しゃっくり誘発事件

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目が覚めた瞬間、しゃっくりが止まらなくなっていた。

 

その直前に夢を見ていたのだが、なにやら大量の食べ物、しかも熱々の何かを、大急ぎで掻っ込んだところで目が覚めた。

正確には、しゃっくりの衝撃で目が覚めた、というべきか。

 

その熱々の食べ物が何だったのかは覚えていないが、モクモクと大量の湯気が立っており、あたりは真っ白に霞んでいた。

韓国料理だっただろうか?なぜか料理を思い出せないのが不思議だ。

とにかく、その美味そうなご馳走を我先に食い尽くしてやろうとがっついた途端に、しゃっくりが発生して目が覚めた。

 

しゃっくりというのは、「横隔膜などの呼吸に関連する筋肉をコントロールしている神経、または脳の一部が刺激(しげき)されることが関係している*1」と考えられている。(*1 しゃっくりが出るのはなぜ?/学研キッズネット

 

今回、私は爆睡していたわけで、物を食べたり飲んだりすることで、横隔膜付近の神経を刺激したとは考えられない。

となると、食べ物の夢を見たせいで、脳の一部が刺激されたため、しゃっくりを引き起こしたというのだろうか。

 

いずれにせよ、人生初の「夢がリアルに接続された瞬間」である。

あたかも私は、熱々の何かを食べようとした途端に、そのイメージだけでしゃっくりを誘発したわけで、目覚めてからもしばらくは、出来たてのスープでも飲んでいるかのような妄想に浸っていたのだから。

 

喉の奥のほうで、熱い何かが胃袋へと下がっていく、架空の感覚を味わいながら、ひっくひっくとしゃっくり地獄に苦しめられる私。

(それにしても、なんだかハッキリしないが、美味そうな食べ物が大量にあったな…)

まだ覚醒しきらない脳みそで、ぼんやりと食事風景を思い出す。

 

時刻は朝の5時過ぎ、起きるには早すぎる。もう一度寝ようと目を閉じるも、ひっくひっくと勝手に体を揺さぶられて眠れない。

息を止めたり、細長く吐いたり、しゃっくりが止まりそうな方法を試すも通用せず。肋骨の間から横隔膜をダイレクトに圧迫すると止まるのだが、なんせ眠気が先に立ってしまい、そこまでの労力を振り絞ることができない。

(水でも飲むか・・)

ベッド際の床にペットボトルの水を置いていることに気がついた私は、逆向きになりながら水を取ろうとしたその瞬間、

「ぬおぉぉぉ!!!」

腰というか尻に激痛が走った。そうだ、昨日から尾骨あたりを傷めたようで、迂闊に体を動かすと大変なことになるのを忘れていた。

 

しばらく変な体勢のままじっとしていると、痛みに慣れてくる。それから、なるべく脚や尻を使わないように、上半身の力を使って元の就寝姿勢に戻した。

(あぶねー、このままじっとしていよう)

危うく身動きがとれなくなるところだった。悠長に水など飲んでいる場合ではない。とりあえずこのまま寝て、目が覚めたら少しは痛みが和らいでいることを願うのみ。

 

あぁ、これでまた不便で不自由な生活を余儀なくされるのか。トイレに行くのも一苦労、二足歩行がままならなければ、四つん這いで移動するしかない。

外出はどうしたらいいのだ?火曜日には外出予定があるわけで、まさかアスファルトの道路を四つん這いで歩けとでも?

 

・・・クソッ、こんな時のために杖の一つも用意しておけばよかった。今ではオシャレストックが売られているし、登山用のストックでもいいだろう。どうせ数日しかお世話にならないのだから、とりあえず一つあればどうにかなる。

最悪の場合、傘で代用するしかないか。しかし快晴の夏空の下、ビニール傘を杖代わりにしてヨタヨタ歩くとは、なんとも情けない。

とはいえ歩けないものは仕方ない。笑われようが邪険にされようが、物理的に不可能なんだからどうしようもない。その代わり、動けるようになったら覚えとけよ。私を蔑んだ目で見た奴ら全員、思い知らせてやるからな!

 

などと、勝手な妄想を膨らませながらイライラしていると、しゃっくりは止まっていた。

 

(そうか!脳が刺激されることで誘発されるしゃっくりは、脳が別のことに集中してしまうと、しゃっくりをすることすら忘れてしまうのか!)

 

人間て、単純な生き物だ。

 

サムネイル by 希鳳

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