悪癖

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わたしには悪い癖がある。それは、ケーキをホールで買ってしまうことだ。

ピースで買うだけで十分なはずなのに、その隣にホールがあるとついそちらへ手を伸ばしてしまうのだ。

 

(・・クソッ、アップルパイなどひとかけらで十分なんだが)

たまたま通りかかったケーキ店で、美味そうなアップルパイを見つけたわたし。ちなみにアップルパイを購入するポイントは、パイ生地がサクサク系かしっとり系かによって決まる。

なお、この「食感」については、クロワッサンに対しても同じようなことがいえる。わたしは、サクサクでパリパリの生地よりも、しっとりとしていてバターがじんわり滲んでくるような、シナシナな生地が好みだからだ。

 

目の前にあるアップルパイは、表面がテカテカに光っているため、果たしてサクサク系かしっとり系なのか判断しにくい。

だがカットされたピースのほうをみると、ゴロンと大きなリンゴを挟む上下の生地が、分厚くてしっとりしていることが視認できる。

 

おまけに、このアップルパイは「ズル」をしていない。あくまで個人的な意見だが、最下層の生地がスポンジだったりタルトだったりすると、わたしの興が冷めてしまうのだ。

同様にパフェの中間部分や底についても、最後までフルーツやクリーム、アイス、白玉などで構成されているとテンションが上がる。しかし、かさ増しをするかのようにコーンフレークが詰め込まれていたりすると、もうそれ以上掘り進める気になれないのである。

 

繰り返しになるが、これらはあくまで「わたしの好みの話」なので、アップルパイにスポンジやタルトが入っていようが、パフェにコーンフレークが詰め込まれていようが、食べる者が残念に思わなければそれでいい。

しかし、わたしにとってはここが重要なポイントとなるため、しっとり系の生地で中身がパイ生地とリンゴだけでできている商品を見つけたならば、それは購入しなければならないのだ。

 

(購入は決定として、カットしてあるのとホールとどちらを買うべきか・・・)

 

問題はこちらである。先日、目ん玉が飛び出るほどの高額な引き落とし詐欺(ではないが、ダメージとしてはそのくらいの威力)に遭ったわたしは、スタバにおけるコーヒーの量を控え目にしてきた。

なんせ、月末まで首の皮一枚つながった状態で過ごさなければならないわけで・・いや、来月も再来月も状況は変わらない中、セーブするべきは「強欲」しかないからだ。

 

とはいえ、もしもわたしが明日死ぬとして、カットされた小さなアップルパイを購入したことを「後悔しない」と言い切れるだろうか——否。

我が生涯に一片の悔い無し・・そう胸を張れる最期を迎えたい。

 

・・・というわけで、またもやわたしは欲に屈したのである。

 

 

ホールケーキの優れた点は、手づかみで食せることだろう。

ナイフで切ってフォークで食べる・・などという、マナーという名の体裁を気にするような食べ方は、「味わう」という行為の足を引っ張ることになる。

ぐわしっと両手でケーキをつかみ、あるいは適当な大きさに引きちぎり、それを口へと運び咀嚼することに食事本来の喜びがあるのだから。

 

野性味の強いわたしが、ご馳走を目の前にして本能に抗うことはできない。よし、ホールごとがっついてやろう——。

 

こうして、動物が餌をぺろりと平らげるかのように、ホールのアップルパイを一瞬にして平らげたわたし。あっという間に2,200キロカロリーを摂取したわけで、不健康かつ糖分の過剰摂取であることは、疑う余地もない事実である。

おまけに、このようなデザートに課金したことで、月末への恐怖が増したのも確実——。

 

(あぁ、またやってしまった・・・)

 

癖というのは、すなわち性格および性質の一部である。よって、いくつになっても治らないものなのだ。

 

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