幸せだが若干恐怖の"糖質連鎖"

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——わたしはもうじき、事故にでも遭うのだろうか。はたまた、重大な病が見つかり、余命いくばくもない状態だったりするのだろうか。

そう疑いたくなるほどの、奇妙な幸運が連日起きている。なんと、今月に入ってから日替わりで、誰かからお菓子を与えられ続けているのだ。

 

 

今日こそ、謎の"スイーツ連鎖"から抜け出せた・・と安堵していたところ、なんと、深夜に「抹茶味のラスク」が届けられたのだ。

バターたっぷりゴーフレットを成形する際に出る、生地の切れ端を焼くことでラスクに変化させ、そこへ抹茶パウダーをふんだんに振りかけた焼菓子なのだが、菓子の袋をひっくり返すとまるで"ベビースターラーメン丸"を口の中へボコボコと放り込むかのように、手を汚さずとも完食できる優秀な菓子であった。

 

ちなみに昨日は、本場・カナダのメープルを練り込んだバタークッキーをもらった。例えるならば、日本でいうところの"ウォーカーのショートブレッド"のような、分厚くてズッシリとした食べ応えの逸品。

そして、個包装であれば一つ二つつまんでまた明日・・と、数日に分けて楽しむことができるが、大袋の場合、保存しておくことが苦手なわたしは、開封と同時に完食する覚悟を決めてクッキーを鷲掴みするのがお決まり。

よって、750キロカロリーのメープルクッキーを、ものの数分で食べきってしまったのだ。

 

その前の日は、アメリカ土産の板チョコを5枚もらった。オトナのオンナであるわたしはビターが好みだが、もらいものであればミルクチョコレートでも美味いんだな・・ということに気づかされた。

なお、個人的な解釈ではあるが、チョコレートなど脂質と糖質の塊だから、クッキーやケーキを食べるよりも太らない。よって、板チョコ5枚を一気食いしたとて罪悪感に苛まれる必要はない。

 

その前の日は、過去イチの美味さに認定された"発酵バターサンド"が届いた。わたしの好みを熟知する後輩が、誕生日祝いとしてわざわざ送ってくれたのだ。

これはもう言い訳の余地もない。なんせ、めちゃくちゃ美味いからすぐさま食べざるを得ないわけで。

冷凍状態で到着したバターサンドは、本来ならば冷蔵庫に移して少し溶かしてから食べるらしいが、そんな忠告が耳に入るはずもない。股の間にゴミ箱を挟み、その上に顔を置くと、わたしは凍ったままのカチコチなバターサンドに齧りついた。

ときにはバターやクッキーがこぼれ落ちることもあるが、その都度、ゴミ箱に手を突っ込みガサゴソとブツを探し出しては口へと運ぶ・・という、まるでゴミ箱を漁る乞食のように、発酵バターサンドを丸ごと堪能したのである。

 

その前の日は、ローマ字の「R」の形をしたクッキーをもらった。最初に一欠片もらった際には「わたしのイニシャルか?」などと勝手に喜んだが、どうやらその店のイニシャルだった模様。

それを申し訳ないと感じたのか、「よかったらこれ、どうぞ」と、丸々一袋もらうこととなり、たくさんのRを頬張ることができた。しかもこのクッキー、"子どもからお年寄りまで美味しく食べられる味"というコンセプトで作られており、例えるならば「鳩サブレ」のような落ち着いた歯ごたえと甘さが印象的だった。

 

その前の日は、カントリーマアムの「抹茶ガトーショコラ味」をもらった。パッケージには、まるでチーズケーキのような美しい緑色の"抹茶ガトーショコラ"の画像が、でっかく貼りつけられている。こんなもの、店頭で目に入った瞬間、手に取るに決まっている。

こちらは個包装されているので、一つ二つで止めてもいいのだが、甘さ控えめの抹茶ガトーショコラはなぜかクセになるお味で、次から次へと袋を破り捨てては口へと放り込んでしまった。

——こうして、あっという間にすべて胃袋へと送り込まれたのだ。

 

その前の日は、チーズケーキをもらった。誕生日だったこともあり、大好物のチーズケーキを用意してもらったのだ。

こういう時につくづく実感するが、ヒトの気持ちは断じて金額では量れない。高級品だから気持ちが詰まっているわけではないし、どちらかというと材料費を抑えた手作り料理のほうが、相手の気持ちを強く感じることができる。

そして、口に入れた瞬間に「美味い」と感じるものこそが真の勝者であり、味だけでなくその場の雰囲気や人間関係が美味さを左右する要素となるわけだ。

 

その前の日は、抹茶シュークリームをもらった。電車に乗ろうとした瞬間、友人から届いた「今どこ?」というLINE。念のため、電車には乗らずにホームへ留まり、「溜池山王駅のホーム」と返信した。すると「改札まで来れる?」と問われたので、ホームから改札へと移動し、そこで友人と落ち合ったのである。

「はい、これ!」

それは、濃厚な抹茶クリームを挟んだシュークリームだった。こちらも誕生日祝いとして、夜遅くに赤坂の街中をさまよい購入してくれたのだそう。——やはり、こういう気持ちは嬉しいものだ。

 

 

ちなみに、その前の日には、フルーツケーキをホールでもらったし、その前の日は、チョコパイプレミアムご褒美Wメロンタルトをもらった。その前はもはや覚えていないが、それでも何かしらの菓子をもらい続けて、今日までたどり着いたことは間違いない。

——そして、こんな生活を繰り返して太らないはずがない。これらの菓子は、通常の食事&デザートにプラスする形で食べているわけで、多い時で一食1,000キロカロリーを追加摂取したことになる。

 

(幸せだが恐怖の"奇跡の糖質連鎖"は、いったい、いつまで続くんだろう・・)

 

Illustrated by 希鳳

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