抗気圧トレーニング

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「おととい、気圧の変化で気道がふさがるとか言ってたけど、トンガの地震の影響か?」

突然、友人からメッセージが届く。何のことだかピンとこなかったが、少し考えて思い出した。そうだ、わたしはいま喉が腫れて咳が出るのだ。

だが安心してほしい、コロナでもオミクロンでもない、アレルギー的なものだ。

 

わたしは定期的に唇が脱皮したり、喉がパンパンに腫れて気道が狭まり「咳喘息」の症状が出たりする。10年かけてアレルゲンを調査するも、何一つ当てはまらないという異常さ。医師は、

「これだけ検査して出てこないということは、突き止めたところで排除できないくらいありふれたモノである可能性が高い。だから知らなくていいと思うよ」

そういって、これ以上の検査を勧めなかった。食べ物や植物、ハウスダスト、金属など、ありとあらゆるアレルゲン検査をしたがどれも陰性。逆に、

「これだけ何も反応しないっていうのも、不気味だよ」

とあきれられたほどだ。そのくらい物体からは影響を受けないわたしが、唯一、影響を受けるのは「気圧」ではないかと憶測する。

 

まれに夏の場合もあるが、ほぼ決まって冬になると謎の咳に見舞われる。気管支炎に似た症状だが、咳止めを飲んでも一向に止まらず、あるとき呼吸ができずに死にかけたことがある。ちょうどそこが病院だったため、一命をとりとめたのだが。

そして呼吸器科の医師に告げられた病名が「咳喘息」だった。これは喘息とは異なるが、なんらかのアレルギー反応によってもたらされる咳で、フスコデなどの一般的な咳止めはまったく効かないのが特徴。

そして、呼吸できなくなるほどいったい何が起きているのかというと、気道(気管)がパンパンに腫れあがったせいで狭くなり、息が通らなくなるのだ。この「腫れ」こそがアレルギーによる症状で、抗アレルギー薬を飲まないことには窒息死の危険がある。

 

そんな深刻な状態が今年もまた近づいてきたわけで、医療従事者の友人に「また喉が腫れてきた」と話したところ、

「ほんとだ、いつもより腫れてるよぉ」

と、首のあたりが膨らんでいるジェスチャーをしながら心配してくれた。

 

(――いや、気道の腫れは外見では分からないだろう。キミが見ているのは単なる首で、それは暗にわたしの首が太いと言っているだけだ)

 

というわけで、冬場にこの症状が出ることから「気圧の変化が影響している」と踏んでいるのだ。そして一昨日この話をしたところ、冒頭の友人があのメッセージを送ってきたのだ。

「トンガで噴火したあと、衝撃波で日本の気圧が上がった時間帯があるらしいぞ」

なるほど、珍しい現象があるもんだ。たしかに時を同じくしてわたしの咳も出現している。そういえば、眼科の主治医も奇妙なことを言っていた。

「偶然かもしれないけど、台風とか気圧の変化が激しい日にかぎって、網膜剥離の患者さんが増えるんだよね」

言われてみれば「飛行機で移動中に網膜が剥離した」という報告は多数あり、やはりここでも気圧の変化というものが身体に影響をおよぼしているわけだ。

 

あぁ、もしも気管狭窄で呼吸困難になった場合、どうしたらいいんだ――。

 

死を意識するわたしがひどく悩んでいたところ、形成外科医の友人が喉を指しながらこう言った。

「なにか細い管を胸鎖関節のこのくぼみに突きさせば、空気は送り込めるよ」

そこでわたしは質問しかえした。

「それって、失敗したら大変なことになるよね?」

すると友人は、

「そうだね、曲がって刺したら大変なことになるね・・・」

と、残念そうな表情でうなだれた。

 

まぁどうせ死ぬなら一か八かで喉に管を突き刺してみるが、とにかく「自分の身体には敏感であれ」ということだ。薬に頼れとは言わない。だが、無関心に放置するのは命を粗末にしていることと同じであり、状況を把握する意味でも何が起きているのかは知っておくべきだ。

あとは「いかに気圧の変化に耐え得るフィジカルを作るか」が、わたしの生存率を上げるカギとなりそうだ。

 

サムネイル by 希鳳

 

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