じゃあ、マイナンバーっていったい何のために・・・

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(もしかして、外国籍なのか・・?)

交付された決定通知書に書かれた氏名を眺めながら、わたしは嫌な予感がした。この手のトラブルは、もう何回目だろうか——。

 

なんの話かというと、社会保険(厚生年金保険・健康保険)の資格取得手続きを電子申請した際に、わたしが記入した氏名と異なる状態で審査が進み、そのまま処理が終わってしまったのだ。

過去にも同様のアクシデントはあり、そのたびに「なぜわざわざマイナンバーを入力しているのに、そちらを優先しないんだ?」と、怒り交じりにクレームを訴えたことがある。だが今回は、これまでとはちょっと違う”表記誤り”だった。

 

ちなみに「記入した氏名が異なる状態」というのは、たとえば「﨑」や「邊」のように旧字体で住民登録されているにもかかわらず、基礎年金番号に登録された氏名が「崎」や「辺」となっていた場合、自動的に後者が優先されることを指す。

申請者側からすると、「正しい表記で申請したのに、勝手に誤った漢字にされてしまった!」となるわけで、その後”氏名変更届”という手続きを行わなければ、正しい表記に戻すことはできない。

 

さらに、これが単なるデータ上の差異であればさほど問題にはならないが、健康保険証(現在でいうところの資格確認書)に印字された漢字が異なると、身分証明書として使用できないどころか、保険給付を受けられない場合がある。

そして今回、実際に医療機関にて「マイナンバーの氏名と異なるため、3割負担では治療を受けられない」と言われてしまったのだ。

 

しかも今回に限っては、手続きの審査が終わると発行される「決定通知書」を確認した際に、「漢字で申請したのに、なんでカタカナ表記になってるんだ・・」という、明らかな違和感があった。それと同時に、「もしかして、この人は外国籍なんじゃないか・・?」というヒントにもなったのだ。

なぜそう思ったのかというと・・おっと、その前に「基礎年金番号の登録氏名」について触れておくと、年金加入のスタートが厚生年金の場合、会社を経由して手続きを行うこととなる。そのため、本人が提出した書類を元に会社の担当者が申請を行い、それを受けて年金事務所が入力作業を行うのだ。よって、申請内容に誤りがあってもそのまま登録されてしまう・・という穴が「あった」。

これがもしも”国民年金スタート”であれば、役所にて登録を行うことから住民票と同じ表記になるが、現在ではマイナンバーの記入が必須となり、年金事務所側でも住民記録と突合できるようになったため、今後新たに振り出される基礎年金番号については、旧字体などのトラブルは減るだろう。

 

しかしながら、外国籍の者についてはローマ字表記のほかにカタカナでの登録が必須のため、氏名が完全に一致しなかったり本人が覚えていなかったり・・といったトラブルが起こりやすい。

そもそも、外国語を無理やりカタカナに落とし込もうとする発想がどうかと思うが、それでも相変わらず「カタカナでの登録が必須」であるため、決定通知書がカタカナになっている・・ということは、少なくともその当時は外国籍だった可能性が高いのだ。

そして案の定、今回のケースは被保険者がブラジル人だった。

 

会社から受け取る情報や資料だけでは、その人が外国籍かどうか分からない場合がある。特に最近では「マイナンバーさえあれば大丈夫」という流れになっているので、申請後に役所から確認があって初めて発覚するケースも。

その中で、もっとも厄介なのが”基礎年金番号に登録された氏名が優先される”ことだ。なぜ正式な氏名=住民登録を優先しないのか・・それは言うまでもなく、システム上の事情であることは明らかだが、それでも”誤った表記で資格確認書が発行されるのを阻止できない”という理不尽な強制力は、いささか強引すぎるのではなかろうか。

 

せめて、日本年金機構側の担当者が審査途中で気付いたならば、申請内容=マイナンバー通りの表記に直す、または返戻してくれればいい。なぜなら、生年月日や性別に関しては、申請時に誤記があればすぐさま返戻するのだから——。

(個人的には、わざわざ返戻するくらいならマイナンバーに合わせて訂正してもらいたい・・と思うのだ。役所側の主張としては「個人情報を役所が勝手に変えることはできないため」だが、だったらマイナンバーの記入をもってそれらの情報とすればいい。あえて突き返してやり直しさせる手間こそが、無駄に感じるわけで)

 

——というわけで、今回のケースに関しては”氏名変更届”を出した後・・しかも、通常だと二~三週間かかった後に、”資格確認書の交付申請”を行うことで、ようやく「正式な氏名が記載されたカード」が届くのだ。

無論、マイナ保険証の連携を済ませていれば問題はないのだが、マイナンバーカードを持っていない、あるいはマイナ保険証の連携を行っていない場合は、やはり資格確認書が必要となる。そして、氏名の表記が登録と違っていれば、資格確認書として使うことはできない——あぁ、なんて面倒なことか。

 

 

これらはすべて、申請業務の電子化に向けた過渡期だからこそ起こりうるトラブルなのかもしれないが、どうせやるなら基礎年金番号ではなくマイナンバー(住民登録)を優先するよう、システム改変を希望したい。でなければ、何のためのマイナンバー制度かわかったもんじゃないからだ。

 

——以上、実務者による切実な愚痴でした。

 

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