北の大地から届いた、冷たくて甘いお宝が消えた件

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冬になると食べたくなるものがある。それはアイスクリームだ。

「冬にアイス?!」と意外に思われるかもしれないが、なにも寒空の下でアイスを貪ろうというのではない。暖かい室内でぬくぬくとアイスに舌鼓を打つことこそが、至福の時なのである。

となると、「ならばオマエは、夏にアイスを食わいのか?」という意地の悪い質問が飛んできそうだが、その通りだ。わたしは夏にアイスは食べない。その代わりに、ガリガリ君のような氷菓にかじりつくのだ。

 

そもそも真夏の灼熱地獄でアイスクリームなど喰らおうものなら、秒単位で溶けていくではないか。よって、アイスというのは冬場にこそ真価を発揮するデザートなのだ。

加えて、外は寒いのに暖かい室内で冷たいアイスを楽しむ・・という背徳感が味覚をさらに刺激するわけで、それにより贅沢を満喫することができるのである。

 

・・そんなわたしの習性を知ってか知らずか、アイスクリームの本場・北海道からアイスの詰め合わせが届いた。

 

 

流行る気持ちを抑え、いそいそと発泡スチロールの蓋を開けると、そこにはたくさんの宝石が——その名も"カウベル"。目移りしそうなお宝の中でも、真っ先に目に入ったのは"ハスカップ"だった。

ハスカップは、北海道に自生するブルーベリーによく似た青紫色の果実。本州で見かけることはほぼないが、ジャムやゼリーといった加工品を目にすることはたまにある。ちなみにハスカップは、アイヌ民族の間で「不老長寿の実」と呼ばれ、その豊富な栄養素が重宝されたのだそう。

そんな奇跡の果実を練り込んだ爽やかで甘酸っぱい風味と、カウベル独自の滑らかな舌触りのアイスが、口の中で緩やかにとろけていく。極上である——。

 

次に手を伸ばしたのは"とうきび"だ。パッケージはトウモロコシのようなイラストが描かれているが、お味はいかほどのものか——。

・・うん、甘くて美味いじゃないか!しかし、とうきびというのはサトウキビのことか?なんというか、トウモロコシとは違う優しい甘みを感じる・・いや、北海道産だから甘いのか。忘れてはならない、北海道のトウモロコシは甘くて立派で美味いのだ。

そしてこちらも、アイスクリームとの相性抜群な逸品である。・・とうきび万歳。

 

次なるターゲットは"北海道メロン"だ。これとは別に"赤肉メロン"というのもあるので、両方を交互に食べ比べることにした。

北海道メロンは緑色、赤肉メロンはオレンジ色をしている。緑色のほうは上品なメロンの味がする。うん、これこそがメロンというお味だ——。そしてオレンジ色のほうは、赤肉メロンの芳醇な香りがたまらない——。

両メロンはともに、甲乙つけがたい完成度である。あっぱれ。

 

こうなったら一通りすべての味見をしなければ気が済まない。わたしは手当たり次第にお宝を取り上げると、次々とスプーンを突き刺していった。

バニラビーンズ、コーヒー、かぼちゃ、クリームチーズ、いちご、プレミアムバニラ、抹茶・・・。どれも一度は口にしたことのある味のはずだが、カウベルのアイスは今までの味とはどこか異なる。

一般的なアイスクリームは、風味を際立たせるために甘みや味付けが濃くなりがち。ところがカウベルは、どれも薄味に抑えてあるのだ。それでいて滑らかで上質なくちどけが舌の神経を総動員させるため、控え目なフレーバーを十分に堪能できるのである。

——それは自然で滑らかで、とても優しい甘さなのだ。

 

(あぁ、絶品アイスクリームとは、まさにこれのことだろう・・・)

 

 

こうして気が付くと、すべての種類を制覇したどころか二週目に突入していたわたし。

我が家には業務用冷凍庫があるため、いくらでも保存は可能。にもかかわらず、発泡スチロールの梱包からアイスを取り出しては舐め尽くし、次から次へと平らげた結果、ついさっき北海道から届いたばかりの宝石は空となった。

いま思えば、どれが一番だったのか覚えていない——。

 

欲望のままに一気に貪り食うというのもありだが、せっかくの贈り物なのだから、もう少し味わいながら満喫するのが正解なのではなかろうか・・と、大量のアイスの空箱を眺めながら肩を落とすのであった。

 

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