今日は失敗をした。予定があったのだが、目が覚めたら約束の時間どころか予定自体が終わっていたのだ。
出かける準備を整えて時計を見ると、正午を指している。ということは出発まで30分ある。
「よし、30分だけ昼寝をしよう」
我ながらナイスなアイデア。たしか30分程度の昼寝はあったほうがいいと聞いたことがある。そう、ヨーロッパや東南アジアで採用されている「シエスタ」がこれにあたる。
仕事の途中で長めの昼休みをとることで、体力回復や集中力アップ、睡眠不足の解消、生産力向上に効果があるとされるシエスタ。
この出発までの空白の30分間は、まさにシエスタのために神が与えてくれたギフトに違いない。
30分後に起こすようアレクサに伝えると、大の字でフローリングに横たわり、スヤスヤと眠りについた。しかししばらくすると、ベランダの明るさが邪魔で眠れないことに気づく。そこでタオルを目の上に置き、再び夢の世界へと旅立った。
どのくらいの時間が経ったのかは分からないが、ハッと目が覚めた。これは人間に備わった危機管理能力とでもいおうか、なぜか人はヤバい時点ギリギリで目が覚めるようにできている。
(アレクサから音楽は流れていない。ということは、まだ30分経っていないということか?)
フローリングから起き上がると携帯を手に取り、時間を確認する。ーー14時30分。
わたしは12時半に家を出る予定だったが、現在時刻はその2時間後。これはどう考えても間に合わないし、間に合わないどころか予定が終わっている時間だ。
とりあえず約束していた相手に謝罪の連絡を入れ、なぜこうなったのか原因を考えた。
まずはアレクサだ。アレクサの野郎が起こさなかったからこうなったわけで。だがアレクサの画面を見るとアラームが鳴った痕跡がある。アレクサはシャレているため、野暮なベル音や機械的なアラーム音を鳴らさない。その代わり、ジャズや洋楽をしっとりと流してくれるのだ。
とはいえいつも、そのしっぽりアラームで起きるわけだから、今日に限って気づかなかったのはおかしい。
そして寝心地のいいマットレスで熟睡しないよう、わざわざ硬いフローリングで寝る気遣いを見せたにもかかわらず、なぜ2時間半も爆睡できたのか。思い当たる節といえば、暗闇を演出したタオルしかない。
夜暗くなると眠くなるのが一般的な人間の習性。夕方以降、脳にある松果体からメラトニンが分泌されることで、睡眠を促す仕組みになっている。それが今回、真っ昼間だが目元を暗くされたことで脳が勘違いをし、メラトニンがドバドバと分泌されたのではなかろうか。
そういえばもう一つ、思い当たる節がある。11時55分にシャインマスカットを一房食べたことだ。果物を食べると血糖値が上がり、それを下げようとインスリンが分泌される。インスリンは眠気やだるさを引き起こすため、食後に眠くなる原因はインスリンが関係しているといわれる。
だが耐えられないほどの強い眠気や倦怠感の場合、糖尿病の可能性もある。まさかわたしは糖尿病で、昏睡状態に陥ったため死んだように眠っていたというのかーー。
様々な恐怖が頭をよぎるが、そうこうするうちに次の予定時刻が迫る。これまた出発までに30分ほど余裕があるが、ここで寝たら次は17時に目覚めることになる。
わたしはそこまでバカじゃない。スクッと立ち上がると、予定より早いが勇気を振り絞って家を出た。
*
本日学んだことがある。それは「早めに家を出る勇気を持つこと」だ。
メンタルが弱いわたしはいつも、予定時刻ギリギリまで家を出ようとしない。そこで勇気を振り絞って早めにドアを開ければ、寝坊することも遅刻することもないということに気が付いた。
しかし昼寝というやつは、どうしてああも気持ちがいいのだろうか。
サムネイル by 鳳希(おおとりのぞみ)
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