こ、これがかの有名な金縛りか!?

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わたしは今日、就寝中に右半身が硬直して動けなくなった。その後、体ごと持ち上げられて水の中でシェイクされる・・という体験もした。これはまさかの、金縛り——。

だが、金縛り特有の「恐怖」とか「苦しさ」という感覚は微塵もなかった。その証拠に、カッと目を見開き「これが霊的なものによる超常現象ならば、その存在をこの目でしかと確かめてやろう!」と張り切っていたわけで。

その結果は言うまでもなく、動かない体とは裏腹に何者かがわたしを押さえつけている・・というような事実は確認できなかった。そしてしばらくすると、体の自由が戻ったのである。

 

 

種明かしというか、こんなことになった理由について、実はちゃんと説明ができる。それは「タンクトップにショートパンツという、極少の布面積の部屋着で寝ていたわたしは、布団の暑さに耐えきれず高級羽根布団を蹴り飛ばした。だが全身が布団から出てしまうと、エアコンの冷風を直に浴びることとなるため、右半分だけ布団をかけずに涼んだ結果、汗ばんでいた手足が見事に冷えて熱を奪い、部分的に血管収縮を生じさせたことで右側の手足が固まってしまった」という顛末である。

なお、体ごとシェイクされるような感覚を覚えた時は、羽根布団の上に両足を載せて、汗ばんだカラダ全体でエアコンの風を受け止めていたため、全身の血管が収縮したものと推測される。

 

だからこそわたしは、金縛りのような状態に陥った瞬間に「これはぜったいに、体が冷えて血管が収縮しているからだ!」と、自信をもって目を開けることができたのだ。なんせ、嫌な予感はしないし他人や異物の存在も感じないわけで、これで「目を開けたら白装束のオンナが、恐ろしい形相でわたしの体を押さえつけていた」などということがあれば、己のインスピレーションの低下に逆に悩んでしまうだろう。

 

では、どうすればこの現象から逃れることができるのかというと、高級羽根布団をやめてタオルケットにすればいいのだ。こんな簡単かつ当たり前のことは、子どもでもおよそ見当がつくだろう。だが、極度のめんどくさがりであるわたしにとって、羽根布団をしまうためにクリーニング店へ持っていく・・という行為が、いかんせん受け入れがたいのである。

そんなこんなで一年中羽根布団に包まって眠るわたしは、夏場の就寝時のエアコン温度がやたらと低く設定されることとなる。そのため、手足を布団の外へ出せば、短時間でキンキンに冷えるというわけだ。

 

だがここ数日、日中の最高気温が25度前後までしか上がらなかったため、エアコンの設定温度も少し上げてみた。とはいえ室内の温度がそこまで変化するものではないので、普段よりも生暖かい室温(といっても、汗ばむようなことはない)となっていたわけだ。

これらの事情により、高級羽布団の中は高温となり汗をかき、その汗を冷やすべく布団を半分ないし全部取っ払った結果、極度の体温低下を引き起こしたのである。

「くだらない、さっさとタオルケットに変えろ!」

わたしが他人ならば、確実にそう吐き捨てるだろう。だが先述したとおり、羽布団との別居に踏み切れない理由があるから、そう簡単には解決できない問題なのだ。

 

ならば、部屋着の布面積を増やすことで、エアコンの風を直接受けないようにするのはどうだろうか——。

布団がダメなら衣服でどうにかすればいいのでは・・というアイデアを思い付いたわたしは、むしろ天才なんじゃないか!と自画自賛した。だってそうだろう、趣旨としては「体を覆う布を調整することで、快適な状態を保つ」ということなのだから、別に布団に限定した話ではない。だったら着ている布を調整することで、目的を達成すればいいのだから。

 

さっそくロンティーとスパッツに着替えたわたしは、羽毛布団を取っ払ってベッドに横たわった——あぁ、なんと快適なことか。

 

 

こうして、人生初となるやもしれぬ「金縛り」を体験することなく、わたしの安眠が復活したのである。

 

Illustrated by 希鳳

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