癖(へき)

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子どもじゃあるまいし、夜中にドカ食いする病気が治らないものか——と、パンパンに膨らんだ腹をさすりながら呟くわたし。

そう、強欲で自制心が崩壊したわたしは、夜中にコンビニを訪れると必ず、手あたり次第に菓子を買い漁る「癖(へき)」があるのだ。

 

この病気には"とある特徴"がある。普通ならば「腹が減ってコンビニをうろついていたら、美味そうな菓子が目に入って買い漁った」となりそうなところだが、わたしの場合は違う。どちらかというと、美味い料理を堪能した後など、満腹かつ精神的にも満たされた状態で、その満足感をさらに追求するべくジャンクフードを爆買いするのであった。

おまけに、自宅近くのコンビニはナチュラルローソンのため、一風変わった海外のスナック菓子やチョコレートが陳列されている。そんな珍しいラインナップが後押しして、普段ならば決して手に取ることのない商品までもが、食欲・・いや、物欲をかき立てるのであった。

 

 

(ポップコナーズ・・ドリトスっぽいけど、ポップコーンでもなさそうだな)

ドリトス好きのわたしの目にとまった、とある黄色い菓子袋。その名も「ポップコナーズ」。それもそのはず、ドリトスを販売しているフリトレー社の商品であり、似たような雰囲気を醸し出しているわけだ。

ポップコナーズの塩味を以前食べたことがある気もするが、そのときの記憶がないため再度トライすることを決めたわたし。しかも今回は"チェダーチーズ味"である。

 

ポップコナーズはドリトスによく似た三角形で、トウモロコシをチップにするマシンにより作られた、ノンフライ&ノンベイクのスナック。そのため、ドリトスのようなズッシリ感はなく、グリコの「コメッコ」に似た軽い食感が特徴といえる。

そして、さすがはトウモロコシ。映画館の主役がポップコーンであるように、そして人類の起源がトウモロコシであるように、まさに「ヒトが病みつきになる」味なのだ。

おまけに、チェダーチーズ味は日本人にとって馴染みの味であり、失敗のない選択となること必至のため、わたしはチェダーチーズ味を3袋買うことにした。

(念のため、ソルト味とスウィート&ソルティ味も確保しておこう・・)

 

ポップコナーズの次に目にとまったのは、「ロータスビスコフサンド・ビスコフクリーム」だった。赤い個包装のカラメル味のビスケット・・といえば、コーヒーに添えられていたり、飛行機のギャレーに置いてあったりと、どこかで目にしたことがあるビスケットだろう。カラメルの甘さに加えて、ほのかに漂うほろ苦さがクセになる、ベルギーの有名な菓子である。

そんな、ロータスビスコフの"ビスケット味のクリーム"を、ビスコフクッキーでサンドしたものが"ビスコフサンド・ビスコフクリーム味"なのだ。

 

(ビスコフはちょっと硬めのビスケットだが、ビスコフサンドはクッキーなんだな・・)

そうなのだ。ビスコフサンドの特筆すべき点は、クリームがビスコフ(ビスケット)に挟まれているのではなく、クッキー生地で挟まれていることにある。そして、クリームの味が「ロータスビスケット味」ということで、ビスコフ尽くしの逸品なのである。

 

海外製のクッキーといえば、真っ先に思い浮かぶのがウォーカーの「ショートブレッドフィンガー」だが、あそこまでのバター感はないにせよ、西欧ならではの上質で洗練されたクッキーの味と食感は、どれほどの高カロリーであったとしても手を止めることのできない魔力を持っている。

(とりあえず、ウォーカーも買っとくか・・)

 

 

こうして、海外製のスナックを中心に買い物かごを満たしたわたしは、コンビニを出るなり生バウムクーヘンに齧りついた。そして帰宅するやいなや、ポップコナーズを貪り食い、お口直しにロータスビスコフを挟み、あっという間に4,000キロカロリーを摂取してしまったのだ。

ちなみに昨夜は、こだわりの素材と工夫を凝らしたソースが印象的なジビエ料理を堪能していた。あまりにソースが美味かったので、人目を憚らずに皿ごと舐め尽くしたほどだが、天然素材の美味いものを食った後はさらに腹が減る・・という"奇病"を抱えるわたしにとって、これはありがたくも辛い現実といえる。

 

(青森のイカの、美味かったな・・・)

脳裏をよぎる健全な創作料理をつまみに、明らかに不健康なジャンクフードへ手を伸ばす——。そんな恐怖の深夜を過ごすわたしなのであった。

 

Illustrated by 希鳳

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