でありプライドであり、面白さ以外の何物でもないわけだ。

ひろゆき氏は、足立区のお隣である北区赤羽で育っている。おまけに「団地育ち」というフレーズも多用しており、これは差別発言ではなくある種の自虐ネタというか、庶民派であることを手っ取り早く知らしめるパワーワードといえる。

そして、自身の故郷である北区を誇るには、近隣の区よりも優れていることを示すのが分かりやすいわけで、そこへ２３区最恐の足立区が引っ張り出されたわけだ。今でこそ足立区は、道路や住宅が整備されたり子育て支援に力を入れたりと、優良なエリアとして知名度を上げているが、それはあくまでポジショントーク的な見せ方である。よって、わたしが誇る足立区は今でも最恐であり、北区などが太刀打ちできるレベルではないのだ。

そして、そのことすら理解しているひろゆき氏だからこそ、「やっぱり足立区だった」という発言が出たわけで、区を差別するどころか、むしろウィットに富んだ面白いコメントだったのだ。

そんなひろゆき氏の発言に続くべきは「おまえの実家（北区）だって、似たようなもんだろ！」「北区なんて、外国人に乗っ取られそうになってるじゃないか！」といったリプが正解なのだが、ひろゆき氏の生い立ちやキャラクターを知らない者や、倫理観・道徳心を振りかざすプロ市民からすると、”足立区を侮辱するような発言”としか受け取ることができず、これ見よがしに叩く・・という残念な結果に至るのだ。

「正義感」というものを履き違えている・・とまでは言わないが、あまりに稚拙な揚げ足取りが横行する世の中になった、とは思わないだろうか？友人同士の会話でも、同じことが言えるのだろうか？ある意味、言いたいことすら言えない世の中になっていることが異常であり、「面白さ」というものの守備範囲がもの凄く狭まっていることを、心底奇妙に思うのだ。

そもそも、自分の顔すら直に見ることのできないニンゲンが、他人の思惑と自分のそれとを一致させられるはずがない。加えて、正しい・間違っているという概念も当事者か否かで変わる部分があり、誰かが作ったルールに則っているかどうか・・でしか判断できないのである。

だからこそ、否定的な意見や感情が沸き上がったとしても、ごく一部分を抜き取って袋叩きにするのではなく、もう少し余裕を持った心で受け流せばいいじゃないか——などと言うと、「否定的な意見をいうのも、個人の自由だ！」と返されるわけだが、勝手に独り言をつぶやく分には構わない。だがそれをインターネットに乗せて発信するのは、禍々しい憎悪をばらまくようなもので、正義でもなんでもない。

自虐ネタや毒舌さらには風刺といった、面白さを含む差別発言すら奪われてしまったのでは、ニンゲンがもつユーモアなど消滅したに等しい。だからこそ、そんなディストピアになる前に「もっと面白さを追求できる世の中を保ってほしい」と、シロガネーゼは願うのであった。

（とはいえ、足立区こそ２３区最強であり、むしろ日本が誇る武闘派エリアなのは間違いない！）