ここ最近、にわかに本業が忙しい。その理由は、来月に迫った「地域別最低賃金の改定」のため、該当する労働者の労働条件通知書を作成しているからだ。
ほぼ毎年値上がりする最低賃金だが、最高値となる東京都は1,113円ということで、1,100円を超える大台に乗った。お隣の神奈川県も1,112円で、この二つの都県が全国のトップをひた走る構図は変わらない。
逆に、底辺をキープしているのは岩手県の893円、続いて沖縄県と徳島県の896円となっている。
そもそも最低賃金について、働き方改革実現会議(平成29年3月28日)にて決定された「働き方改革実行計画」で謳われている、
「年率3パーセント程度を目途として、名目GDP成長率にも配慮しつつ引き上げていく。これにより、全国加重平均が1000円になることを目指す。」
という指針に基づき、最低賃金を引き上げてきたわけだ。
そして今年、全国平均1,004円が実現することで、当初の目標は達成となる。ならば、来年度以降の最低賃金の改定はなくなるのだろうか。・・まぁ、己の選挙のことしか考えていない政治家の計画など、中身は空っぽで当てにならないが、世界基準でみると日本の最低賃金はまだまだ下位ランクといえる。
海外で使われている基準の一つに、所得の全国平均に対して50%、そして所得の中央値に対して60%という割合で算出する、「50%・60%ルール」なる計算方法が存在するらしい(出展:最低賃金「1000円達成」次の目標は7年後に1370円/デービッド・アトキンソン著)。
さらに同記事では、
「(前略)2022年9月、EU議会ではこのルールを明確に規定した法律が可決されました。イギリスではブレア政権の後に誕生したキャメロン政権下の2015年に、最低賃金の大幅な引き上げが行われました。その際、2020年までに、中央値に対して60%の最低賃金を目指すと宣言し、2020年にその目標は達成されました。」
と報告している。このように5年後の明確な数字を突きつけることで、計画的な企業努力を促すことができるわけだ。
とはいえ、賃金を支払う事業主側からすると「たまったもんじゃない!」という感は否めない。ましてや個人経営の飲食店や小売店にとって、人件費の上昇は経営危機に直結する大問題である。それを毎年、強制的に行われたのでは会社の体力が尽きてしまう。
だが、日本で労働者を使って事業を行うためには「労働法の遵守」が絶対条件となるため、どうにかして生産性を上げなければならず、真面目に業務に邁進する事業主こそが被害者となるケースも
圧倒的な少子高齢化を突き進む日本において、医療費や税負担の増加は免れない。そのため、経済成長を促すべく最低賃金の引き上げは必要不可欠な対策となる。
そんな厳しい現実に翻弄される事業主たちだが、それでもちゃんと最低賃金をクリアするべく、わたしの元へ続々とメッセージが届く。
「時給が最低賃金のアルバイト全員、10月1日から1,113円でお願いします。1,115円のほうがキリがいいですかね・・・」
「1,113円だと中途半端だから1,115円、いや、1,120円にします・・・」
それぞれの苦悩と配慮がうかがえる文面に、思わず同情してしまう。さらに、時給者とは別に月給者についても、時給換算した際に最低賃金を割っていれば違法となるため、必然的に昇給となる者もチラホラ。
いずれにせよ決まりは決まりなので、事情はどうであれ数字を書き換えなければならないわたしは、今月中にすべての労働条件通知書を作成するべくせっせとキーボードを叩くのであった。
それにしても、複数の都道府県で店舗展開している企業の労働者にとって、同じ業務に従事しているにもかかわらず、時給に差が出てしまうのは困りもの。
実際に、茨城在住の労働者が東京本店へ勤務していたところ、新たにオープンした茨城支店へ異動となったが、月給にして3万円ほどの「実質的な減給」に加えて交通費もかなり削られるため、「納得がいかない!」とトラブルになった。
法律上は問題ないが、同じ仕事をするのに場所が変わっただけで給与が下がるのだから、労働者にとったら「たまったもんじゃない!」となるのはごもっとも。
とどのつまりは、最低賃金など気にするまでもない額、つまり、十分な金額の時給を設定できればこの問題は解決する。・・まぁ、それができないほど日本は貧しい国ゆえに、実現までには多くの困難が待ち受けているわけだが。
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