続々と届く「結婚おめでとう」メッセージ

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事の発端は、SNSでジョークを飛ばすようなタイプではない後輩が、彼にしては珍しく"わたしをいじる系のジョーク"を載せたことだった。

待望の息子が誕生したことで、いよいよ父親となった後輩とその妻へ、祝いの品としておむつケーキをプレゼントしたわたし。厳密には、わたしと"ある友人"とでチョイスしたもので、「なんか、ドーンとしたやつをあげたい」という友人の願いを叶える形で、通常販売している商品ではなく、アレコレくっ付けたり入れ替えたりしながら、オリジナルかつビッグなおむつケーキをこしらえてもらったのだ。

 

その"ある友人"というのは、関係性としてはジム仲間だが、驚くべきことにわたしの元カレと瓜二つだったことから、出会った当初から「元カレ説」をまことしやかに流していた(わたし発信)のだ。

そして"偽元カレ"も、ネタであることを承知の上で「必要以上に追究されるのが面倒」とでも思ったのだろう。明確に否定をしないことが仇となり、「あの二人は昔付き合ってたらしい」とか「あの二人、じつは付き合ってるんじゃないか?」という、非常にセンシティブな誤解を招く結果となってしまったのだ。

このような裏事情があるにせよ、普通に仲の良いわれわれは柔術の練習に励んだりコーヒーを飲んだりと、日々楽しく過ごしていたのである。

 

以上のようなくだらないネタがある前提で、最近父親となった後輩がSNSに「"偽元カレ"とURABE夫婦からいただきました!」という文言とともに、われわれがプレゼントしたおむつケーキを載せてくれたのだ。それを受けてわたしは「いつの間にか結婚したので、ご祝儀お待ちしております」と、後輩の投稿をシェアしたところ——、

 

次から次へと、結婚を祝福するメッセージが届き始めたのだ!!!

 

たしかに、わたしと偽元カレの関係性を知らない者からしたら、後輩の投稿とわたしの投稿を見れば「URABEはようやく結婚できたのか!」となるだろう。そしてよくよく考えたら、ほとんどの人間がわれわれの関係性など知る由もなく、そりゃ驚くだろうし祝福もしてくれるわけだ。

「いやいや、これは冗談だから」

この文章をコピペして、いったい何人の友人・知人へ送信したことだろうか。まぁ、返金しなくていいならば、祝儀は喜んで受け取るが——。

 

そうこうするうちに、とうとうスマホの充電が切れた。ちょうどバスへ乗り込み、パスモで支払いを済ませた後でよかった・・・などと安堵しながらも、"誤解を訂正するメッセージ"を送らなければならない相手がまだまだいることに焦りを感じていた。

一刻も早く訂正したいので、帰宅前にどうにかしたい・・かといって、22時近くに電源が確保できるカフェも見当たらない。どうしよう——。

 

悶々としながらバスを降りると、目の前に馴染みの店が現れた。そう、ヒマラヤカリーだ。ここは正真正銘インド人が調理をするため、本場のスパイスが豊富に取り揃えてある。さらに、わたしのワガママをなんでも聞き入れてくれるため、「白金の最後の砦」として一目置いている店なのである。

そしてわたしは閃いた、ここしかないだろう・・と。

 

「イラッシャイ、ヒサシブリネ」

馴染みの店員が笑顔で声をかけながら、空いているテーブルへとわたしを座らせた。・・それにしてもこの店は、なぜかいつも客がいない。そのため、テイクアウトのわたしを着席させてはもてなしてくれるのだ。

ということで、いつものように着席すると、わたしは店員にこう頼んでみた。

「その(iPadにささってる)充電器、貸してもらえないかな? PayPayで払いたいんだけど、スマホの充電切れちゃって・・」

そう、この手を使うしかなかったのだ。要するに"ここのカレーを食いたいが、現金を持っていないわたしにとって、PayPayが使えなければ支払いができない"というアピールをすることで、必然的にスマホの充電をさせてもらう作戦・・ということだ。

店側としてはカレーを買ってもらいたいので、PayPayの充電くらいお安い御用だろう。そしてわたしは、合法的かつ気分よくスマホの充電ができるわけで、もちろんPayPayで支払うのだから問題はない。

 

——裏技により辛うじて生き返ったスマホを駆使して、「わたしはまだ結婚していない」旨をせっせと送信するのであった。

 

Illustrated by 希鳳

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