誠心誠意、ノーパンノーブラ。

Pocket

 

突然だが私は今、ノーパンノーブラだ。

 

オマエの下着事情など知りたくもない、とクレームをもらいそうだが、これにはワケがある。

 

今朝、私は寝坊をした。

しかも9時に待ち合わせをしていたにも関わらず、目を覚ますと9時1分だった。

 

最初、ちょっと状況が理解できないわけで、その日のスケジュールを確認する。

 

(9時にジムで待ち合わせ、と予定されている)

 

そう、間違いない。

私の記憶も理解も正しいのだ。

私は、9時にジムで待ち合わせをしているのだ。

 

そして今、ベッドの中でスマホのカレンダーを確認しながら、時刻は9時2分を迎えようとしている。

 

(・・・・)

 

とりあえず待ち合わせの相手へ

「今起きた」

とだけLINEをすると、ベッドから飛び起きた。

 

じつは私、前日から「万が一の遅刻」を想定し、入念に準備をしていたことに気がつく。

仮に寝坊しても準備に時間を取られないよう、身支度を整えた状態でベッドに入ったのだ。

 

このアイデアには我ながら「さすが」と感心する。

 

ところがーー

ジムで待ち合わせをする理由は、柔術の受け手をするため。

つまり、柔術をする格好に着替えて就寝したわけだ。

 

何が言いたいかというと、

 

私は、道着を着て寝たのだ。

しかも帯まで締めて。

 

ベッドから飛び起きたはいいが、果たしてこの格好でジムまで行くべきか、それとも着替えるべきか、数秒間迷った。

 

ーー現在時刻は9時4分、すでに4分遅刻している。ここから顔を洗い歯を磨きコンタクトを装着しジャケットをまとって出かけるとしよう。いや、待てよ。道着の上からジャケットは羽織れない気がする。なぜなら道着自体がジャケットのようなもので、腕など通せるはずがないからだ。ではジャケットを手に持って行くのか?いや、さすがにそれもない。外気8度でこの薄着はさすがにない。となるとこの道着を脱いで私服に着替えるしかないのではないかーー

 

人間、焦っているときは本当に不思議な思考回路になる。

冷静に考えると、都心のど真ん中で道着に帯締めて地下鉄に乗って(もしくはタクシーで)赤坂の一等地にあるオシャレジムへ行くなど、考えられない。

だが、テンパった私は見た目より寒さを重視した。

 

そして結果的に、寒さに耐えられないという理由から道着を脱ぐことを決めた。

 

昨夜からずっと身につけていたため、ホカホカの道着。

帯もしっかりと締めており、着崩れしていない。

数十分後にはまた袖を通すにも関わらず、季節が冬であることから着替えを強いられたのだ。

 

私はくやしかった。

 

一分一秒を争うこの瞬間に、せっかくの準備が無駄になったことに腹が立った。

それよりも、なぜ寝る前に道着のままジムへ向かう姿を想像できなかったのか、イマジネーションの欠如に失望した。

 

そうこうするうちに、時刻は9時7分。

今からダッシュでタクシーを拾ったとして、9時20分過ぎにジムへ到着できるだろうか。

 

遅刻は遅刻だが、30分の遅刻より29分の遅刻のほうが明らかにいいはずだ。

一分でも早く到着することこそが、誠意ある行動といえる。

 

私は全速力で玄関を飛び出した。

 

 

もうすでにお気づきであろう。

急いで家を飛び出たせいで、着替えの下着を入れ忘れたのだ。

 

だが別に構わない。

下着を入れ忘れた分、遅刻が少なくなったのだから、むしろ良かったのだ。

これこそが、私の誠心誠意というやつだ。

 

冬の寒さでスースーしながらも、満足な気持ちで帰宅の途につく。

 

 

Pocket