お首のオシャレ

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あと数日で三月も終わり・・ということで、いよいよ新年度のスタートが目前に迫ってきた。

日中の気温はさほど高くはないが、それでも刺すような寒さは身をひそめ、花屋の店先には春らしい彩りの花が並び始めた。

そして街行く人の身なりも、黒色の防寒着からパステルカラーの春服へと変わりつつある。

 

・・・そう、ついに春がやってきたのだ。

 

 

(丸首のニットやシャツの季節か・・・)

春といえば丸首のニットが定番だろう。さらに、徐々に露出が増えることから、首回りのアクセサリーにも気を使わなければならない。

 

数年前、小ぶりなダイヤが付いた華奢なネックレスの長さを調整しようと、購入店を訪れたときのこと。

丸首のシャツやニットから、チラッと見える微かな輝きがオシャレだ・・と確信しているわたしは、チェーンを短く詰めてもらうことにした。そこでの店員との会話で、

「立派なお首ですね」

と褒められたことは、未だに忘れられない思い出となった。首のことを「お首」と言われたことも初めてだが、「細くて美しい」ではなく「(太くて)立派」と称えられることも、人生でそう何度もあるわけではないので。

 

さらに、めんどくさがりなわたしはアクセサリーの着脱が苦手である。そのため、寝るときもつけっぱなしにできるデザインを好んでおり、最近ではチタンやサージカルステンレス素材のシンプルなものがお気に入り。

だからこそ、「寝るときも、海に入るときもつけっぱなしでOK!」という誘い文句に飛びつき、いそいそと広告をクリックしては、ピアスやネックレスを購入するのであった。

 

中でも、ネックレスの長さにこだわりがあるわたしは、中途半端にたるんだ状態を非常に嫌う。

首元でかすかに光るゴールドのアクセントこそが、オシャレの極み——。そう信じて疑わないわけで、チェーンの長さは35から40センチと決めているのだ。

 

そうなると、ネックレスというよりチョーカーに近い形状だが、名称なんてものは主観的なものであり、他人がなんと呼ぼうがわたしには関係ない。

(Tシャツやニットの首元からチラッと覗く、細くしなやかなスネークチェーンのネックレス・・あぁ、これこそがわたしの求めているオシャレだ!)

 

こうして、金属アレルギーでも安心して装着できて、錆びに強く変色しにくい、サージカルステンレスのネックレス・・というかチョーカーの購入ボタンを、勢いよくスマッシュしたのである。

 

 

(・・お、さっそく届いたか!)

集合ポストを開けると、お目当ての商品が投函されていた。居ても立っても居られないわたしは、その場で開封してそそくさとネックレスを首に巻いてみた。

 

(ん、サイズがピッタリな感じか・・)

留め具部分に5センチの余裕があるため、首回りがきつければ一番外側で留めれば問題ない。部屋に着いたら試してみよう——。

 

こうして帰宅したわたしは、鏡の前に立つとスネークチェーンのネックレスを装着してみた。

夜だから首が浮腫んでいるのだろうか・・チェーンが鎖骨にかかることなく、首回りにピタッと張りついている。たしかに、これではネックレスというよりチョーカーだ。とはいえ、チョーカーを買ったのだから問題はない。

(・・しばらく着けていたら馴染むかもしれないな)

どんなものでも新品は人間の体にフィットしない。よって、しばらくこのネックレスをつけた状態で過ごすことにした。

 

(・・・うっ!)

夜食のクロワッサンを頬張ろうとしたところ、パンの破片が床に落ちてた。それを拾おうと下を向いた途端に、わたしの首がキュッと絞められたのだ。

そう、スネークチェーンのネックレスが、下を向くことで太くなったわたしの首を絞めつけたのだ。正確には、チェーンの長さが変わったわけではなく、首の円周が広がったことで勝手にきつくなっただけなのだが。

 

(なんだろう、この嫌な雰囲気は)

まるでタコ糸で首を絞められたかのような感覚に、わたしは違和感というより嫌悪感を抱いた。マズイ、このままでは殺される——。

 

だが、首元でキラッと光るオシャレアイテムを手放すわけにはいかない。かといって、下を向くたびに首回りを圧迫されるような恐怖に襲われるのも困る。

いったい、どうすればいいんだ・・・。

 

 

答えは簡単である。もう一つ上のサイズを購入すればいいのだ。

 

Illustrated by 希鳳

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