池袋駅北口改札手前

Pocket

 

どうにも耐えられない「睡魔」に襲われたわたし。寒空の下を駅2つ分歩いてみたが、それでも圧倒的に眠い。

――これは、間違いなく血糖値スパイクだ。

 

血糖値スパイクとは、食後の血糖値が急上昇・急降下する状態を指す。さらに血糖値の乱高下により血管が傷つくため、動脈硬化のリスクも高まる。

血糖値スパイクの原因として、インスリンの分泌が遅くなったり少なくなったりすることが挙げられるわけで、これはつまり、糖尿病予備軍ということではないか――。

 

30分前を振り返ると、わたしはもうヤンカレーにいた。

ランチの内訳は、山盛り二杯の前田ライスと白米、ポークばら肉煮込みカレー、焦がしビスヌカレー、九州ほうれん草のカレー、ふかしジャガイモ、ネギはるさめ、スモークたくあん、玉ネギのピクルス、枝豆、マサ人参ラペなどを大量によそった記憶がある。

 

右手で胃のあたりを触ると、はち切れんばかりに盛り上がっている。そのため、真っすぐ立っているのに、胃袋の出っ張りと尻の出っ張りとで、まるで屈んでいるように見えるのだ。

面構えも相まって、ヤバイ奴の雰囲気を放っている気がしてならない。

 

(ダメだ、とにかく眠い・・・)

 

食後の散歩も意味はなく、信号待ちの間に寝られそうなほど、強力な睡魔である。

――これは危険だ。どこかで昼寝するしかない。

 

次の予定まであと5時間あるが、先に目的地へ移動することにした。しかし、昼寝ができる場所といえばネカフェかカラオケか・・・。

 

自分で提案しておきながら、どちらも気乗りがしない。少なくとも清潔とは思えないネカフェやカラオケで、横になるのは抵抗があるからだ。

それならまだ、駐車場で寝転ぶほうがマシである。

――ダメだダメだ、寒くて寝られたもんじゃない。

 

ネット検索するも、これといっていい場所は出てこない。

そうこうするうちに、目的地である池袋駅へ到着してしまった。

 

(まじでネカフェか・・・)

 

半ばあきらめモードでトボトボと階段を下ると、改札手前に突如カフェが現れた。

数か月前まで、この場所はロッテリアだった。だがいつの間にかBECK’S COFFEEに変身していたのだ。

 

ちょっと覗いてみると、座席の半分が一人席。さらにすべてのテーブルに充電用のコンセントが設置されており、無料Wi-Fiまで飛んでいる。

おまけに店内は新しいので、居心地は悪くなさそう。

 

(よし、ここにしよう!)

 

わたしは、店内の「とある特徴的なレイアウト」を見逃さなかった。ここならば、きっと寝られるはず――。

 

店に入ると、真っ先にお目当ての席へと向かう。そう、壁際の一人席だ。

ここはセミボックスシートなので、「駅利用客から丸見え」ということにもならず、昼寝するには持ってこいの場所といえる。

 

さらに、実際にテーブルへ伏せてみると、レジ側にいる店員の目から逃れられるではないか。

レジ前の席にあるウレタンボードの高さと、ボックスシートで突っ伏したときの高さとが一致するため、密かに隠れることができるのだ。

 

それよりなにより、わたしは今日フーディーを着ている。よって、フードをかぶって壁にもたれかかれば、寝ているのか起きているのか分からない。

オシャレなラッパーかダンサー気取りで、フードを目深にかぶっておけば、特に怪しい様子もないだろう――。

 

こうしてわたしは、コーヒーとカフェラテを購入し、さっそくフードをかぶって腕を組んでみた。

(うん、完璧だ!)

そのまま壁にもたれかかると、あっという間にあの世へ、いや、夢の世界へと旅立ったのである。

 

 

目が覚めると2時間が経過していた。

コーヒーとカフェラテは、もうすでに冷え切っている。

 

しかし誰一人として、わたしが眠っていたことに気付いていない様子。そう、パソコンを開いておいたので、

「目をつむり、腕を組み、フードを目深にかぶって、かなり難しいことを考えているのだろう」

という風に見えていたからだ。

 

・・それ以前にここは一人席ゆえに、こちらを気にする客などいないのである。

 

寝起きの体内をコーヒーで潤すと、わたしはとあることを思い出した。

(そういえば昨日、一睡もしてないや・・・)

 

血糖値スパイクなのか、はたまた睡眠不足なのか。いずれにせよ、スッキリと目が覚めたわたしは、今度こそ本当に仕事を始めたのである。

 

サムネ/BECK’S COFFEE SHOP

Pocket

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です