料理が苦手な人、好きではない人というのは、主に2つのタイプに分けられる。
一つは「作るのが面倒なタイプ」だ。
食材を買う以前に鍋やまな板、調理器具すら買うのが面倒で、キッチンはガランとしておりいつでもキレイ。こうなると、たとえ目玉焼き一つ作るにしても非常に手間がかかる。
まずはフライパンを買い、フライ返しを買い、鍋蓋やらお皿やら箸やらを買いそろえなければならない。さらに調味料もないので、塩コショウ醤油にオリーブオイル、そして最後に主役である卵となる。
目玉焼きのためにかなりの散財を強いられるわけで、躊躇するのは当たり前。だったらウーバーイーツでいいのではないかと考えるのも無理はない。
これで調理器具がそろったからと、翌日から料理をするかといえば微妙。その都度、食材や調味料を買いに行かなければならないわけで、やはり面倒くささに負けてしまうだろう。
そしてもう一つは「片付けるのが面倒なタイプ」だ。
料理は好きだから張り切って作るが、食べ終わった後の片づけを考えると億劫になってしまう。作りながら片付ける、といわれてもやはり最後に洗い物やシンクの清掃が待っているわけで、そこを考えると重い腰が上がらない。
生ごみの片づけやコンロ回りの油汚れなども、料理をしなければ発生しない作業なわけで、わざわざ仕事を増やすくらいならばやらない方がマシだと考えるのだ。
わたしも料理をしないが、この2つのタイプのどちらに当てはまるのか自問自答したところ、両方当てはまる部分もあるしそうではない部分もあるし、なんとも微妙な「理由」があることに気がついた。
そもそもわたしは火が怖い。つまりガスコンロが恐ろしいのだ。
つまみをひねると簡単に、ボッと火が点くではないか。もしあれに間違って髪の毛が触れれば頭が燃え上がり死ぬだろう。もし服の袖や裾が誤ってあれに触れれば瞬く間に炎に包まれ全身火傷で死ぬだろう。想像するだけで足が震える。
さらに油を使うとはねて飛んでくるではないか。もしあれが間違って目に入ったら失明して死ぬだろう。もし腹にでも飛んでこようものなら、大やけどの末に死ぬだろう。想像したくもない地獄絵図だ。
このような理由から、わたしは「料理をしない」というより「ガスコンロを使いたくない」というのが本音。そのため、料理をしない代わりにレンジの使用率が上がるのだ。
*
わたしは今日、ふと蕎麦が食べたいと思いスーパーで生蕎麦を買ってきた。だが「蕎麦を茹でる」という工程を失念していた。
(まずいな、レンジでいけるか?)
とりあえずティファールで湯を沸かし、耐熱ボウルへ寝かせた蕎麦へと注ぎ込む。箸でかき混ぜると蕎麦っぽくなってきたが、ある程度の固さで止まってしまった。
そこで必殺、レンジ攻撃の出番だ。たしか蕎麦を茹でるときは
「たっぷりのお湯で茹でる」
という言葉を聞いたことがある。ならばこちらもたっぷりと湯を注いでやろう。耐熱ボウルになみなみと湯を足すと、ゆっくりとレンジへ奉納。蕎麦の包装紙には「3分茹でる」と記載があるので、こちらも3分にセットしスタート。
ーー3分後。
奉納品を取り出すと、なんと本物の蕎麦っぽくなっているではないか!いや、これは蕎麦だ!
箸で蕎麦をつまみ上げると、レンチン前よりも全体的に色が薄くなり、蕎麦らしい灰色をしている。さらに硬さのせいでなじまなかった麺に柔軟性が増し、本物の蕎麦らしい風貌に成長している。
しかし一点だけ妙な変化に気づく。蕎麦の湯にとろみがついたため、酸辣湯(サンラータン)麺のようなあんかけ風の蕎麦になっているのだ。
通常、蕎麦を茹でたら水で流すとのこと。これにはいくつか理由があり、「糊化したデンプンのヌメリを落とすため」「麺にコシを出すため」「加熱の進行を止めるため」などが挙げられる。つまり、目の前にあるこのドロドロな蕎麦も、茹で汁を捨てて水で洗い流せば本来の蕎麦の活力を取り戻すのだろう。
だがどうだ。このとろみの美味そうな輝きよ。
これはいわゆる「蕎麦湯」というやつだろう。蕎麦屋へ行けば必ず蕎麦湯を飲み干すわたしにとって、この茹で汁を捨て去ることなどできない。では別の容器に移せばどうか?そんな面倒なことはしたくない。ならばこのまま食べる以外に方法はナイーー。
添付の「つゆ」をやぶると蕎麦へと浴びせる。なかなかのドロドロ具合をみせる茹で汁だが、強引にかき回してつゆとなじませる。最後に蕎麦を箸でつまみ上げ、こちらもなじませる。
(よし、できた)
水洗いしなかった蕎麦は茹で汁を吸って徐々に膨張していく。それと同時に蕎麦同士がくっついて、もはや「蕎麦がき」が出来上がっている。そしていよいよ、その塊を口へと運ぶ。
(・・・う、うまい!!!)
わたしは粉系の食べ物が好きなため、世間一般で評価される「美味い蕎麦」よりも、このようにドロドロで固まった状態の方が好みのようだ。
どうやら「蕎麦はレンジで調理できる」と、断言してもよさそうだ。
コメントを残す