七味唐辛子×アイス、七味唐辛子×ぶどうジュース。まさに「禁断の出会い」

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料理をしない我が家には、当然ながら調味料などあるはずもない。しかし最近、とある調味料が存在するようになった。

その商品とは、七味唐辛子だ。

 

唐辛子の起源は想像以上に古く、紀元前七千年~八千年頃には中南米で栽培されていたのだそう。

そして諸説あるものの、日本へ伝わったのは15~16世紀頃のこと。

種子島に鉄砲が伝わるのと同時にポルトガル人が持ち込んだ説や、ポルトガル人宣教師がキリスト教布教のために日本を訪れた際に、唐辛子の種を大名に献上した説、そして豊臣秀吉の朝鮮出兵時に種子を持ち帰った説などがあり、正確な渡来時期や手段は定かではない。

 

中でも「七味唐辛子」は構成する素材に定義はなく、唐辛子や山椒、けしの実、麻の実、生姜、しそ、ゴマなど、地方や店舗によって特徴のある調合がされるのだそう。

さらに当時、江戸・日本橋薬研堀(やげんぼり)で、漢方薬研究科であり薬種商人である中島徳右衛門が、「漢方薬を食に利用できないか」ということで、七種類の薬味を調合して完成したものが、七味唐辛子といわれている。

 

このように、香辛料であり漢方薬の一種でもある七味唐辛子は、広く日本人から愛されることとなったのである。

 

そして今回、自称・グルメでお節介な友人から押し付けられたのは、大阪府堺市に店を構える「やまつ辻田」の七味唐辛子だった。

七味唐辛子など、蕎麦や豚汁、あとは焼き鳥にかけるくらいしか思いつかない調味料だ。しかしせっかくの「極上七味」ゆえに、とりあえず色々な料理に振りかけてみることにした。

 

まずはドネルケバブにパッパッとやってみた。

これは当然ながら美味い。そもそも、ケバブに辛口ソースがかかっていることから、辛みとの相性もいい七味唐辛子は合うに決まっている。

 

次にインドカレーの上に乗っている目玉焼きにパラパラしてみた。

こちらも当然ながらマッチする。香辛料でできたスープがカレーなのだから、そこへさらに香辛料を加えたところで反発するはずもないからだ。

 

さらに、冷凍しておいた手作りおむすびを解凍すると、そこへサッと一振りしてみた。

こちらは意外や意外。混ぜご飯であるにもかかわらず、七味唐辛子と合うじゃないか!豆やヒジキが黒米とミックスされているのだが、塩を含む調味料は使われておらず、素材そのものを味わう仕組みとなっている。

そこへ七味唐辛子をかけても、なぜ味が壊れないのだろうか――。

 

そのとき、わたしは気がついた。七味唐辛子は、味ではなく風味なのだということに!

味がないとはいわない。だが塩や砂糖などに比べると、七味唐辛子に求められるのは「味」ではない。その分、香りや辛み、色どりが食材の美味さを引き立たせるのである。

 

(これはもしかすると・・・)

 

咄嗟にある食べ物が脳裏に浮かんだ。これならばきっと、マッチするはずだ。

そしてわたしはコンビニへと走った。そう、バニラアイスを買うために!

 

結果は案の定、抜群の相性であることが確認できた。バニラアイスの単調な甘さに、七味唐辛子のスパイシーさが加わることで、見事なデザートへと変化を遂げたのだ。

 

そして仕上げは「アレ」しかない。南米といえばチリやアルゼンチン、ブラジル、ペルーなどだが、いずれもワインが有名。ということは、ブドウと唐辛子の相性もいいに決まっている。

そして奇遇にも、目の前には高級ぶどうジュースが置かれている。ぶどう果汁100%、まるで静脈血のような暗褐色の紫色が、なぜか南米を彷彿とさせる。

 

このタイミングでこの組み合わせ、試さない理由がない――。

 

 

こうしてわたしは、唯一無二の香辛料となる七味唐辛子を、見事に攻略したのである。

食物の素材や調理の味を邪魔するどころか、元の味を生かした上で風味を引き立てつつ、さらにピリ辛の刺激が食欲をそそるという、まさに魔法のスパイス・七味唐辛子。

とくに甘い物との相性がここまでいいとは、まさに大発見である。

 

なお注意すべき点として、アイスやジュースに七味唐辛子を振りかける場合、鮮度の高いもの、つまり香りや風味の豊かなものを選ぶべき。

少なくとも「やまつ辻田」の七味唐辛子は、カラッカラには乾燥していない。ややしっとりとした、見るからに新鮮な素材でできているため、とにかく圧倒的な香りと上質な辛みに驚かされたほど。

だからこそ、アイスやジュースとの相性が良かったのだろう。

 

いま密かに画策しているのは、プリンにこの七味唐辛子をかけて食べることだ。あぁ、間違いなく美味いだろう・・。

 

サムネイル/やまつ辻田「やまつISM」より

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