これは完全にわたしの身勝手な依頼であり、先方には先方なりの利便性ややり方があるので、一概に批判したり残念に思ったりすることはできない。
だが「今年こそ全員一致で達成か!?」と、かなりの期待が膨らむラストスパートの最後で、その夢は途絶えてしまったのだ。
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今年こそ達成できそうだった淡い期待とは、「労働保険料の年度更新の書類を、長3または長4封筒で84円切手で送ってもらう」という、ものすごく大したことのない目標だった。
労働者を雇用するすべての会社へ、毎年5月末に都道府県労働局からA4サイズの分厚い緑色の封筒が送られてくる。その中には、年度更新の申告書の他に、ご丁寧にも「年度更新について」の冊子と、下敷きタイプの労災保険料率の一覧表などが同封されている。
今どき、ここまで分厚くて立派な書類が送られてくるのは、大学受験や自衛官採用のパンフレットくらいだろう。いずれにせよ、受け取って大喜びする類のものではない。
そして、電子申請という手段を利用していない会社や社労士は、緑の封筒に入っている三枚複写の申告書に記入し、労働基準監督署へ郵送もしくは持参するわけだが、社労士になってから未だかつて電子申請以外の方法を検討したことのないわたしにとって、同封された全ての書類がゴミとなる。
かつては顧問先の手間を考えて、「そのまま転送してください」という対応をとっていた。そのため、ほとんどの企業がレターパックに緑色の封筒を押し込めて、370円あるいは520円を払って送ってくれていたのだ。
だが、それを受け取ったわたしは「大量な可燃ごみの処理」に悩まされていた。
そもそも、必要な書類は一枚もないわけで(厳密には、確認用として申告書だけはチェックするが)、それなのに大量の書類がドシドシ届くわけで、労災保険料率の"下敷き"などは、夏場に使い捨てのうちわとして利用するか、はたまた簡易版まな板として使用するかの二択だった。
そんな無駄を、心底「無駄だ」と感じたわたしは、近年では「申告書のみを折りたたんで、84円切手で送ってください」と、限定的に依頼するようになった。
まぁ、わたしの説明不足のせいでもあるが、「申告書を折り曲げてはいけない」とか「計算表も同封したほうがいいだろう」などと気を使わせてしまった結果、角形2号(120円切手)や94円切手で届くこともあった。
もちろん、どうせならば最低料金で送ってもらいたい・・という節約意識が根底にあるのは確かである。だが、決して口には出せない本音としては、「頼むからゴミを送らないでもらいたい」という気持ちも、少なからずあるわけで——。
こうして、ややオブラートに包んだ表現で何年か様子をみた結果、今年はもう少しダイレクトに伝えてみよう・・と思い立ったわたし。そして、
「三枚複写の申告書だけを小さく折りたたみ(電子申請するので、その書類は使いません)、84円切手で送ってください。その他の書類は全て破棄してください」
と、かなりハッキリ意思表示をしてみた。その結果——、
(ヤバイ、本当に全員が長3封筒で送ってきた・・・)
顧問先の恐るべき団結力を見せつけられたのである。中には94円切手の会社もあったが、念のため10円を余分に貼ってくれたことは優しさの表れでもあるわけで、それ以上突っ込むことは止めておこう。
それにしても、ここまで完璧に申告書のみを三つ折りにして、長3封筒で送られてきた年度は未だかつてない。むしろ、15年にわたる社労士人生始まって以来の大快挙である。
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ところが今日、マンションの集合ポストへ手を突っ込んだところ、嫌な手触りの封筒が横たわっていることに気がついた——そう、レターパックだ。
この時期にレターパックとくれば、十中八九、年度更新の書類である。あれほどきつく伝えたにもかかわらず、多分メールを読んでいないのだろう。なぜなら、毎年この会社はレターパックで転送してくれるからだ。
(・・・やっぱり)
こうして、わたしの小さな願いは今年も達成されることなく終わった。とはいえ、あと一社だけなのだ。この会社が来年、84円切手で送ってくれさえすれば、わたしの夢が叶うのだ。
「法律上、84円切手で送ることが義務付けられています」
・・来年は、このくらい雑でインパクトのある伝え方をしてみようかな。
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