わたしは日頃から、筋肉質なフォルムについて言及されることが多いが、それは「日本だからだ」と思っていた。
そもそも日本人は欧米人らと比べるとフィジカルで劣るし、顔面も身体のフォルムも薄っぺらくて平坦であるのが特徴。だからこそ、胴体に厚みがあって腕や足が太いわたしの存在は、一般的に見ると異質であり悪目立ちするのだろう。
そんなわたしだが、マッチョの国・アメリカにおいても同様の感想を持たれたことには、さすがに驚きを隠せなかった。
「ボディビルやってるの?」
そう尋ねてきたのは、Trader Joe’s(トレーダー・ジョーズ)のキャッシャーを務める女性だった。購入商品のバーコードをスキャンしながら、世間話のついでに出てきた発言なのだが、「フフ、言わなくてもわかってるわよ」と言わんばかりのしてやったり顔には、思わず吹き出してしまった。
「いや、やってない。しかも、そういうトレーニングもしてない」
まさかの「ここでもか・・」と思いつつも否定するわたしに加えて、一緒に来ていたアメリカ人の友人が爆笑しながら、「彼女はブラジリアン柔術をやっていて、試合があるからこっちへ来てるんだ」と説明してくれた。
すると、話を聞いた女性は「ちょっと待ってて・・」と言ってその場を離れ、またすぐに戻ってきた。その手には——なんと、Trader Joe’sのショッピングバッグを持っているではないか!!
「試合、頑張ってね!」
そう言いながら手渡された、「Nevada」の文字がまぶしいトレジョーのショッピングバッグ。金額は1ドルとお手頃だが、ネットで調べると日本では10倍の値段で売買されている、まさかのお宝グッズである。
ちなみにわたしは、カラフルなデザインに惹かれて「カーリングのストーンのような形状の、デカいチーズを入れるための布袋」を購入したのだが、おまけとしてNevada限定のショッピングバッグまで手に入れることができて、この時ばかりは筋肉に感謝したのである。
(物がもらえるならば、筋肉質というのも悪くないな・・)
また別の日には、リカー・ストア(酒店)を訪れた際に、ワインの試飲販売をしているデモンストレーターの女性に声をかけられた。
まるで、知り合いに話しかけられたかのような親しさだったため、「え?いつ会ったっけ・・」と、一瞬戸惑いを見せたわたしだったが、その次のセリフが「ボディビルダー?」だったので、「あぁ、またか!」と笑ってしまった。
アメリカという国は、筋肉質であることが美の象徴・・というか、健康美を重んじる文化なのだろう。たしかに、どんなに細身の女性であっても華奢で折れそうな体系ではなく、中身の詰まった立体感のある細さである。
中には、ごく普通の体型だった女性が猛烈にトレーニングを積んだ結果、とんでもないゴリマッチョに変身し、「あなたの人生も、こんな風に素敵になれるわよ!」と自分をアピールする者も。そして、そんな彼女のSNSを見ながら「昔は可愛らしかったのになぁ・・」と、残念がる男性陣がいるとかいないとか——。
というわけで、これはあくまでアメリカにおける話であり、日本において女性が筋肉質であることは、「モテるかどうか」の観点においては、間違いなく「ノー」である。
しかもわたしは運動嫌いで、出来るかぎりジッとしていたいタイプだというのに、望まなくても勝手に筋肉がついていくのだからどうしようもない。せめて髪型だけでもモテる感じに・・と頑張ってはいるが、何年たってもその兆しは見えてこないわけで——。
(やはり、アメリカへ移住するのが正解なのかな・・)
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もしかすると、わたしの第二の人生は海の向こうで待っているのかもしれない。





















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