新木場駅が"聖地"たる、たった一つの理由

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新木場という場所は、これといって特筆すべき地域ではない。駅を降りたところで閑散としているし、倉庫や木材系の企業が軒を連ねているばかりで、楽しい雰囲気は感じられない。あとは、格闘技やライブなどのイベントスペースにヘリポート、都営ゴルフ場や臨海公園はあるが、スーパーもなければ学校も見当たらず、居住者などおよそ居ないであろう殺伐としたエリアなのだ。

そもそも埋立地であることや、"夢の島"と呼ばれる巨大なゴミ捨て場だった過去を鑑みると、環境汚染や健康被害の可能性はゼロではないため、諸手を挙げて住民を誘致することもできないのだろう。・・とはいえ、何気にヒトは住んでいる模様。

江東区が発表している人口統計のうち、「町丁別世帯数、人口及び人口密度/令和6年1月1日」によると、新木場一丁目に9人、新木場二丁目に6人、新木場三丁目に22人、新木場四丁目に4人の、合計41人が住んでいる。言うまでもなく、江東区内で群を抜いて人口の少ない地区だが、その次に少ない青梅エリア(997人)と比べても、圧倒的に人口密度が低いのが新木場なのである。

 

このように、日常生活であまり関与することもなく、それゆえに大した関心もありがたみも感じない新木場駅だったが、ここ最近、わたしは"新木場駅様様"であることを思い知らされたのだ——そう、新木場駅という存在はわたしにとってなくてはならない、"乗り換えの聖地"だったのだ。

 

 

仕事の都合で幕張方面へ足を運ぶ機会が増えた昨今、わたしが住む港区からだと「JR京葉線」か「JR武蔵野線」に乗り換えなければたどり着かないため、とても行きにくい・・というか、乗り換えの相性がわるいエリアへの往復を余儀なくされていた。

京葉線といえば舞浜駅を通過することから、ディズニーリゾートを訪れる浮かれた乗客で溢れる路線として有名。また、武蔵野線については正直よく知らない路線である。武蔵野線沿線に住んでいる者ならば駅の名前くらい言えるだろうが、残念ながらわたしは一つも駅名を挙げることができなかった。調べてみると、府中本町から西国分寺、東所沢、武蔵浦和、越谷レイクタウン、新松戸、西船橋までを繋ぐ路線で、今では京葉線と直通運転を行っているため、西船橋から先は東京方面と海浜幕張方面とに分岐している。

 

そんなこんなで、生涯一度も乗ることのなさそうな武蔵野線だったが、港区界隈から幕張へ向かうためには、東京駅または新木場駅で京葉線に乗るか、東西線で西船橋駅にて武蔵野線(京葉線直通)に乗り換えるかの選択となるため、場合によっては「世話になる」可能性が出てきたわけだ。

ちなみに、どれほど乗換案内のアプリが勧めてきたとしても拒否しなければならないルート・・というのが存在する。それは、東京駅での京葉線への乗り換えである。

 

乗車位置や歩く速度にもよるが、乗り換え時間10分ではまず乗り遅れるだろう。15分・・念のため20分を見積もってもいいくらいに、京葉線のホームへたどり着くまでの道のりは長く険しいものなのだ。

近いところで、大手町駅から東京駅までも10分弱の移動となるが、こちらはおよそ400メートルで通路も整備されつつあり、さほど遠い気はしない。だが京葉線までの600メートルという距離は、上野駅から御徒町駅まで歩くのと同じで、こんな方法を乗換案内されたのではたまったもんじゃない。

なお、西船橋駅での乗り換えについてだが、これは勝手な偏見ではあるがなんとなくしょぼんとした駅だったため、選択肢から除外させてもらった。なぜなら、乗り換えで憂鬱な気分になるほど残念なことはない。できれば明るい気持ちでハツラツと改札を出たいわけで——。

 

ということで、港区から幕張方面へ向かうための最終乗り換え地点となるのは、ズバリ新木場駅だ。これはもう「新木場一択」といっても過言ではないくらいに、乗り換え時間も移動距離も文句なしで新木場駅がベストなのである。

 

地下鉄ならば、有楽町線の改札を出て左斜め前に京葉線(武蔵野線)の改札があるし、埼京線と相互運転を行っているりんかい線(大崎から新木場を繋ぐ路線)ならば、改札を出て右に曲がると京葉線(武蔵野線)に乗ることができる。

たったこれだけの距離で京葉線に乗れるのは、新木場ならではの好立地だからだ。東京駅など、くだらない大人の事情(成田新幹線が頓挫したことによる)で、辺鄙な場所にしか京葉線のホームを作れなかったわけだが、これは巨大ステーションならではの末路ともいえる。小さな駅ならばもっと小回りを効かせてどうにかできたかもしれないが、さすがに東京の玄関口・・いや、ダンジョンと呼ばれるほどの複雑に入り組んだ敷地内では、そう簡単にホームも設置できないのだろう。

 

これらの事情からも、京葉線に乗り換えるならば「新木場駅」こそがベスト。さらに、あらゆる面を考慮した上で、新木場の真骨頂は「京葉線への乗り換え拠点であること」だと豪語できる。むしろ、好意的な意味で"これ以外の価値はない"といえるくらい、新木場駅の本領発揮ポイントがここにあるのだ。

 

 

東京駅や西船橋駅が足を引っ張ったおかげで、自動的に新木場駅の評価が上がった感も否めないが、いずれにせよ、都内から京葉線(武蔵野線)へ乗り換えるならば、新木場駅を利用することでストレスなく移動が可能。

たったこれだけのことでも、わたしの中での新木場の評価は爆上がりしたのである。

 

サムネイル/武蔵野線の路線図・ジョルダン

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