柔道、レスリング、ボクシング、ブラジリアン柔術、MMA(総合格闘技)など、格闘技系の競技は体重によって試合が構成されることが多い。ちなみに、体重の階級に関係なく試合をする場合は、無差別級というカテゴリーで試合を行う。必ずしも大きい人が勝つわけではないが、相対的にみて体重差のある取っ組み合いは、小柄な人が怪我をしやすいので注意が必要だ。
私は趣味でブラジリアン柔術を嗜んでおり、フェザー級という階級で試合をする。しかしこの「フェザー級」は、一般的にはやや大柄な女性のカテゴリーのため、海外の選手と試合をすると毎回、私が一番ちっちゃい。
過去に外国人選手から、
「You are a little tough cookie!!」
と、肩をすくめて舌を出されたことがある。
(リトル・タフ・クッキー?)
どうやら、ちっちゃいくせに手ごわい奴!という意味らしい。まぁ褒められたのだから喜ぶべきだが、やはり「リトル」がつくわけで、ちっちゃいことを強調されたわけだ。
そんな私は本気で減量を考えた。どう考えても私の身長でフェザー級は無理がある。本来ならば「ライトフェザー級」という、一つ下の階級がベスト。いや、最も軽い「ルースター級」でもいいくらいなわけで。
そこで友人に真剣に相談をした。
「ここ4日でドカ食いしちゃったけど、今日から真面目に減量しようと思ってる」
こういうことは、心の中で決めるのではなく口にしたほうがいい。後戻りできない状況に追い込んだほうが、成功する確率もあがるだろう。
「ちなみにさっき食パンを2斤食べたから、あれが最後の食事ってことになるね」
パンパンに膨らんだ腹をさすりながら、友人へ告げる。そもそも「食パン2斤」という量を一回の食事で食べてしまうあたり、どうかと思うのだが。
・・・とその前に、じつは私はつい最近まで2斤を1斤だと思っていた。その原因はパン屋での注文の仕方に問題があった。
「食パン1斤ください」
私はこう伝えていたつもりだが、パン屋のおばちゃんは「食パン1本」だと思い、2斤=一本を与えてくれていたのだ。それを知らずに私は、この直方体が1斤だと思い込んでいたわけだ。
ということで、暴飲暴食ラストを飾る食パン2斤を平らげた私は、ここから階級を下げるための減量に取り掛かることにした。しかし、4時間が経過したあたりで異変が起きた。急に私がへにゃへにゃとしぼんでしまったのだ。
「ちょっと大丈夫?!何かおなかに入れなよ!」
友人が心配そうに声をかけてくれる。明らかにガス欠の雰囲気を醸し出す私を見て、彼女は内心思っただろう。
(こいつに減量は無理だ)
*
私は本日、友人とともに念願だったカレー屋を訪れた。その店を紹介してくれた知人が、
「3種コンビの大盛り(無料)がオススメ」
と言っていたので、テーブルに着くなりオススメのカレーを注文し、さらにトッピングでパクチーとチーズオムレツを追加してやった。
一合(350グラム)を超える白米に、たっぷりカレーとトッピングに覆われた大皿は、幸せで満ち溢れている。それをさっさと平らげると、次は食パン専門店で食パンを買った。今回は2斤ではなく、1斤を注文した。むしろ初めて1斤という単位で注文したわけで、嬉しくもあり恥ずかしくもあった(これまでは、キューブ型の食パンは0.5斤と認識していた)。
さらにパンの耳にチョコがかかった、期間限定のラスクが販売されていたため、瞬時に購入を決めた。
その足でカフェに向かうと、いつものごとくコーヒーやラテ、シェイクを注文しテーブルにつく。そこで友人にこう話しかけた。
「昨日決めたんだけど、私、階級を落とそうと思ってるんだ」
彼女の目が一瞬、点になる。なぜそんなに驚いているのか理解できなかった。しかしすぐに分かった。
(あれだけカレー食って、食パン買って、ラスクまで買ったあげくにコーヒーこれだけ注文して、一つ下の階級に落とそうと思ってるだぁ???)
その後、体重を測ってみると、なんと5日間で5.5キロも増えていた。階級を落とす、減量をすると宣言すればするほど、なぜか私は増量していく体質なのだと、今日初めて知ったのである。
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