睡眠時間の短いわたしにとって不快極まりないこの"安眠妨害"に対して、なんらかの呼び名を付けたいと思っている。それは「暑さで目が覚めるも、布団をはがすと寒くて眠れない」という現象について・・である。
言っていることは「当たり前かつどうしようもないことだ」ということくらい、自分自身でも分かっている。だが、寝汗をかくほどの暑さで覚醒してしまったら、せめて布団をはがす・・という対処法で、再び眠りに就かせてもらいたいではないか。しかも、よりによって「あと2時間寝られる」という状況で、なぜわざわざ起こされたあげくにわたしの大嫌いな"寒さ"をあてがわれなければならないのか——。
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(・・暑い)
分厚い羽毛布団を蹴り飛ばしながら、わたしは寝ぼけまなこで時計を見た——午前6時。ベッドへ潜り込んだのが5時前なので、一時間ちょっと眠った計算になる。だが、起床予定は午前8時のため、あと二時間は夢の世界でよろしくやれたというのに、あまりの暑さに目を覚ましてしまったのだ。
とはいえ、今日のわたしはそこまで厚着をしていない。コットン素材のスパッツにTシャツ、そしてパーカーという身なりで寝ていたわけだが、羽毛布団の下に横たわっていることを思うと、ちょっと厚着だったのかもしれない。
だが、パーカーが便利なところは「アイマスクの機能を兼ね備えている」という点なので、ここを外すわけにはいかない。なんせ目深にフードをかぶれば、目の周りを締め付けることなくしっかりと遮光してくれる、最高のアイマスクとなるからだ。
——そんなこんなで、とりあえずは羽毛布団をどかして室内の空気・・といってもほぼ冷気に近い温度に身を晒すことで、この不快な暑さと汗を冷ますことにした。
(・・寒い)
しかし10秒もしないうちに、わたしは耐え難い寒さに襲われた。そもそも、エアコンからは立派な温風が吹き出しているにもかかわらず、その風は天井のみを暖めているため、床から1メートルもないベッド付近は寒冷地ばりの寒さ。
だからこそ、起きているときは厚手のニットや場合によっては薄手のダウンジャケットを羽織るなどして、東京のど真ん中に住んでいるにもかかわらず、室内でも防寒対策を徹底しているのである。
そして、寝具くらいは保温と吸湿に優れたものを選ぼうと、友人推奨のマザーグース羽毛布団を半信半疑で試すことにしたのだが、この布団がこれまた温かくて軽くて最高!・・こうしてわたしは、そもそも短い睡眠時間を可能な限り上質なものするべく、大枚をはたいて高級羽毛布団を購入したわけだ。
そんな保温と吸湿にすぐれた羽毛布団であるにもかかわらず、本日のこの寝巻きはさすがに暑すぎた様子。そのため、汗だくになったわたしは思わず寒冷地へと身を投げ出したのだ。
しかしながら汗のせいで急速に体は冷えてしまい、「涼しくて気持ちいい」と感じたのはわずか数秒の間で、その後は全身の筋肉がガクブルと不随意に震える・・いわゆるシバリング(悪寒戦慄)が起こり始めた。
暑さと寒さの二択ならば、わたしは暑さをとる——。
人間ならば・・いや、生き物ならば当たり前に寒さを嫌うはず。なんせ暑いのと寒いのとでは、死に至るまでの時間が違いすぎるからだ。そう、われわれは寒さに抗うことはできないのである。
それにしても、わずか数秒の極楽(暑さと寒さの中間地点)に身を委ねている間、わたしは思ったのだ——この後すぐにシバリングがやって来るわけだが、なぜわたしの身体はそのような睡眠妨害を行うのだろうか。自分自身が「眠りたい」と願っているにもかかわらず、あえて目を覚まさせるようなことをする必要がどこにあるというのか。だったら上手いこと調整してくれればいいのに、なにゆえ八寒地獄のような仕打ちを下すのだろうか——。
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人間にとって貴重かつ不可欠な睡眠を妨げるこの行為、とりあえず「安眠妨害寒暖差攻撃」とでも名付けておこう。
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