(新型コロナって、偉大なウィルスだったんだな・・)
今からおよそ5年前、中国・武漢にて一人目の感染者が報告されてから、瞬く間に世界中へと拡散された新型コロナウイルス感染症。症状はインフルエンザと似ているが、感染力の強さと嗅覚・味覚障害や倦怠感といった後遺症が長引くことが特徴で、持病の悪化に伴い新型コロナによる死者も大勢出るなど、ある意味「未曽有の大混乱」を招いた。
また、新型コロナに対するワクチンに関しても物議を醸し、ワクチン接種による体調悪化や死亡など健康被害を招く恐れについて、未だに明確な答えは出ないままなんとなく葬られようとしている。
とはいえ、新型コロナをきっかけに世の中が大きく動いたことも事実。たとえば、テレワークという働き方が浸透した功績は大きい。今までは「会社へ出社することこそが、優秀な社員!」という昭和のマインドで統制してきた企業も、新型コロナによる三密防止の観点から、在宅勤務が可能な仕事についてはそれを推奨する・・という流れに変わったのだから。
しかしながら、実際にフィジカル環境で従事しなければならない仕事というのもたくさんある。たとえばレストランや映画館など、その場へ行かなければ体験できないジャンルの職種や、医療・介護といった患者および利用者と対面で接する業務に従事する者など、在宅勤務では対応できない業種・職種があるのも事実。
そして、このような分野で働く人々が新型コロナに感染した場合、「感染リスクが高い場所で仕事をするのだから、これを労災給付の対象とする」とした判断は、良くも悪くも大きな一歩だったといえる。
これまでの労災給付は、業務に起因する病気や怪我に対してのみが対象とされてきたが、新型コロナに関しては「感染経路が不明の場合でも、感染リスクが高い業務に従事し、それにより感染した蓋然性が強い場合」という条件の緩和が追加された。また、「医師・看護師や介護の業務に従事する者については、業務外で感染したことが明らかな場合を除き、原則として対象」という、業種によって特別な限定を明記したのも大きな変化だろう。
無論、これらの判断は間違ってはいないし、感染リスクを背負いながらも仕事に就く労働者の安全を保護するためにも、労災給付で補償をするという担保は必要だろう。そしてこの流れは未だに続いており、感染力の強い新型コロナだからこそ仕方のないこと・・というか、ワクチン接種による副反応やリスクが大きすぎる現状からも、未然に防ぐのは難しいと考えるのは妥当といえる。
ところが・・だ。
先日、勤務先である施設内でインフルエンザに感染した労働者から、労災給付の申請があった。対象となる労働者は一名で、本人が労働基準監督署へ相談に行っており、そこで「利用者がインフルエンザに感染しており、そこから罹患した可能性が高い場合は、新型コロナ同様に労災給付となる」という説明を受けたのだそう。
まぁ確かにその通りなのだが、5年前まではインフルエンザで労災認定されるというのは、非常に考えにくかった。事実として職場で感染したにせよ、それを国が「業務上の罹患」として認めるとは思えず、泣き寝入りする労働者が多かったはず。というか、そもそも職場内でインフルエンザにかかって労災給付が出るなど、予想だにしなかっただろう。
それが、新型コロナをきっかけにインフルエンザまでもが労災給付の対象となったのだから、なんとも感慨深いものがある。念のため補足するが、インフルエンザになったらすぐに労災・・というわけではない。かなり限定的な業種(医療や介護従事者)であり、かつ、インフルエンザに罹患している人物と接触したことによる感染が濃厚な場合に、労災認定される可能性がある・・という条件なので、誰もかれもが"インフルエンザで労災給付を受けられる"わけではないので、誤解のないように。
というわけで、この流れでいくといわゆる"感染症"に関しては「新型コロナの労災補償における取扱いについて(通達)」に準じて判断されることとなりそうで、労働者にとっては手厚い保護が受けられるわけだ。言うまでもなく、業務起因性の考えに基づくと職場内での感染は業務上であり、その補償をするのは事業主(労災給付を通じて国が補償)なので、自然であり妥当といえる。
だが、なかなか線引きの難しい判断であるのも事実なわけで、「労災給付の大盤振る舞い」などと揶揄されないことを祈りたい。
コメントを残す