4月30日に起きた、詐欺のほうがまだマシな悪夢

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(ま、マズい・・・マイナス生活へのカウントダウンが始まったぞ)

 

あまりの驚きに、ただでさえ飛び出ている目ん玉がもっと飛び出そうになる出来事が起きた。

スマホをいじりながら、何気なく銀行口座の残高をチェックしてみたところ、にわかに信じがたい金額が画面に示されたのだ。

 

ゼロが一つ足りないどころの話ではない。入出金明細によると、4月30日に六桁レベルの出金が7回も行われている。

たった一日でこんな高額ないたずらを、いったい誰が——。もはや、詐欺に遭ったほうがスッキリするだろう。そのくらい、とてもじゃないが受け入れられない現実を突きつけられたのだ。

 

(小規模企業共済、東京都社労士会費、東京都政連会費、プルデンシャル生命、家賃、クレジットカード、ほかにも消費税にスタジオ代、水道代などなど細かい引き落としが行われている・・・・・)

 

そういえば、4月は財布に厳しい季節だということを、今さらながら思い出した。

たとえばクレカや家賃、光熱費といったほぼ定額の引き落としについては、毎月覚悟を決めて必死に耐えている。だが、思いもよらない大出費が一気に押し寄せてくると、それはもう破壊的な威力で貧弱なわたしを叩きのめすのだ。

(・・とはいえ、無い袖は振れない)

 

辛うじて、まだ多少なりとも残高があることだけが救いである。それでも、来月を無事に迎えるのは困難な雰囲気が漂っているではないか。

これは久々に「バイトをしろ」という暗示なのだろうか。それとも「カネを借りてこい」ということなのか。いずれにせよ、これ以上の打撃——たとえ小さな衝撃だったとしても——は、致命傷になりかねない。

(・・・とはいえ、無い袖は振れない)

 

一にも二にも、いや、三にも四にもカネである。しかし、その日暮らしを繰り返してきたわたしにとって、貯金というものがあったためしがない。

そのため、収入が少ないときは複数のアルバイトを掛け持つなど、身を粉にして働くことでなんとか凌いできたわけだ。

 

(そういえば、メシ代を立て替えてやったときの五千円札が、どこかにあったな・・・)

藁にも縋(すが)る思いで、わたしはかつて受け取ったはずの五千円札をガサゴソと探し始めた。だが、当然ながらそんなものは見つかるはずもなく、見つかったところで五千円程度でどうにかなるほど、この世は甘くない。

 

(じゃあ、なにか売れる物はないだろうか)

スタバでバイト・・というような、労働集約型産業での稼ぎも悪くはないが、とりあえず手っ取り早くカネが手に入る方法がないかと考えた。

一発である程度のまとまったカネが手に入る、ナニか——。

 

(まぁ、そんなものがあったら、とっくに売ってるか)

そもそもわたしが、カネになるようなお宝を持っているはずもない。かつて、あれほど熱を入れて集めていた有名ブランドの機械式時計も、今となってはどこかへしまい込んだのか、あるいは誤って処分してしまったのかは分からないが、どこにも見当たらない。

仮にそれらの時計が見つかったとしても、売る気がないので意味はないわけで、一周回ってわたしが働くしかないのである。

 

(わたしに、なにができるのだろうか・・・)

改めて、自分自身にどのような技術や能力があるのかを考えてみた。まず、即戦力になりそうなのは、カフェでスチームミルクを炊くことだろう。あとは、クオリティーを気にしないならばアーク溶接か。

だが新たにやってみたいのは、土木工事やビル解体などの作業現場で、作業服に身を包み汗を垂らしながら力仕事に精を出すことだ。

さすがにオンナでは役に立たないかもしれないが、それでも「何かを作り出す仕事に携わってみたい」という願望は強く、できるものならすぐにでも面接を受けたいところ——。

 

(・・いや、その前に節約をしよう)

当たり前だが、スタバで月に15万円も費やすような生活を改めれば、支払いのダメージを抑えることができる。

「稼がなければならない」ということとは別に、「無駄遣いを改めなければならない」ということを、並行して実現しなければならないと気づいたのだ。

 

とはいえやはり、無い袖は振れない——。

 

 

あれこれ頭をひねりながらも、やっぱり月末が恐ろしいのであった。

 

Illustrated by 希鳳

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