都内最高のドトールコーヒー

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突然だが、首都高にあるPA(パーキングエリア)に居心地のいいカフェなどあるはずがない。そもそも休憩など必要ないほどに出入口の多い首都高で、「ちょっとくつろぎたい」などと思うドライバーがいるだろうか。首都高の存在価値は、いち早く目的地に到着するための手段であり、休憩は目的地に着いてからすればいいわけで。

 

そういえば高速道路にはPAとSA(サービスエリア)の二つの休憩所があるが、この違いはなんだろう?国土交通省によると、提供するサービスの内容やPA/SA同士の距離(位置)により区分されているらしく、

「一般的にはサービスエリアには休憩所、駐車場、トイレに加え売店、食堂、給油所などが備わっており、パーキングエリアには駐車場、トイレ、必要に応じ売店が備わっております。」

ということらしい。だがあくまで「一般的」な区分なので、必ずしもこうではない。たとえば関越道の三芳PAなど「どう見たってSAじゃん!」と叫びたくなるほど、バラエティー豊かで広大なパーキングエリアとして有名。逆にSAといえどもしょぼいところはしょぼいので、一概にはくくれないというのが正解だろう。

 

そんななか、わたしは今日初めて「代々木PA」というスポットを発見した。少し手前から見える「ドトールコーヒー」の文字に、吸い寄せられるかのように車の速度をゆるめた。

(こんなPAあったっけ?)

そもそも首都高で休憩など想定外なので、今までこの看板が目に入らなかったのかもしれない。だが今日は大晦日。大晦日といえばRIZIN。我がジムから朝倉兄弟が参戦するとあり、ネット観戦用のチケットを購入し先ほどから釘付けになっていたところだ。

 

とりあえず試合観戦に集中したいので、ドトールの看板が眩しく光る代々木PAへ入った。

 

 

わたしがイメージする首都高のPAは、狭くて暗くて飲み物の自動販売機とトイレしかない。だが代々木PAは違った。エレベーターで2階へ上がると、まずはドトールがお出迎え。といってもスナック類と注文カウンターだけの狭いスペースではあるが。そして飲食エリアのドアを開けると、PA/SAでおなじみのカレーやラーメン、松田聖子や八代亜紀のCD、一風変わった東京土産などが売られている。

 

そういえば前から不思議に思っていたのだが、PA/SAの売店ではほぼ間違いなく懐メロのCDが売られている。あれはいったい誰が買うのだろう?昔は「トラック野郎が買うんだろうな」と勝手に想像していたが、今となってはスマホで曲をかけるだろうし、そもそもCDプレーヤーが標準装備されていない車も増えている。にもかかわらず、必ずといっていいほどCDが、しかも懐メロのCDが販売されている理由は何だろう――。

まぁよくわからないが、これもまた時代を感じる風物詩といった価値観があって、無駄ではあるが悪くない。

 

コーヒーを4杯ほど注文したわたしは、さっそく窓際の席を陣取るとスマホ観戦を再開した。試合のインターバルの間、ふと視線を落とすとせわしく行きかう車の列が見える。圧倒的に下り(中央道や東北道方面)の交通量が多いところをみると、帰省する人々なのだろうか。

だがある時、聞き覚えのある低いエンジン音がどこからともなく近づいてきた。いわゆる「走り屋」たちが首都高を流しているのだ。そのうち、R32(スカイライン)、タイプR(シビック)、S13(シルビア)、86やエボⅢなどが続々と現れる。

カーブの曲がり方が独特のマニュアル車たち。とくにLSD(リミテッド・スリップ・デフ)を装着している車のカーブは、まるで生き物が走っているかのようなライブ感が現れる。いつ見てもうっとりしてしまうその動きこそ、マニュアル車の魅力といえるだろう。

 

騒々しく彼らが去っていった後、ふと飲食エリアを見渡すと利用客は誰もいない。今までイヤフォンを使って試合を視聴していたわたしだが、これなら遠慮なく大音量で応援できるじゃないか――。

 

しかしこれほどまでにガラガラのカフェは、都内どこを探しても見つからないだろう。なんせ天下のドトールでこのありさまなのだから。首都高ゆえ、車でここまで来なければならないという条件付きではあるが、こんなにも広々としたスペースでガラ空きのドトールを満喫できるのは、都心ではここしかないと断言できる。

さらには19時でドトールが、21時でレストランが閉店する。そうなるとPAで働くスタッフもいなくなるため、その後は本当に「フリースペース」となる。

 

だれもいない代々木PA。大音量でRIZIN観戦という贅沢を味わいながら、2021年を終わらせることにしよう。

 

サムネイル by 希鳳

 

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