後輩が学校へ提出する"作文の代筆"を引き受けたわたしは、さっそくChatGPTを開いた。
そもそもわたしは授業に出ていないので、その課題の目的を知らない。しかも、勉強しなければ答えられないような内容だったため、ネットで調べてから文章を作る手間を考えたら、文章生成の専門家に依頼したほうが圧倒的にコスパがいい。
(とりあえず課題のタイトルをそのまま打ち込んで・・・おっと、二千文字と付け加えておこう)
すると、エンターキーを押した瞬間にChatGPTは作文を書き始めた。そしてみるみる文字が増えていき、10秒と経たずに課題が完成してしまったのだ。
(・・・パッと見は完璧だ)
*
今年二月、都内の私立中学に通う一年生の半数超が、理科の課題に対する回答で「同じ誤答をする」という珍事件が起きた。読売新聞オンラインによると、
「(男性教諭が)最初にチェックしたクラスで、多くの生徒がほぼ同じ文言で解答。気になって調べたところ、6クラスで計約250人いる1年生のうち、半数超が同じように間違っていたことが分かった。」
とのこと。そこで男性教諭は、試しにインターネットで課題の解答について検索したところ、意外ではあるが納得の"原因"が判明したのだそう。なんと、
「検索サイトに搭載された生成AIが生徒の解答と同じ文言を生成し、表示していたからだ。」
というイマドキの手口だった。
とはいえ、ChatGPTを使うことが間違っているとは思わない。なんせ彼(?)は文章生成のスペシャリストなのだから、われわれが時間を知るために時計を見るように、あるいは、単語を調べるために辞書を引くように、作文の課題をクリアするためにChatGPTを使用するのは自然なことだからだ。
日本ではその昔、大きな数字の計算をするのにそろばんを使っていた。その後、電卓が誕生してからは当たり前に電卓を使うようになり、今では資格試験や学校の授業でも電卓の使用が解禁されつつある。
さらに受験でも、英語辞書の持ち込みが認められる学校が増えるなど、「暗記教育神話」の崩壊も近い。
そして小論文や作文などをChatGPTで作成することは、決してズルいことでも悪いことでもない。彼(?)が生成した文章の中身が正しいかどうかを人間が判断するならば、生成系AIを利用しない手はないわけで。
前出の中学一年生たちがダメだったのは、AIの回答が本当に正しいのかどうかを確認せずに、そのまま提出したことにある。なんせ、質問すれば一瞬で終わるのだから、正誤チェックの手間くらいはめんどくさがらずにやらなければならない。これは常識であり当たり前のことである。
・・というわけで、後輩の課題をChatGPTに作らせたわたしは、出来上がった文章に目を通した。
(うん、わりと悪くない)
ありきたりな感想でまとめられているが、少なくともわたしが思いつくような内容ではなかったので、「ほほぅ」「なるほど」と何度も頷いてしまったのだ。
(あとはちょいちょい手直しして、30分もあれば終わるな)
わたしは鼻歌まじりで語尾や接続詞の調整をしていると、とある"現象"に気がついた。
(なんかやたらと「必要です」「求められます」が出てくるな・・・)
そう、センテンスの最後が「~が必要となります」「~も必要です」で締めくくられているのだ。かと思えば「~が求められます」が10回以上も登場するなど、明らかに不自然で違和感を覚える文章なのだ。
(こ、これはマズいぞ。このクオリティがわたしだと思われたら、ちょっと恥ずかしいレベルだ)
しかし文字数が多いため、なんとかこの意味不明で空っぽな文章をデコることで、課題をクリアしたいと考えたわたしは、小手先のテクニックを使ってチマチマと修正を繰り返した。
そして一時間が経過した頃、ちょっと頭から読み返してみよう・・ということで、ChatGPT×URABEとのコラボ作品に目を通すことにした。
(・・・なんていうか、それっぽい単語を並べてはいるが、同じ言葉を繰り返しているだけじゃないか)
そうなのだ。ChatGPTは手抜きをしているというか、新興宗教や情報商材の勧誘バリに、なんとなく「いいことを言っているような錯覚」を招く、もっともらしい言葉を文法的に正しく並べ替えているだけなのだ。
そもそも、課題の質問に答えてはいるものの現実的ではない。二次元の世界ではそう理解するのかもしれないが、われわれが暮らす三次元では残念ながらそのような考えには至らないのである。
(ダメだ、これはやり直さなければ・・・)
他人が作った作品を手直しするほど、手間がかかったあげくに満足いくレベルに仕上がらないものはない。こんなことなら、最初からわたしが作ればよかった・・と、心の声が漏れそうなほどの苦痛と後悔に苛まれるのであった。
とはいえ、文字数重視の課題であればChatGPTで十分対応できる。内容はお粗末で事実に反する部分も多いが、それでも「なんとなく書いてある」という程度の雰囲気ならば、プンプン匂わせることができるわけで。
*
もっと多くの人間が彼(?)を使うことで、より見事な文章を生成するようになるであろう、ChatGPTの未来に期待したいのである。
コメントを残す