持つべきものは「みやげ上手」の友人

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みやげ物などでヒトの価値を決めてはいけないが、この世には「みやげ上手」が存在するのも事実なわけで、できればそういう友人で脇を固めておきたいもの。

そして私は、現時点でその人選に成功している。

 

今日私は、関西方面から帰京したばかりの友人の元を訪れた。はやる気持ちをおさえながら、他愛もない会話を交わしていたところ、

「あ、そうだ。これ・・・」

と言いながら、いそいそと黄色い紙袋を取り出す友人。よだれが出そうになるのを堪えながら、私は平然とお礼を言うと袋を奪い取る。

(そうそう、この「黄色」を待ちわびていたのだ!!)

 

彼女が買ってきてくれたのは、むか新の「こがしバターケーキ」だ。兵庫県・芦屋市出身、生粋のお嬢様はみやげ物も間違わない。かならず美味いものを買ってくる背景には、育ちのいい彼女ゆえの「確かな舌」がある。

一度だって間違ったみやげ物を買ってきたことはない――。そんな素晴らしい鑑識眼をお持ちのお嬢様なのだ。

 

過去に一度、パンケーキ好きの私に対して、この「こがしバターケーキ」を買ってきてくれたことがそもそもの始まり。森永ミルクキャラメルのような、昔風の黄色と字体で作られたパッケージを見た私は、

「フン、どうせこどもだましの洋菓子だろう」

と高をくくっていた。そして大して期待もせず、腹が減ったついでに一つ封を開けたのが運の尽き。このマドレーヌもどきの粉ものは、今まで食べてきたどの焼き菓子(みやげ物に限る)よりも美味かった。味だけではない。食感、舌触り、歯ごたえ、喉ごし、すべてにおいて群を抜いて美味いのだ。

 

むか新の商品紹介ページを覗いてみると、

「ほんのり甘くてシャリシャリしている。フィナンシェでも、マドレーヌでもないやっぱりこれは”こがしバターケーキ”。」

と、新たなジャンルとしてこがしバターケーキを推しているではないか。たしかにこのポテンシャルをもってすれば、フランス菓子の二大巨頭に割って入ることも可能かもしれない。続けて、

「こだわりのバターを銅釜でじっくりと熱し、コクと風味を凝縮させたオーストリア人マイスター直伝の製法でつくる特製「こがしバター」は純度115%!」

なんと、純度が100%を超えて115%に達しているではないか!これは、バターの純度が100%でそれを焦がしたことにより純度が膨れ上がった、ということだろうか。数字の整合性を追及しているわけではないが、純度115%の特製「こがしバター」と聞けば、洋菓子好きが飛びつかないはずがない。例外なく、この私も飛びついてしまったのだから。

 

こうして、この「黄色いお菓子」は一瞬にしてこの世から消え去った。

 

 

そういえば、先日食べた「東京ばな奈のレーズンサンド」という菓子も美味かった。

東京に住む私が「東京ばな奈」系の菓子を買うということは、地方に住む誰かへのみやげ物ということになる。つまり、渡す前に私が食べてしまったわけで、先方には「東京みやげ」は渡らなかったのだが。

 

それでも「食べてよかった」と心の底から思っている。なぜなら、これを食べるまでの私は六花亭のマルセイバターサンドこそが、最高のレーズンバターサンドだと信じてやまなかった。

ところが東京ばな奈のレーズンサンドを一口かじったところ、圧倒的な美味さと歯ごたえに胸が震えた。

「バナナの香るホワイトショコラクリームに、ふっくらやわらかい贅沢レーズンをたっぷりサンド。」

こんな謳い文句で紹介されているように、いかんせんホワイトショコラクリームが美味すぎるのだ。

 

そもそも私はレーズンが好きではない。にもかかわらず、六花亭のマルセイバターサンドは辛うじて食べることができた。そして食べ続けるうちに、いつしか好きになった。

そんな、マイナススタートのレーズン系菓子を「美味い」と思う理由があるとすれば、レーズン以外の部分に決まっている。その期待に見事応えてくれたのが、東京ばな奈のレーズンサンドだったのだ。

挟まっているホワイトショコラクリームは当然ながら、挟んでいる上下のしっとりクッキーが、これまた絶妙な味と歯ごたえを醸し出しす――。

通常、クッキー系は噛むとボロボロこぼれるという難点がある。それがこの菓子にはない。しんなりとしたクッキーが、クリームとレーズンをしっかりサンドしたまま、口の中へとなだれ込んでいくのだ。

 

というわけで、私は「みやげ物」としてではなく「自分のおやつ」として、東京ばな奈のレーズンサンドを定期購入している。

だがどうやら「むか新」も、ネット販売を行っている様子。

 

(今日もらったこがしバターケーキは瞬殺してしまった。こっそり買ってストックしとくか)

 

こうして、真夜中にこっそり「カートに入れる」をクリックするのであった。

 

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