わたしは今まで、自分が「仕事をしているフリ」をしていたことを白状する。
そしてそれがいかに無駄で無意味だったかも認める。
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連日、労働保険料の年度更新を行っている。申告の方法は、政府が運営する「e-Gov(イーガブ)」へアクセスし、電子申請にて処理をする。
流れとして、まずはクライアントから「年度更新の申告書」を送ってもらい、そこに記載されている「アクセスコード」という暗号を入力し、電子申請画面へと進む。
そこで昨年度の確定保険料や、今年度の概算保険料を入力し、納付回数を選択後、管轄の労働局を指定して提出する仕組み。
一番面倒なのは、確定保険料の計算だろう。
だが顧問先であれば、毎月賃金の確認をしているため、あとは社労士ソフトが自動計算してくれる。
バカなわたしが電卓を叩くより、はるかに正確で迅速に計算してくれるわけで、さすが高額な年間保守料を支払っているだけの価値はある。
社労士ソフトが自動計算した金額を、電子申請画面へ入力し、クリックするだけで年度更新は終わり。
というわけで、毎年この時期になると
「毎月の積み重ねが、ここへきて絶大なる効果を発揮している!」
としみじみ感じる瞬間でもあるのだ。
問題はここからだ。
労働保険料の納付方法は2種類ある。一つは口座振替、もう一つは納付書。
口座振替は読んで字のごとく、口座から自動引き落としされる。
そして今回、問題として取り上げるのは「納付書」のほうだ。
毎年5月後半から6月上旬にかけて、労働局から送られてくる緑色のデカい封筒に、年度更新の書類は同封されている。
手続きで必要な「年度更新の申告書」というのは、3枚綴りのベロンと長い書類。
そのベロンとした下の方に「納付書」がくっ付いており、それを使って銀行や郵便局などで納付をしてもらう。
顧問先へは事前にメールで、
「口座振替が便利ですから、手続きしてくださいね」
という内容とともに、口座振替申込書とパンフレットを送信している。
もちろんそれを見て、すでに切り替え手続きを済ませた顧問先もあるが、毎年恒例で「絶対に納付書」の企業も存在する。
割合でいうと顧問先の半分くらいは納付書だ。
傾向として、
「事務担当者がおらず、社長自らも現場に出ている」
このような場合、口座振替に切り替える手続きを行う暇がなく、納付書のままとなってしまうのだろう。
それでもわたしはそれを悪いとは思わなかった。
その理由は、
「納付書に金額を記入し返送することで、わたしが『仕事をした感』が出る」
と思ったからだ。
いま思うとなんとも下衆で低俗な考えだが、顧問料というものを考えるとつい、サービス精神とでも言おうか、少しでも「役に立ってます」感を出したいと考えた。
顧問料というのは毎月定額ゆえ、手続きやトラブル、事件があればクライアント側はラッキーだろう。顧問料内でさまざまな対処をしてもらえるからだ。
だが労働者の入退社や異動、事件も何も起きなかったとき、わたしはラッキーだがクライアントは「チッ」と思うかもしれない。
顧問はすなはち保険。いわゆる「お守り」のようなもの。よって、わたしを顧問に置いておくことで災厄が起きなければ、それに越したことはない。
とはいえ毎月報酬は発生するわけで、何も起きないのが良いことであっても、企業側の心境としては微妙なものだろう。
そこでわたしは、せめてもの「やってます感」を出すために、毎年この時期はせっせと納付書に記入し、封筒に宛名を書き、切手を貼って投函していたのだ。
なにがDXだ、なにが業務効率化だ。今まで散々、
「申請は電子に限る。郵送や直接持ち込みなど、愚の骨頂!」
と声高に叫んでいたわたしが、年度更新(の納付書)だけは手書きで郵送を慣行。
仕事をしているフリのために、アナログをスルーしていたなど、口が裂けても認めたくはない。
そこで今年はこの愚行を悔い改めようと、口座振替に切り替えていない顧問先へ、口座振替申込書をある程度記入した上で送付することにした。
なぜなら、口座振替にしない企業は、単純にその手続きが面倒だと感じているからだ。
わたしがメールで送った申込書をプリントアウトし、必要事項の記入と押印後、金融機関の窓口へ提出。
その作業をする暇がなかったり、面倒だったりするから実行しないのだ。
であれば、こちらである程度記入した状態で送れば手間も半減、さすがに手続きをしてくれるだろう。
ということで、3枚セットの口座振替申込書をせっせとプリントアウトし、最低限の必要事項を記入する。
とくに「労働保険番号」など事業主は知らないことが多い。知っていて当然だが、まぁその辺りはわたしの仕事だろう。
事業主情報を記入し、押印箇所と口座情報記入欄をマーカーで分かりやすく色付けする。
ーーオイ、1社作成するのに10分かかったぞ。
日ごろから馴染みのない手書きに加え、労働保険番号、法人所在地、法人電話番号、法人名、法人代表者名、口座振替開始時期などを記入しなければならず、あれこれ調べながらの記入となる。
電話番号を間違えた、郵便番号を間違えた、挙げ句の果てには事業主の名前の漢字を書き間違えたーー。
そんなこんなで紙を無駄にするわ、時間も無駄に使うわで、散々な思いをした。
ーー厚生労働省よ、なぜこの申込書をExcelで提供しないんだ?記入例はExcelなのに、なぜ申込書はPDFなんだ?これでは必然的に手書きになるではないか!
あぁどうか、この汗と涙の結晶である口座振替申込書を、金融機関の窓口へ提出してもらいたい。
そして来年からは、
「納付書へ手書きで記入し、切手を貼って投函する」
というアナログ作業が消えることを願う。
と同時に、わざわざ金融機関へ出向く手間が省けるので、多忙な事業主にとってもいいことずくめであると伝えたい。
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