スイカ、ニンゲンを救う。

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(これが脱水症状ってやつか・・・)

熱中症か脱水症状かは分からないが、およそそれらの症状と思われる異変を感じたわたし。

たしかに、やや強引な減量を試みたことで、体に負担をかけたのは間違いない。だがどうしても、体重の減少をこの目で確認しなければ気が済まなかったので、ある種の「必要悪」といえる。

 

その後、軽くなった体を携えて楽しくおしゃべりをしていたところ、もう少しで具合が悪くなる予兆を感じた。予兆といっても、あからさまな変化があったわけではない。ただなんとなく「あぁ、このままだとマズいだろうな」という気がしただけだが。

その時点でコーヒーを4杯飲んでおり、朝から一切の固形物を入れぬまま柔術をしておしゃべりをして、あっという間に夕方になってしまったのだから、普通に考えても空腹に加えて脱水症状に陥りやすい状態だった。

 

目の前の友人に心配をかけぬよう気丈に振る舞ったわたしは、その後、手足の震えとめまい、そして軽い耳鳴りに耐えながらクイーンズ伊勢丹へと向かった。そう、アレさえ買えれば——。

そしていつものようにカットスイカ売り場の前に立つと、しばらく考えた。

(「大」はデカすぎるのではなかろうか・・)

とくに食欲もないわけで、なにもデカいスイカを買う必要はない。よし、今日は珍しく「中」にしておこう。

 

こうして、カットスイカ(中)を4個購入し、わたしは無事帰宅を果たした。しかし直前までコーヒーを大量に飲んでいたため、喉も乾いておらず腹も減っていない。このままでは明らかに不健康だ——。

そこでわたしは、富山の友人からもらった氷見はとむぎ茶を飲むことにした。昔から「夏は麦茶」と決まっているし、ミネラルが豊富であるとパッケージに書かれている。

・・おっと、どうやらはと麦茶と麦茶は異なる麦のようだが、はと麦は漢方薬で有名なヨクイニンの原料でもあり、肌荒れの改善や疲労回復などにも効果が期待できるのだそう。当然ながらミネラルも豊富でノンカフェインとくれば、たくさん飲んでも安心だ。

 

しかし困ったことに、はとむぎ茶は「煮出す」必要がある模様。残念ながら我が家にそういった調理器具は存在しないため、やむを得ず2リットルのペットボトルに水を注ぎ、そこへティーバッグを投入してシャカシャカと振ってみた。

(・・色が薄いな)

しばらく放置したら色が濃くなるかもしれないと思い、はとむぎ茶のボトルをそっと寝かせて仕事に取り掛かった。

 

(そろそろ飲めるかな?)

一時間ほど経った頃、まだまだ薄い琥珀色のはとむぎ茶に手を伸ばそうとした瞬間、突然のめまいに襲われた。これは貧血だ——。しばらく床(フローリング)に伏せていると、そのうち黒いカーテンが開き、現実世界へと戻って来たわたし。

このままではマズい。一人暮らしで意識が途絶えたら、ヘタすると死ぬかもしれない。

 

命の危険を感じたわたしは、四つん這いになって冷蔵庫まで行くと、クイーンズ伊勢丹で購入したカットスイカを取り出した。

(計量直後の格闘家たちが、こぞってスイカを食べていた。あれは水分補給と同時に、カリウムやマグネシウムなどのミネラルを摂取していると聞いた。はとむぎ茶が完成しない今、スイカで復活するしかない!)

わたしは夢中になってスイカにかぶりついた。みずみずしく食べやすいカットスイカは、五臓六腑に染みわたるかのようにスーッと体内へ吸収されていく。あぁ、生き返る——。

 

 

スイカを食べてしばらくすると、急に尿意を催した。そしてみるみる体調が良くなるのを感じた。すると間もなく腹が減り、あっという間にいつものわたしに戻ったのである。

 

果物の好物といえば桃や葡萄だが、この夏は連日連夜スイカを満喫してきたわけで、コスパを含むスイカのポテンシャルには頭が下がる思いがする。いや、むしろ愛着まで湧いている。

——あぁ、このままでは秋以降、スイカロスによるわたしのメンタルが心配である。

 

Illustrated by 希鳳

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