平日の早朝という異次元空間

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所用で高崎へ向かうわたしは、朝7時過ぎに家を出た。平日の早朝に道を歩き電車に乗る・・つまり通勤するなど、とてもじゃないが自分事としては考えられない。しかもこの時間はまだ空気があったまっていないため、極寒の真冬ではないにせよ身に応える寒さである。

にもかかわらず・・だ。最寄り駅に到着すると、続々とサラリーマンたちが階段を上がって来るではないか!!しかもその顔に疲れや澱(よど)みはなく、まるでこれから始まる一日を喜んでいるかのような、あるはずもない光景が広がっているではないか——。

 

(これはいったいどういうことだ?この時間に出勤するということはフレックスなのか、はたまた7時15分が始業なのか。いずれにせよ、8時間労働ならば午後4時15分まで仕事をしなければならない。仮に7時間労働だとすると、午後3時15分まで・・なるほど、終業が「3時」と聞くと、夕方というより昼過ぎに上がれる感覚なので悪くない。だがそうなると、週5日ではなく週6日勤務という可能性もあるわけで、それもまた勘弁願いたいものだが・・)

 

他人の就労事情など放っておけばいいものを、あまりに信じられない光景に面食らったわたしは、勝手に彼ら彼女らの勤務シフトを予想した。

これがたとえば、カフェなどの飲食接客業ならば理解できるのだ。この時間・・つまり朝の通勤時間帯のシフトから入り、ランチすぎまで働いて終わりというのは、良くある話である。だが、スーツ姿のサラリーマン的な職業の者が、モーニングだのランチだのという勤務シフトで動いているとは思えないので、やはりフレックスなどを使い自らの選ぶ時間帯で仕事をするのだろう。

 

そんなことを思いながらホームへ降りたわたしは、本日二度目の「面食らった」を体験した。なんと、こんな早朝からホームには溢れんばかりの人混みができており、強引に押し入らなければ乗り込めないほどの、満員状態の電車が止まっているではないか!!

時刻は午前7時10分、こんな早い時間に通勤ラッシュはありえないが、まさか、今のご時世これが通勤ラッシュなのか——?!

とはいえ、平日の朝9時から10時にかけて電車を利用することがあるのだが、その際の混みようといったらシャレにならない。始発でない限り乗ることのできない”すし詰め状態”の車両が到着するわけで、さすがのわたしも遠慮して次の電車を待つ始末。そう、要するにこれこそが通勤ラッシュであり、時間的に2時間以上ズレているのだ。

 

社会性を失っているわたしにとってはただただ驚くばかりの出来事だが、とにかくこんな思いをしてまでも、「遅刻厳禁」のルールに則って社会性を維持する多くの民が存在するのだから脱帽である。

 

 

そんなこんなで高崎駅に到着したわたしは、「高崎アリーナ」という案内表示に従って外へ出た。なんとなく逆の出口な気がするが、看板は出ているしまぁいいか——。

 

ふと顔を上げると、わたしの前には何人もの・・いや、何十人もの若者らが歩いていた——きっと全員、わたしと同じ目的地へと向かっているのだろう。なぜそう思ったのかというと、本日、高崎アリーナにて柔術の大会が開催されるからだ。

大きなリュックを背負っている者や、スポーツバッグを肩に掛けている者、それぞれの格好でゆっくりと高崎アリーナへ向かう集団にまぎれたわたしは、Googleマップなど見ることなく彼らの背中を追って進んだ。

(それにしても、高崎駅では逆の出口を出てしまった・・と思っていたが、こっちでよかったんだな。むしろこんなにも大勢いるんだから、こっちが正解だったわけか)

 

そんなことを思いながら静かな追従を続けるうちに、突如、一行が右折を始めたのだ——え?曲がるにはまだ早い気がするが、地元民ならではの近道でもあるのか?

驚いて顔を上げたそこには、なんと「資格の大原」がそびえ立っていたのである。

 

♪おーはらおーはら、本気になったらおーはら♫ でお馴染みの「資格の大原」だが、奇しくもわたしを除く全員がここを目指して闊歩していたのだ。時刻は8時45分過ぎ、たしかに9時からの授業にちょうどいい時間である。

それにしても、懐かしい——。朝早くに家を出ることなど、当の昔に諦めたわたしだが、最後に渾身の力を振り絞って家を出たのは・・そう、予備校へ通う頃だった。

とくにこの時期、センター試験(当時)へ向けて最後の追い込みをかける冬の始まりは、受験生にとっては重要なシーズンだった。どんなに寒かろうが面倒くさかろうが、一限の講義に間に合うように起床して家を出ていた——。

 

などと遠い目で昔を思い出すわたしは、未来ある若者たちの背中を見送りつつ、一人寂しく高崎アリーナへと向かうのであった。

(やっぱり、出口逆だったじゃん・・)

 

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