瞬殺で「要らない」と切られた、商売道具のスペック

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数年に一度、わたしを襲う精神的かつ金銭的な負担の一つに、「パソコンの買い替え」というストレスフルなイベントがある。

金銭面だけのストレスならば、二年に一度訪れるマンションの更新や、毎年4月に引き落とされる小規模企業共済の一括納付など、手痛い出費はいくつかある。だが、それに加えて精神的な負荷がかかる・・という点で、パソコンの買い替えは相当なストレスとなるのだ。

 

なんといっても、まずは"モデル選び"という面倒な通過儀礼を経なければならないことだ。

およその性能やスペックはネットで調べられるが、パソコンというアイテムを単純作業でしか使わないわたしにとって、どれほど高性能であるかはさほど重要ではない。それどころか、Windowsとofficeが使えれば十分・・というくらいに、パソコンたる小宇宙の極一部にしか触れることのない凡人が、大枚叩いてハイスペックなアイテムを手に入れるほど無駄なこともないだろう。

そんなわけで、現在使っているパソコンの情報をメモして、家電量販店へと向かうところからスタートとなるが、出不精で有名なわたしにとって店舗へ出向くという行為は、とてもじゃないが一人では成し遂げられない苦行になる。よって、数か月かけてようやく一歩を踏み出すわけで、新たなパソコンが自宅に届くのはもっと先の話となるのだ。

 

とはいえ、今回のわたしは気が楽である。なぜなら、今使っているパソコンの後継モデルを買う・・と決めていたので、あれこれ目移りする心配がないからだ。

すでに3代目となるレッツノートは、「ビジネスシーンでの過酷な使用環境を想定して設計されており、その耐久性は多くのユーザーから高く評価されている」という謳い文句からも分かるように、頑丈さがウリ。突っ込みどころとしては、「いったいどんなサバイバル企業で働く、ビジネスパーソンをターゲットにしているのか」と言いたいところだが、落下や衝撃そして圧迫に対する耐久性に優れているレッツノートは、わたしにとってなくてはならない"武器"でもあるのだ。

なんせ、100Kgfの加圧振動試験をクリアしているため、暴漢に襲われた際には盾としての使用が可能。この点からも、仕事道具であり防具にもなるアイテムは、レッツノート以外にはあり得ないのである。

 

そして、サイズ感的にも代々同じサイズを引き継いでいるため、必然的に購入するモデルが絞られる。よって、念のため販売員からのレクチャーを受ければ終了・・という算段が立つのだ。

だが、パソコンを売りたいプロと、パソコンを買いたいド素人とでは、どうみても対等に渡り合うことは不可能。よって、ド素人の姫を守る"守護神"が必要となるが、その役務を誰に担わせるかがカギとなる。

 

——そう、誰を連れて家電量販店へ行くのか・・という「人選」こそが、パソコンを買い替える際の最重要ポイントなのだ。

 

 

「要らない」

 

最新のレッツノートを見学するべく重い腰を上げたわたしは、"護衛"を引き連れてビックカメラを訪れると、お目当てのモデルの前で店員からスペックに関する説明を受けていた。

ハッキリいって、CPUが何だとかコア数がいくつだとか、メモリーが32GBだろうが16GBだろうがまったく困らない。いかんせん、パソコンのポテンシャルを持て余しているわけで、こちとら頑丈かつバッテリーの持ちさえよければ、なんだっていいのだから——。

 

とはいえ、店員としても最低限の説明をしなければならないので、CPUについてcore i5とcore i7の違いで価格に差が出ることを解説しようとした瞬間、わたしの"護衛"がものすごい勢いでcore i7を否定したのだ。

(・・・は、はやっ)

 

ド素人のわたしにとってCPUの違いを説明をされたところで、実際に困ったことすらないのだから判断のしようがない。大は小を兼ねるというくらいだから、なんでもデカくて高性能のほうがいいんじゃないか・・くらいの感覚で、その数字がどれほどの差を示すのかを体感できなければ知る由もないわけで。

だが、わたしのパソコン環境について何も知らないはずの"護衛"が、顔色一つ変えずに瞬殺でハイグレードを「不要」と判断したのだ。まぁ確かに、どう考えても高性能なCPUを必要とする職業ではないし、その違いで数万円変わるのならば見栄を張る必要もない。それにしたって、ちょっとくらい相談してくれてもいいのでは——。

 

いやいや、ド素人にCPUの相談など無意味な社交辞令に過ぎない。どのみち「よく分からない」と返されるのがオチなのだから、であれば客観的にみて不要かどうかを判断するほうが効率的。

その後もサクサクと障害物を避けつつゴールへ向かう"護衛"を眺めながら、わたしはとある人選基準にたどり着いた。

 

(パソコンの買い替えに同伴させるならば、素人たる当人の主張および願望は度外視で、一般的に最適と思われるスペックやカスタマイズをチョイスできる人物を選ぶべきだ)

 

 

こうしてわたしは、ものの5分で30万円の買い物を済ませたのである。

レッツノート歴20年のキャリアを誇るが、今回ほど短時間で決済までたどり着いた試しはない。やはり、護衛たる守護神の存在は偉大だったのである。

 

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