999.9(フォーナインズ)が見つかる0.1%の可能性

Pocket

 

(・・そうだ!スニーカーの中だ!)

長い昼寝から目覚めたわたしは、シューズボックスへと走った。おっと、見栄をはってしまったが、二、三歩あるいただけで届く距離にあるので、走ったりしたら玄関のドアに激突するだろう。

そしてわたしは、夢で見た通りスニーカーを取り出すと、靴の中へと手を突っ込んだ。ある、きっとここにサングラスが隠してある——!!

 

だが案の定、わたしの指先は異物に触れることなく、つま先まで届いてしまった。やっぱり、失くしたのか——。

 

 

そう、あれはラスベガスでの出来事。実銃のハンドガンやライフルを撃つべく、クレー射撃用のスニーカーを持参した。さらにイヤーマフと射撃用のサングラスもあるので、すぐにでも射撃ができる準備が整っている。

「そのサングラスじゃダメだ。跳ね返った金属片で割れる可能性がある」

そう言いながら友人は、自らのサングラスをわたしに手渡した。言わずもがな、わたしのサングラスも跳弾対策はできるが、どこをどう見てもこちらの方が頑丈にみえる。さすがはアメリカ——。

こうしてわたしは、頑丈なサングラスを携えて射撃訓練に臨んだのである。

 

射撃場へ向かうまでの道中は、お気に入りのオシャレサングラスで紫外線をカット。999.9(フィーナインズ)の白いフレームが光る自慢のサングラスに、つい先日、金色のオシャレメガネチェーンを取り付けたため、サングラスを外してもフリーハンドで維持できる優れもの。

過度に目立たず穏やかな流線形は、洗練されたオシャレの象徴ともいえる。さらに、わたしの目を紫外線から守ってくれる強い味方は、外出における手放せないアイテムなのである。

 

こうしうて、砂漠地帯における灼熱地獄から帰還したわたしは、明日の帰国に向けて荷物をまとめはじめた。友人に返すもの、自分で持ち帰るもの・・それぞれを分けると、あっという間に綺麗に片付けられた。

(・・あれ、999.9のサングラスどこだ)

たしか射撃場からの帰りに装着していたはずの、お気に入りのサングラスが見当たらない。どこへ入れたかな?

 

スーツケースを開くと、先ほど詰めたばかりの荷物をひっくり返してサングラスを探した。だがなぜか見つからない。・・おかしいな、間違って荷物に入れてないとしたら、この室内にあるはず。とはいえそんなウロウロしてないから、目につくところにあるはずなんだが。

念のため、トイレやバスルームもチェックするが、999.9の姿はなかった。いったいどこへ消えたんだ——。

射撃場に置いてきたということはない。なぜなら、あんなまっ茶色の砂漠で派手なサングラスを落とせば、さすがに発見できるからだ。しかし車内も駐車場も廊下も室内も、そしてスーツケースにも999.9はいない。ズボンのポケットを探ったり自らの首に触ったりするも、当然ながら指先に触れるものはなにもない。

 

(・・失くしたのか)

 

そんなこんなで帰国してから一週間が過ぎた。そして、もう999.9は諦めて新たなサングラスを買おうかと悩んでいたところで、あの夢をみたのだ。

 

わたしは、射撃後にサンダルへ履き替えたタイミングで、999.9を射撃用スニーカーの中へとしまった。これならばある程度の衝撃から身(サングラス)を守れるし、スニーカーを失くさない限りサングラスもなくならないからだ。

(なんというグッドアイデア、さすがわたし!)

自画自賛するとともに安堵したわたしは、さらに深い眠りへと就いたのである。

 

 

こうして眠りから覚めたわたしは、寝ぼけまなこでシューズボックスへと駆け寄ったわけだ。ところが夢の暗示は外れてしまい、わたしの999.9は依然として姿を消したまま——。

(あぁ、0.1%の可能性すらも残っていないのか・・)

 

Illustrated by 希鳳

Pocket

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です