わたしは基本的に「ラッキー」という要素だけで出来ている。しかもそのラッキーはヒトに起因する場合が多く、周囲の偶然や必然に助けられてここまでやってきた。
これだから、諦めたくても諦めきれないんだ——。
ここ最近、仕事やプライベートの不協和音が限界に迫りつつあるわたしは、いわゆる「メンタルを病む」という状況にあった。とはいえ、それを口にできるのだから軽症なのだが、脳の処理速度が低下し身体への伝達が遅れている事実に、「これはさすがに心療内科か・・」と真剣に考え始めていた。
そんな折に、精神的な回復の地として有名なインドのソウルドリンク(?)である"チャイ"を、土産品として友人からもらったことを思い出した。現地で購入したものなので、それこそガチ・チャイ——そうだ、インドの伝統医療であるアーユルヴェーダの恩恵を受けようじゃないか。
ということで、缶を開けると粉末のチャイをマグカップにぶち込み、数カ月ぶりにティファールのスイッチをオンにした。
チャイの量が合っているのか分からないが、熱いお湯とジンジャーの匂いが胃袋や嗅覚を刺激する——なんとなく腹が空いてきた。
(なるほど・・こうやって太古の昔から、人類は食欲を呼び起こすことで健康を保ってきたのか)
大した事ではないが、これだけでもなんとなく救われた気がするのだから単純である。そして、さすがに一日中家に籠っているのは不健康だろう・・ということで、汗を流しにジムへ行くことにした。それこそ足取りは重く、行きたくない気持ちに気付かぬフリをしながら、なんとか準備を整えると駅へと向かったのである。
「リカちゃん!」
イヤフォンからは、ショパンのピアノソナタ第3番4楽章の"一ノ瀬海バージョン"が流れていたが、どこか聞き覚えのある声に足を止めたわたしが振り返ると、そこには近所に住む友人が立っていた。
しかも、もの凄い濃いメイク・・まるで舞台終わりのバレリーナのような、まつ毛エクステなど二重三重に貼り付けた状態で、キラキラと軽やかな笑顔で手を振っていたのだ。
「おお・・レッスンだったの?」
ベストボディ・ジャパンという健康美を競うコンテストの常連である彼女は、ポーズやウォーキングの他に、メイクや髪型のレッスンを受けている。そして、この舞台メイクばりの完璧な化粧はどう考えても会社帰りではないだろうし、何らかのレッスンがあったのだと推測。
そんな会話を交わしながらも、年上とは思えない愛らしく初々しい笑顔を見せる友人に、わたしの荒んだ心はいつしか滑らかになっていった。
ヒトの笑顔でやさぐれた気持ちが穏やかになるなんて、そんな魔法みたいな笑顔があるはずもない——それでも事実、温かい液体が染み込んでいくかのように心が和んだ。
無論、その裏にはチャイをくれた友人の想いや、スタバ好きのわたしのためにドリンクチケットを送ってくれた友人、さらには気にかけてメッセージをくれた友人など、周りの温かい気持ちがあってこその結果。そんな"ヒトがヒトに与える影響の大きさ"に、感謝せずにはいられなかった。
(自分だけが・・なんて、ネガティブなこと言ってちゃダメだな)
こういう偶然というかなんというか、ちょっとしたラッキーに見舞われることが多いわたしは、「本当に友人に恵まれてるよな・・」と幾度となく実感してきたが、なんとなくでも救われた気持ちになれるのは、言うまでもなく友人らの人間性が優れているからだ。そして、そんな彼ら彼女らと繋がりのあるわたしこそが、真のラッキーガールといえるだろう。
わたしが抱える悩みは、諸事情から他言無用のため誰かに打ち明けることはできない。それでも、抱えたままでも明日を迎えられるのはラッキーだと思うのだ。どんな状態であっても明日があるのは、やっぱり幸せなことだから。
*
いつかわたしも・・いや、いつでも誰かにエネルギーを送れる存在になりたい——と、欲張りな戯言をほざきながら今日を終えるとしよう。
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