カピバラ長風呂対決における、記録にも記憶にも残る圧巻のパフォーマンスを披露した、「シータ」という女性。

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ニンゲン同士が競い合う大会(赤ちゃんのハイハイレース等を除く)において、自ら進んでビリになることはないし、最下位が称賛されることもない。

だが、動物同士のレースとなると、予期せぬ事態は十分に起こりうるし、そもそも動物たちに「優勝したい」という意思がない(のではないかと思う)ため、あくまでニンゲンだけが興奮して楽しんでいるともいえる。

 

しかしながら、わたしは「シータ」が叩き出した圧巻の記録に、得も言われぬ感動と興奮を覚えたのである。

 

 

冬の風物詩といえば、今年で14回目を迎える「カピバラの長風呂対決」だろう。

これは、”カピバラ露天風呂協定”を締結する全国5か所の動物園が中心となって開催される大会で、各園で飼育されるカピバラの中から一頭を代表として選出し、誰が一番の長風呂かを競うもの。

 

今年は、直近3年と比べると短期決戦に終わった感があるが、優勝したのは長崎バイオパークの「ぷるーん」で、記録は1時間45分18秒。続く準優勝は、那須どうぶつ王国の「こはる」で、1時間32分17秒。

ちなみに、3位は伊豆シャボテン動物公園の「トリュフ」で1時間26分57秒、4位は埼玉県こども動物自然公園の「ヘチマ」で1時間23分6秒と、優勝から4位までの差は22分以内ということで、いずれも接戦と呼べる内容だった。

 

とくに準優勝の「こはる」は、途中で「雪を食べに露天風呂から上がってしまった」(カピバラ飼育担当談)ため、本人としては納得のいかない記録だったかもしれない。なんせ「こはる」は前回大会の優勝者であり、その際の記録は3時間50分59秒という歴代3位の長風呂タイム。

そのような猛者が満を持して連覇に挑んだわけだが、雪による水分補給(?)の誘惑には勝てなかった模様。それでもしっかりと準優勝を確保するあたり、さすがは王者(メスだから、王女か)の威厳を保ったといえる。

 

そして、今大会で惜しくも最下位となってしまったカピバラがいる。当たり前だが、対決レースなのだから勝者がいれば敗者もいるわけで、出場選手が全力で戦った結果にケチをつけるつもりはない。

むしろ、わたしはこの最下位を「価値ある最下位」であると捉えているのだ。

 

そんな栄えある選手は、いしかわ動物園の「シータ」(メス・9歳)である。

 

シータといえば、父・モミジが樹立した準優勝(2023年)という好成績を上回るべく、喜び勇んで参加した第12回大会(2024年)において、まさかの「26秒」という大会史上最短となる記録を叩き出してしまった。

しかも注目すべき点は、これまでの最短記録となる「41秒」も、シータ自身が刻んだタイム(2020年)なのである。ちなみに、大会最長記録は2017年に那須どうぶつ王国の「ウミ」(メス・1歳)が魅せた、4時間56分32秒という見守る側も過酷であろう脅威のタイム。これはさすがに破られないのではなかろうか・・と思うほどの長風呂だが、やはり「冬場の那須高原」という土地柄が後押ししており、標高の高い那須に比べると、氷点下の少ない石川県は長風呂対決に関してはやや不利なのかもしれない。

 

というわけで、今回もいろんな意味で注目を集めたシータだったが、やはりというかさすがというか、我々の期待を裏切ることなく過去最短記録を見事に打ち破ってくれたのだ。その記録は・・・なんと「17秒」!!!

自身が打ち立てた「26秒」という驚異的な数字を、ここへきてさらに縮めてくるとはさすがは役者である。なんせ、これは狙ってできるものではないし、おそらく普段はもっと長く湯船につかっているはず。それなのに、対決の日に限ってカラスの行水ならぬシータの行水を披露してしまうのだから、役者と言わずに何と呼ぼうか。

 

なにはともあれ、これらはすべて出場選手が動物だからこそ成せる業であり、カピバラだからこそ最短記録にも笑みがこぼれてしまうのだ。

しかも、中途半端な最短記録ではなく、十秒台という圧巻の短さ——。

 

 

というわけで、これからもカピバラ長風呂対決におけるシータの最短記録更新に期待しつつ、いしかわ動物園の動物たちを見守っていく所存なのである。

 

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