久しぶりにオーケストラの生演奏を聴いたわたしは、その多彩な音と迫力に圧倒された。曲目はG・マーラー作曲の交響曲第2番ハ短調「復活」で、演奏時時間は延べ80分という大作。
ちなみに、この作品はマーラーの代表作の一つとして有名な曲だが、その全てがとにかく「凄い」の一言に尽きるところが面白い。
まずはステージ上の「人数」が凄いのだ。弦楽器、管楽器、打楽器、ハープ、オルガンに加えて、第5楽章で突如出現するオーケストラの別働隊(バンダ)である管楽器および打楽器を合わせると、オーケストラだけでも100名という大編成。
そこへ、声楽独唱のソプラノとアルトの二名、さらに混声合唱団が100名程度加わり、合計200名もの演奏者がズラリと並ぶのだから、それはもう圧巻の一言である。
さらに、この曲の「構成」がこれまた凄い。
一般的に、交響曲といえば4楽章形式だが、マラ2に関しては5楽章構成となっている。そして、後半へ向かうにつれて新たな演奏者が追加で登場してくるのだが、まずは第4楽章でアルトの独唱が現れ、第5楽章ではソプラノ独唱と合唱が入るのだが、時を同じくして「別動隊(バンダ)」が投入され舞台裏や廊下を使って音響空間の拡張を試みる・・という、とんでもない画期的なアイディアで構成されているのだ。
中でも、この「バンダ/banda:イタリア語で楽隊やバンド」と呼ばれる、オーケストラ本体とは異なる別動隊の存在が素晴らしい。
マラ2自体が・・いや、マーラー自身が人間の生と死について考え悩み続けていたため、現世とあの世を効果的に演出するべく楽屋の廊下やロビー、客席の高い所などステージ外へバンダを配置し、なんとも不思議で神聖な”天上の響き”を表現する——そんな、立体的な効果を編み出したのである。
挙句の果てには、二階部分にあるオルガンまで参加しての壮大なる大熱演は、それはもう途中でうつらうつらしても確実に叩き起こされる凄さ——というわけで、人数的にも楽曲的にも聴く者の魂を揺さぶるスケールの交響曲第二番は、「凄い」のオンパレードなのだ。
・・おっと、もう一つ特筆すべき「凄い」を忘れていた。なんと、指揮者(永井宏氏)が楽譜を見ずに全楽章振り続けたのである!!
(オーケストラの指揮者が暗譜なんて、あり得るのだろうか・・いや、目の前で起きているのだからあり得るのだ)
おそらく、彼の中にはマーラーが降臨していたのだろう。全身全霊で指揮を執り続ける後ろ姿を眺めながら、指揮者の凄さをまざまざと見せつけられるのであった。
*
以上が、マラ2の生演奏を聴いての「凄さ」だが、これとは別にわたしはとんでもない発見をしてしまった。
それは何かと言うと、オーケストラの定番ともいえるシンバル(正確には、二枚の金属を打ち合わせる「クラッシュ・シンバル」)は、簡単そうに見えて実は相当難しいのではないだろうか・・ということだ。
街中などで、猿がシンバル叩くぬいぐるみを見かけることがあるが、とてもじゃないが猿がシンバルという楽器を扱うことはできない。一見、金属製のプレートを打ち合わせるだけの、誰でも簡単に音を出せるシンプルな楽器だと思われているだろうが、あれはそんな単純なものではない。
わたしは素人なのであくまでイメージの話になるが、シンバルを正面で打ち合わせれば、間に空気が入ってしまい響く音は出ないはず。さらに、ただ単に強く打てば金属同士の衝撃音のような品のない音になるだろう。
おまけに、片方2キロの重さの金属を両手で持ち、適切な角度と脱力したフォームを維持しながら、適切なタイミングで登場する——しかも、シンバルが登場するシーンというのは得てしてクライマックスであり、盛り上がりが最高潮となる時に一回だけ現れる・・という、明らかに緊張と集中が必要で、絶対にミスが許されない究極の一瞬を任されている。
このように、重要な局面でしか登場しないクラッシュ・シンバルは、その一打が作品の出来栄えを左右するといっても過言ではないくらい、超重要な役割を担わされている。よって、もしもシンバルが入るタイミングを間違えたならば、あるいは鳴り響く音が出せなかったりしたら・・・舞台にいるすべての者にとって、そして固唾(かたず)を呑んで見守る観客にとって、ある意味「忘れられない思い出」として脳裏に刻まれることだろう。
そんな、過酷な運命を背負わされたシンバル奏者に目が釘付けになるわたしは、彼が立ち上がるたびにドキドキしながら、見事な「シャーーン」に胸をなでおろしていた。
(シンバル奏者ってマジで凄いな。わたしなら、シンバルだけは絶対にやりたくない)
とてつもないプレッシャーと責任感を押し付けられるシンバル奏者に、同情しつつもありったけの称賛(拍手)を送るのであった。











目をつけどころがさすが!面白い!!
あのオケの集団の中でそこを目をキラキラさせて見てるのを想像できます(笑)
笑
シンバルさんにチップ渡したいくらい、緊張した