今日はまったく、上手くいかないことだらけだった。前半の「上手くいかなかったこと」は省略するとして、後半に連発した「残念の数々」は、不可抗力とはいえ心身ともにズッシリと疲れがたまるものだった。
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所用で訪問しなければならない店があり、ウェブサイトで所在地を確認すると地図に沿って歩き出したわたし。最寄り駅からは10分以上かかるため、普段ならばタクシーを拾うところだが、賑やかな商店街を突き抜けることからも、散歩がてら徒歩を選んだ。
それにしても、正面から迫りくる人間濁流にのまれて、とてもじゃないが進めそうにない・・と思っていたところ、肩一つ触れることなく申し合わせたかのようにスッと交わしていくではないか。
(これはむしろ、こちらからぶつかりにいっても交わされるであろうテクニックなんじゃ・・・)
そして目的地に到着したところ、テナント一覧にわたしの求める店名はなかった——なぜだ、まさか移転したとか。
そこで改めてサイトを確認すると、案の定、ホームページとSNSとで所在地が異なっていた。わたしはきっと、移転前の住所を辿ってきた来たのだろう。だが幸いにも、ここから15分ほど歩けば新店舗へ到着できるため、やむなく踵を返すとノロノロ歩き出した。
(頼むからちゃんと存在していてくれ・・)
Googleマップの指示通りに連れてこられたビルには、今度こそ求める店名が掲げられていた。——ホッ、一安心。
さっそく所用を済ませると、次の予定までの時間つぶしにカフェへ入ることにした。ここは繁華街だが、駅の周辺には探すまでもなくカフェが乱立しているため、さほど気にすることなくカフェ・ベローチェの入り口をくぐった——満席。
(まぁ焦ることはない。ここから駅までの途中にカフェは山ほどあるわけで)
しばらくするとカフェ・ド・クリエの看板を見つけたので、とりあえず店内に足を踏み入れたところ——食べ物の匂いが強すぎる。わたしは食いしん坊ではあるが、衣服や持ち物に油や食材の匂いが染みつくことが許せないのだ。無論、タバコの臭いなどもってのほかで、分煙の店内でも躊躇するほど。
踏み入れた足をそのまま外へ出すと、ふたたび駅へと向かって歩き出した。そして今度こそ、我がサテライトオフィスであるスターバックスを発見! ・・やはり最後に落ち着けるのは、ここしかないのだ——はい、超満席。
このスタバは3階建てで、席数も十分用意されているにもかかわらず、老若男女でビッシリ埋まっているではないか。おまけに、長居する気満々のオーラを放つ客ばかりで、しばらく待ったところで席が空く様子は皆無。
(やむを得ない、別の店を探すか・・)
続いて、向かいにある椿屋珈琲のドアを押し開けるも、順番待ちの客の姿にすぐさま背を向け店を出るわたし。——ここら辺でなんとなく嫌な予感はしていたが、さすがに一ヵ所くらいは受け入れてくれる店もあるだろう・・と高を括っていたのだ。
気を取り直して二軒隣りの珈琲専門店・伯爵を覗いてみたが、タバコの臭いがするので諦めた。同様に喫茶室ルノアールも分煙のため、ドアを開けるまでもなく除外。
そうこうするうちに駅に到着してしまった。駅に隣接するドトールコーヒーは、外からでも満席であることが確認できた——これはいよいよ、カフェ難民じゃないか。
半分自棄(やけ)になりながら、駅構内のベックスコーヒーのドアをくぐったところ、こちらも食べ物の匂いが充満しており腰を下ろすことはできない。ならば、この先にあるプロントへ駆け込もう——。
「ただいまの時間、居酒屋での利用となりますがよろしいでしょうか?」
コーヒーは提供しておらず、おつまみとアルコールで席を確保できるとのこと・・だが、さすがにこの後の予定に差し支えるので、"キッサカバ"に変身したプロントはあきらめることにした。
こうなったらもうコメダ珈琲しかない。さすがにあそこならば——。
「本日、スタッフ不足のため3階のみでご案内しております」
・・・なんということだ。順番待ちは6組もいる上に、ワンオペで回している店内は大量の客と一人の店員という異様な光景。こんなことってあるんだろうか——。
途方に暮れたわたしは、歩きつかれたことと空腹も相まって甘いものが食べたくなった——あぁ、ミスタードーナツの看板が見える。
(ここを追い出されたら、今夜の予定はキャンセルして帰宅しよう。ここまでカフェに嫌われているのは、きっとなんらかの啓示に違いない)
半ばあきらめ気味に自動ドアを開けた瞬間——あった、空いている席が・・・。
そういえば、高校時代から通い詰めていたのはミスドだった。コーヒーがお替りできることや、飽きのこないシンプルなドーナツが大好物で、あの頃のわたしにとって"秘密基地的な安堵できる場所"がミスドだった。
そして時を経ていま、カフェ難民となったわたしを受け入れてくれるのは、やっぱりミスドだったのだ。
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こうして、何時間ぶりかに腰を下ろしたわたしは、コーヒーとドーナツを頬張りながら小さな幸せを満喫するのであった。
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