(またこの季節がやってきたのか・・・)
テーブルの上がまっ黄色・・というか橙色に染まっている光景を眺めながら、もうすでに黄疸が出ている手のひらを見つめるわたし——そう、またもや「肝臓悪いんじゃないの?!」と、多くの者から医療機関の受診を勧められる時期が訪れたのである。
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自分のことを”バカだ”と思う瞬間の一つに、「食べたい!と思うと、そればかりを買ってしまう」という悪癖が挙げられる。冷静に考えれば、同じ系統のものばかりを食べていたらすぐに飽きるし、栄養バランスも偏るのだからいいことなど一つもない。
にもかかわらず、目に映る「美味そうなもの」すなわち「食べたいもの」を、見境なく買い漁る習性を発動させた結果、戦利品を広げるとどれも似たようなものばかりであることに愕然とするわけだ。
ちなみによくあるのが、「パンを食べたい!」と思った時に、複数のパン店で似たようなパンを買い込んだあげく、チーズケーキやパウンドケーキといった互換性のある商品にまで手を出すパターン。こうして買いそろえた商品を並べてみると、目の前には見事に同じような系統のパン&パンケーキが並ぶのである。
まぁ、好きな食べ物に囲まれて幸せといえば幸せだが、欲をいうと同じものばかりで飽きてしまうのも事実。その度に「なぜわたしは、食べる時のことを考えずに買ってしまったのだろうか・・」と、己のバカさ加減に辟易しつつ大量の似たようなパンを口へと運ぶのであった。
そして今回、見事に黄色で埋めつくされたテーブルに並んでいるのは、柿とみかんとはちみつカステラとバスクチーズケーキと米粉のバタークッキー、というラインナップ。
近所で不定期に開催される「軒下マルシェ」にて、選りすぐりの果物——今回は柿とみかんを大量に手に入れたわたしは、とりあえず袋から出して並べてみた。その数なんと、大きめの柿10個に中くらいのみかん40個。
じつに見事な黄色&橙色で埋め尽くされたテーブルは、それだけで元気が出るほどエネルギッシュなビタミンカラーで彩られている。そこへ加えて、はちみつカステラ一本とバスクチーズケーキ(ホール)、さらに米粉のバタークッキー4袋を配置したところ、全体的に黄色や橙色で統一された色合いであることに気が付いたのだ。
無論、狙ってこうしたわけではないが、わたしの気持ちがこれらの色合いを求めていたのだろう。欲を言えば、ここへ緑や青など鮮やかな差し色が加わればなお美しいだろうが、今の気分が黄色系なのだから仕方がない。
そしておもむろにみかんへ手を伸ばし、皮の上から親指を突っ込んで四分の一に割ると口へと運んだ——うん、優しい甘みと程よい酸味で食べやすい!!
無意識のうちにみかんを4個片付けると、次は柿の出番。ツヤツヤの皮に前歯を突き立て、一気に果肉を切り裂いた——うん、なんて肉厚でジューシーなんだ!!
こうして、あっという間にテーブルに並べられた柿とみかんは半分になった。
続いて、お口直しにバスクチーズケーキにスプーンを入れたわたし——うん、こればかりはいつどんな風に食べても美味い!!
余談だが、ケーキを買うならば絶対にホールで買うべきである。ホールを切り分けたピースもありといえばありだが、たとえば小さなサイズで焼かれたケーキとホールで焼かれたケーキとを食べ比べると、圧倒的にホールのほうが美味いという事実に気づく。
これは、サイズによるボリューム感の差かもしれないが、個人的には「焼き加減的なものの違い」により、ホールのほうが明らかに濃厚で深みのある味わいを堪能できる、と分析している。よって、どうせ食べるならば最高の満足を得たいと思うのがニンゲンならではの贅沢・・ということで、わたしは必ずホールで購入することにしているのだ。
というような蘊蓄(うんちく)は置いておいて、濃厚なチーズで口の中がまったりとしたところへ、はちみつカステラを投入し味変を試みる——うん、控え目な甘さとはちみつの風味が鼻の奥まで広がるではないか!!
山形県に工場を構えるたんばや製菓は、カステラとどら焼きに特化した企業。加えて、「山形県」という地名を聞いただけで、自然豊かな土地で作られた安全性の高い原材料で出来ている・・と、勝手に想像し勝手に満足してしまうから不思議である。
そんなカステラに続き、米粉のクッキーで歯ごたえを楽しんだ後、再び喉を潤すべくみかんに手を伸ばし——。
こんな食生活が、健康に悪影響を及ぼさないはずがない。そんなことは百も承知しているし、誰よりも戦々恐々としているのは、紛れもなくわたし自身である。
しかしながら、この季節になると頼んでもいないのに柿やみかんが大量に集まってくるわけで、いわば不可抗力といえる。さらに、こちらに拒否権など存在しない——すなわち、強制的にデスバトルへ参戦させられているのだから、わたしに責任はない。
こうして、命がけで秋の果物を貪り食った結果、わたしの皮膚は黄色く色づき、多くの者から「黄疸が出てる、肝臓が悪い」と誤った指摘をされるのであった。
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わたしが黄色くなるシーズンは、まさに今始まったばかり。これからが本番というわけで、気合を入れて胃袋を整えるのである。




















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