「・・・時を戻そう」

Pocket

 

少しでも朝寝坊をしたいとき。

というか、正当な「言い訳」をもって起床時刻を少しでも遅らせたいとき、時計を見るならアナログの方がいい。

なぜならデジタルは、どうやっても現実しか表示しないから。

 

今日も朝から予定がある。

私一人の予定ならば間違いなくこのまま目を閉じるが、相手あっての予定となるとそうもいかない。

布団の中での葛藤が続く。

 

 

アラームの設定で悩むのは、家を出る時刻から逆算して何時に設定すべきかということだが、「逆算」の中にどんな作業を入れるかが問題となる。

 

通常の最低限フルコースだと、

・歯を磨く

・顔を洗う

・シャワーを浴びる

・髪の毛を乾かす

・コンタクトを入れる

・着替える

このくらい必要で、余裕をもって60分、大急ぎで30分といったところ。

 

かなり端折ったショートコースだと、

・歯を磨く

・髪の毛を濡らす

・コンタクトを入れる

・着替える

最悪これでも出かけられる。

寝る時点で着替えを完了させておけば、歯みがきと髪の毛とコンタクトだけで出発できる。

 

ーー明日の準備と服装を決めながら、私はアラームについて考える

 

かつて失敗した例としては、準備の時間に余裕を持たせすぎたため、アラームで目を覚ますと寝ぼけながらも、

「準備にこんな時間はかからない」

と、もっともな意見が脳裏を過(よぎ)り、再び眠りについたことを思い出す。

 

また、アラームを5分刻みで45分間鳴らし続けた結果、最初のアラームですでに目が覚めてしまい、睡眠時間を損した気分になり一日中不機嫌だったこともある。

 

そして何より、起床に関するもっとも恐ろしい行為は、二度寝だ。

 

二度寝という現象がなぜ起きるのかといえば、必要以上に早くアラームを鳴らすからに他ならない。

どんなに寝ぼけていても、人間の本能というものは鮮やかに機能するため、「まだ寝る時間がある」と判断し、二度寝に突入する。

 

つまり、早起きしてゆっくり準備して、などという甘っちょろい考えは捨てるべきである。

常にギリギリ、死に物狂いで生きる覚悟が必要だ。

 

私はアラームをギリギリの、出発から10分前にセットした。

もちろん、翌日出かける格好でベッドへ入る。

 

ーーそしていま、スマホのアラームが鳴っている

 

トントコトントコ、イラつく太鼓の音が流れる。

いったん止めるもスヌーズ機能で3分後にまた、トントコトントコ鳴り出す。

 

(タクシーにすればあと15分寝られる)

 

もうこうなると手が付けられない。

電車で向かう予定で逆算したアラームが、当日の眠さ加減によりタクシーへと変更された。

 

そして何度目かのイラつく太鼓の音を聞きながら、狭い部屋に掛かる大きなアナログ時計に目をやる。

ベッドで横になっている私から見ると、天井近くに設置された時計は右下から見上げる形になる。

 

なんと、角度によっては1分くらい時間が戻るのだ。

 

右下から見れば見るほど、現在時刻より前の時間に見えなくもない。

というか、長針が進んでいないように見える。

 

(もしかすると、まだあと1分あるんじゃないか)

 

そんな錯覚を引き起こしてくれるのが、アナログ時計の良い所。

事実、私が見ているアナログ時計の長針は、デジタル時計が示す時刻の1分前を指している。

 

粘りに粘り、どこからどう見ても、錯覚を考慮しても出発時刻5分前となった時点で、ベッドから飛び起きる。

左手で歯みがき、右手でコンタクトを入れるとダッシュで家を出た。

 

(こんな忙しい思いするなら、もう5分早く起きればよかった)

 

毎回、同じことを思いながらタクシーの前へと飛び出る。

そして案の定、1分ほど遅刻で無事到着。

 

 

デジタルは現実を直視させるが、アナログは人間に裁量を委ねる余地を持つ。

言うなれば「浪漫」だ。

結果的に、それが人間(私)をダメにしているとも言えるのだが。

 

 

Illustrated by 希鳳

 

Pocket

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です