断水サバイバル

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(・・・なぜ出ない?)

 

日曜日の早朝、わたしは約束事があるため出かける準備をしていた。朝起きたらまずはトイレで老廃物を排出し、そこから新たな一日が始まる。というわけでトイレに腰かけて用を足し、ウォシュレットのボタンを押す。

シーーン

おかしい、水が出ない。他のボタンを押してみるも、ウォシュレットはウンともスンともいわない。電池切れを疑いパネルを確認するが電池マークの残量は十分ある。

ただでさえ遅刻確定のわたしは、ウォシュレットを諦めてトイレを出た。そして手を洗おうと水道の蛇口をひねったとき、すべてを察知した。

 

(また断水してる・・・)

 

少し前にも突然の断水を経験したが、その時の原因は水圧を調整する装置に不具合があったからとのこと。駆けつけてくれたクラシアンの兄ちゃんは、ものの2分で水を復活させた。あれから一週間しか経っていないが、またもや水圧弁の不具合なのか?

そんなことよりも今は手を洗うことが最優先事項。水道から水は出ないのだから、他から得るしかない――。

というわけで、おなじみ「24時間フル稼働除湿器」のタンクを外し、一晩かけて採取した豊富な天然水でジョボジョボと手を洗った。

 

(さてと、次はどうしようか)

 

手を洗う程度ならば湿気から採取した天然水で問題ないが、顔を洗ったり歯を磨いたりする場合、さすがにこれは使いたくない。もちろん世紀末のような事態であれば、除湿器の水でも尿でも躊躇なく使うし飲むだろう。だが今は太平の世、そこまでチャレンジする必要もない。

 

というわけで、飲める水が前提ならばティファールに残っている水に期待するしかない。緊張しながらフタを開けると、辛うじて半分くらい水が残っている。まずはこれで痛み止めを飲まなければならない――。

優先順位としては当然、損傷している頚椎に対する疼痛治療剤を飲むことに決まっている。わたしはティファールの残り水を無駄使いしないためにも、口の中にツバを溜めて少しでも足しになればと試みる。そして最後にちょびっとティファールの水をふくむと、下から上へ勢いよく顔を上げ、その加速に合わせてゴクリと一気に飲み込んだ。――これでひと安心。

 

つぎは顔を洗うことだ。ティファールの水をチョボチョボと手のひらに垂らし、そのわずかな水で顔面をゴシゴシこする。とりあえずヨダレの跡が消えればいいだろう――。

とそこでティファールの水が残り僅かとなる。こうなると歯磨きは危険。よって、歯磨きで使う水の不足分は「いろはす」で補うしかない。――あぁ。もったいないが背に腹は代えられない。

 

ひと通りの朝の儀式が済んだところで、ふと鏡を覗くと髪の毛がひどいことになっている。これは明らかに寝起きの風貌。もうすでに遅刻しているにもかかわらず、寝ぐせすら直さずに現れたら、相手はさらに不快な気分になるだろう。髪の毛を濡らさねば――。

こんな時に限って水が出ないとは、日頃の行いの悪さの表れかもしれない。だがわたしも女だ。こんな髪型で外へは出られない。

 

昨夜、食べ終わったキムチの瓶を軽くすすいだ後に、ニオイをとるために瓶を満水にして置いておいたものが目に入る。さっきからそれだけは避けていたのだが、もはや今は瓶を見つめるしかない。

(何度かすすいだ。つまりキムチのニオイはもう残っていないはずだ)

そう強く言い聞かせると、勢いよく瓶をつかみ流しに突っ込んだ頭へとぶっかけた。

 

(これで寝ぐせとおさらばだ!)

 

キムチ臭があったかなかったかは別として、寝ぐせを直すことには成功した。そして大急ぎで約束の場所へと向かったのであった。

 

サムネイル by 希鳳

 

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