料理という行為において、アドバイスをもらう度に感じることがある。
それは「なぜああも平気な顔で、無理難題を言ってくるのか」ということだ。
たとえば「少々」とか「適量」とか、ハッキリと数字で示してくれなければ分からない。こちらは経験豊富な熟練工じゃないんだから。
本日の料理教室は「餃子」だ。
前回の「ハンバーグ」で大失敗をした経験を生かし、今回はプロ(餃子屋さん)から「作り方の紙」をもらうなど、万全な態勢で挑む。
どれほどの意気込みかといえば、イワタニのカセットコンロとテフロン加工のフライパン、おまけにフライパン蓋まで購入する気合の入れよう。
できたての生餃子33個を抱えて、早速、海岸沿いへと向かう。
「花火、バーベキュー禁止」
了解、問題ない。
わたしは花火もバーベキューもしない。卓上コンロというライターの仲間で、しばらく火をつけるだけだから。
もし誰かに注意されたら「よく見て、これデカいライターだから」と説明するだけだ。
ものすごい屁理屈を頭の中でこねながらも、ちょうどいい調理場所を発見。早速コンロを設置し火をつけ、適当にオリーブオイルを垂らす。
まずこのオリーブオイルの量が難しい。もらった「作り方の紙」には特段、オリーブオイルの量の指示が書かれていないのだ。
ーーまぁ餃子は33個もあるし、失敗を重ねながら最高傑作を生みだそう。
生餃子の美味さを伝えるべく、逐一SNSに投稿。
すると、料理などできるはずもないわたしを心配し、多くの友人から注意やら悲鳴やら笑いやら、さまざまなメッセージが送られてくる。
なぜなら早くも、初回の餃子を黒焦げにしたからだ。
「火力、強すぎない?」
作り方の紙には「中火」と書いてある。そしてコンロのツマミは真ん中にセットされているので、中火であることは間違いない。
だが3〜4分放置したせいで、無惨にも焦げたのだと思われる。
「焼き色がついたら水入れて蒸らすんだよ!」
どうやったら焼き色がついたかどうかわかるんだよ。
「箸でつまんでのぞけばいいだろうが!」
た、たしかに。しかも1分程度で「焼き色」とやらはつくらしい。
料理とは単純作業の積み重ねかもしれない。だがわたしには、未知なる作業工程の連続ゆえ、さっぱり意味がわからない。
あぁ主婦って本当にすごいな、と感心しきり。
「フライパンをよく温めてから」
フライパンがよく温まっているかどうかなんて、どうやって確認するんだ。やけどしやしないか?
「なんていうか、フライパンの3~4センチ上に手をかざして、熱気を感じたら温まってるぞ、みたいな・・・」
もはや説明する側も、笑いをこらえながら文字入力しているだろう。だが、フライパンを温めたことのないわたしにとって、それはまったく意味不明の状況なのだから仕方ない。
かれこれ5回目だが、餃子がまた焦げだした。
「フライパン拭いてから次のを作ってる?」
いや、そのまま継ぎ足し継ぎ足しで秘伝の焦げを踏襲している。
「フライパンが汚れてるから焦げるに決まってる!基本的なことだ!」
なんと、そういうものなのか。そんな基本的なことすら今日初めて知った。
とりあえず無事33個を食べ終わったところで、友人からメッセージ。
「やっぱり・・・。できるのかな、って心配してたんだけど」
焦げた餃子のSNSを見て、やはりダメだったかと落胆しながらも納得の様子。
そりゃそうだ、こちらは挑戦することに意義があると思ってるんだから。
極めつきは、餃子を販売する家元の嫁からの一言。
「営業妨害!!!」
うむ、間違いない。
*
しかしなぜ毎回失敗するのだろう。
初回の餃子は、焦げたあげくに水をたくさん入れすぎたせいで、焦げ水餃子となった。
2回目の餃子は焦げはしないものの、水が多すぎてこれまた水餃子になった。
3回目の餃子はまぁまぁうまくできた。
4回目の餃子で成功した。これは売り物になるレベルだと自負する。
ここで箸休めにホウレンソウを投入。たまたまホウレンソウが手元にあったので、とりあえず油を吸わせるためにも炒めてみる。
そして5回目、ここでまたしても焦げた。上り調子にここまできていたので、非常に残念な結果だ。
どうしても諦めきれないわたしは再び店を訪れ、餃子28個を追加購入して帰宅。そして念のため、自分ではなく他人に作らせたところ、美味しさにプラスして完璧な餃子が出来上がった。
これはきっと、室内でガスコンロを使ったためだと思われる。屋外の過酷な環境下で、卓上コンロを使って餃子を調理するのは至難の業。室内ならば誰でも成功するのではないか。
きっとそうに決まってる。
コメントを残す