にほんごを理解する外国人

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日頃から日本語に慣れ親しんでいるわれわれにとって、まるで世界は日本語で出来ているかのような錯覚を起こしがちだが、世界人口が82億人であるのに対して、日本語を話す者・・すなわち日本の人口はわずか1.2億人ということで、この島国を出たら日本語など暗号といっても過言ではないほど難易度の高い言語なのである。

 

ではいったい世界の言語はどうなっているのかというと、一位はやはり「英語/15.2億人」だ。アメリカ、イギリス、インド、ナイジェリアなどで話されており、第二言語として使われることからも当然の結果と言えるだろう。

そして二位は、言わずもがな圧倒的な人口力により「中国語/11.6億人」がランクイン。中国のほかにも台湾やシンガポールで話されており、母語話者数としては世界最多である。

続く三位は「ヒンディー語/6.1億人」で、こちらもインドやネパールなど人口の多い国で使われていることが話者数と比例している。

その後は、「スペイン語/5.6億人」「フランス語/3.1億人」「アラビア語/2.7億人」「ベンガル語/2.7億人」「ポルトガル語/2.6億人」「ロシア語/2.5億人」の順でトップ10が構成されている。

 

かくいう「日本語は?」というと、日本の人口である1,2億人が使用するのみではあるが、それでも世界13位にランクインしている。母語話者数のみならばトップ10入りする可能性もあり、決して低い順位ではない。

とはいえ、世界人口の1.5%しか理解できない言語というのは、グローバルな視点からすると「使いにくい言語」と言わざるをえない。よって、わたしが毎日発信しているこのコラムも、読んでくれるのは日本人だけだと思っていた。

ところが、なぜか外国の友人から意見や感想をもらうようになったのだ。しかも、タイトルやサムネイルから推測したわけではなく、ちゃんと中身まで読んだ上でのコメントであることから、「え・・もしかして彼女は日本語読めるの?!」と驚かされたわけで——。

 

最初にコメントをくれた友人は、「ChatGPTで英訳して読んでいる」と教えてくれた。それを聞いたわたしは、さっそく自分でも英訳されたコラムに目を通してみたところ——なんと、見事な翻訳っぷりじゃないか。

殊にわたしが書く文章は、内容の濃さというより”言葉選び”や”読み進める上でのテンポ”を重視しているため、日本語が持つ固有の面白さでしかない・・と思い込んでいた。ところが、英訳された文章を読んでみると、なかなかどうして雰囲気が出ているし、わたしが思う温度感というかウェットな感覚が、まったく無視されているわけではなかったのだ。

 

無論、それを読んでどう感じるのかはその人次第だが、それは日本人だって同じこと。誰もが己の経験に重ねて文章を噛みしめるため、解釈の仕方は人それぞれ。だからこそ、わたしの文章を読んでまったく同じ気持ちになる・・ということはあり得ないわけで。

それでも、およそ伝えたいことや面白いであろう感覚が英訳されていれば、少なからずわたしは満足である。そもそも英語でコラムを書けない時点で、わたしの可能性は日本国内に限定されていたのだから——。

 

昨今、論文や契約書に関してはAIによる翻訳でも十分対応できるレベルに達してきた。だが、言葉の裏にあるユーモアや皮肉、ジョーク、嫌味といった感覚を理解し変換するまでには至らない・・と高を括っていたのもつかの間、会話の流れを汲み取った返信や、日本語固有の面白さを見事に翻訳するまでに成長していたのだ。

それでも疑い深いわたしは、たとえばポルトガル語に翻訳した文章をさらに英語に翻訳し、そのニュアンスを確認していた。日本語から英語ならば理解できるが、日本語からポルトガル語に翻訳した場合、ポルトガル語が分からないわたしには内容の真偽・・というかニュアンスの正確さが判断できないからだ。それでも、見事に英訳された最終版を見て、「これはかなり使える・・」と唸ってしまった。

 

日本語はひらがな・カタカナ・漢字という三種類の文字を持っており、会話となると敬語からスラングまで多岐にわたる話し方が存在するため、世界の中でも非常に難しい言語とされている。たしかに、日本で生まれ育ったものにしか理解しがたい感覚というものはあるし、それを言語化しようにも経験の有無で理解度が違ってしまうことからも、完璧に伝えるというのは無理難題。

それでも、百パーセントとは言わずとも半分でも伝われば御の字ではないか——最近は、そう思い始めたわたし。自らが絞り出した文章を世界中の人に読んでもらえたら、そして一瞬でも笑ってもらえたら、それはそれで幸せじゃないか。

そんな願いをAIが叶えてくれるのだから、テクノロジーの進化に感謝である。

 

(夢はデカい方がいい・・よし、ギネス記録に挑戦だ)

 

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