東京・赤坂のプリン処「パレルモ」

Pocket

 

わたしは今日、久々にプリンを食べた。しかも、都内随一と評される店のプリンを食べたのだ。なんせ、ここのプリンを口にしてからは、他の店でプリンを注文しなくなったほど、ドンピシャでわたし好みなのだ。

 

こんなことを聞けば、「いったいどれほどの美味さなんだ?!」と気になるはず。まぁこればかりは、実際に口にしてもらうほうが早いだろう。だがあえて言語化するならば、「昭和のプリンを高級にして欧風エッセンスを加えた感じ」といったところか。・・いや、これじゃさらによく分からない。

というか、わたしにとってプリンは味ではない。なぜなら、プリンの味というのは大きく分けて二種類しかないからだ。

およそ想像がつくだろうが、みんな大好きプッチンプリンのような、ツルンと滑らかで飲み物のような味わいのプリンと、洒落た小瓶に入っているような、こってり濃厚なカスタードプリンの二種類である。

 

ちなみにこれは「どっちが美味い」という話ではない。それぞれ異なる特徴とアピールポイントを持っているため、TPOに応じて選ぶべきものだからだ。その上で、わたしはプッチンプリンとカスタードプリンの中間の味が好きなのだ。

——いや、違う。正確には、プッチンプリンの味わいと、カスタードプリンの歯ごたえが好きなのだ。

 

ゴクゴク飲めそうなプッチンプリンは、実際に飲んでしまったら物足りない。もっと「洋菓子としてのプライド」を誇示するべく、咀嚼の際に噛みごたえがほしい。

対するカスタードプリンは、そのほとんどが硬めにできており、スプーンを差し込んだ時の感触が絶妙。そして、口の中でとろけることなく、しっかりと咀嚼を要する王者感が素晴らしい。

だが味はプッチンプリンというか、昭和を彷彿とさせる懐かしい味が好みなので、「カスタードプリンの歯ごたえを持ったプッチンプリン」があれば最高だと思っていたのだ。

 

そんなわたしの「理想」を現実化させたのが、パレルモ赤坂店の隠れ人気メニューであるプリンなのだ。

 

プリンといえば「歯ごたえ」が譲れないわけで、スプーンを突き刺した瞬間にその評価は決まる。さらに舌の上で転がしながら、しっかりと噛みしめることで順位が決まる——。

そんな厳格な審査をクリアし、見事一位の座についたのがパレルモのプリンというわけだ。

 

ここまで読んで「よし、今すぐ赤坂見附へ向かおう!」と思ったヒトは、ちょっと待ちたまえ。パレルモのプリンは、営業時間内ならばいつでも頼める・・という便利で安直なものではない。

今日は午後3時の時点で注文できたが、普段ならば5時過ぎないと無理である。さらにわたしは、プリンの存否を確認した上で入店しており、レストランに対して失礼ではあるが、プリンがなければそのまま帰宅していた。

そもそも、パレルモはイタリアンレストランでありカフェではない。しかも手作りプリンは、作り始めてから客の前へ出すまでにある程度の時間が必要となるため、お目当てのプリンにありつけるのは夕方からなのだ。

 

そんなこんなで、なかなかのレアキャラであるパレルモのプリンと、久々の再開を果たしたわたし。

「えっと、プリンを二つ。先にお願いします」

さっそく、メインディッシュであるプリンを注文し、パスタよりも先に出してもらうよう依頼した。驚いた表情の店員は「プリンを二つ、先にお出しすればいいですか?」と尋ねるが、わたしは笑顔で「はい!わたしはいつも、プリンを先に食べるんで」と答えた。

 

しばらくすると、まるで王冠のように立派なプリンが二つ運ばれてきた。分厚いプリンにたっぷりと注がれたカラメルソース、てっぺんにはこんもりと載せられたホイップクリームを携えている。——あぁ、なんという美しさだ。

銀色の長いスプーンを取り上げると、さっそくプリンの頭に突き刺した。——うん、素晴らしい硬度だ。

すくいあげたプリンを、皿にたまったカラメルソースにちょんちょんと浸し、いよいよ口の中へと運び込んだ。——う、美味い!!!

たった一口のプリンだが、わたしはいつもよりしっかりと、そして何度も何度も咀嚼を繰り返した。——これこそが、プリンだ。

 

 

「本物」のプリンを知りたければ、その答えは赤坂にあるだろう。

 

Pocket